箸の持ち方が変な友人、もやもやするのは気にしすぎ?

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友人や知人と食事をするとき、箸の持ち方が気になることはありますか。読売新聞が運営する掲示板「発言小町」には、「変な持ち方をしている人を見ると不快に思ってしまう」という投稿がありました。SNS上では「箸の持ち方ぐらいで人を判断するな」という書き込みもあるため、恋人でもない限り、指摘はせず、もやもやした気持ちになってしまうそうです。この、もやもやの正体について専門家に聞いてみました。

説明がつかない嫌な気持ち

トピ主の「メリケンサック」さんは、友人や知人と食事をするとき、相手が変な箸の持ち方をしている人を見ると不快に感じてしまうのですが、なぜそう感じるのか、自分でも説明がつかないのだそうです。「確かに手の力の関係で変な持ち方をする人もいると聞いたことがありますが、そうでない人がなぜわざわざ変な持ち方をするのかが謎でした。この嫌な気持ち。わかる人いたらご意見ください」と呼びかけました。

この投稿に80通を超える反響がありました。

「匿名」さんは、「箸は幼い頃の家庭での関係やあり方が想像できる気がします。裕福とか、貧しいとか、金銭的なことでなく、親が(あるいは家族が)子どもとちゃんと向き合っていたかどうかが、なんとなくわかります」とつづります。

本人は困っていないのでは?

「holly」さんは、「大人になってから(箸使いを)指摘されても、変えるのは難しいのかもしれません。本人が困っていなければ、変える必要性も感じないでしょう。その人にとっては、すでにそれが自然な持ち方になっているんですよ。親が箸の持ち方をしつけない家もあります」と書き込みました。

トピ主さんの感じる「嫌な気持ち」について、「カンナ」さんは、「変な持ち方をしている本人じゃなく『親のことまで』想像してしまうからでは。『あぁ、この人は親がちゃんとした箸使いを知らずに育ったんだな……』とか」と分析しました。

彼氏に指摘され直した

交際相手に指摘され、箸使いを直したという女性もいました。「私も、20代前半まではちょっと変な持ち方していました。持つ指が1個ずれていましたね。当時の彼氏に指摘されたので、教わって、気を付けるようにしたらすぐ直りましたよ。多分、正しい持ち方って一番きれいで機能的?効率的?なんでしょうね。普段一番きれいなものを見ているから、それ以下のものを見たら少なからず違和感を覚えても仕方ないんじゃないですかね」(「つばめ」さん)。

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箸使いをめぐる複雑な心理戦

トピ主さんは、「SNSで『箸の持ち方ぐらいで人を判断するな』『それぐらいで判断するのはやばいやつ』みたいな意見を見ました」と続けます。そうした意見がある人も多いことを警戒して、恋人でもない限り、相手の箸の持ち方について指摘することはしないそうです。

なぜ箸の持ち方について、こうも複雑な心理戦が繰り広げられてしまうのでしょうか。「箸づかいに自信がつく本―美しい箸作法は和の心」や「箸づかいが上手になれば ビジネスは成功する」をなど、食事のマナー本を多数出版している、日本箸文化協会代表で、トータルフードプロデューサーの小倉朋子さんに聞きました。

もやもやする気持ちの正体は?

――正しく箸を持てない人を見ると、なぜもやもやする気持ちになるのでしょうか?

小倉朋子さん

テレビ番組でも、出演者が正しく箸を持てないシーンが流れると、視聴者からSNS上や電話などで非難の声が殺到すると聞いたことがあります。もともと日本の箸は儀式用の神聖なものでした。日本には「箸にも棒にもかからない」「箸と主人は太いが良い」など、「箸」を使ったことわざや言葉が多く、人と箸を重ねて考える文化があります。だから、箸が上手に持てない人を見ると、気になってしまうのかなと思います。

――親の躾問題など、家庭環境にまで言及する人がいますが、どう思いますか。

箸の持ち方一つで人を判断してしまうのは、寂しいことだと思います。でも、持てるほうが食べやすく丁寧な食べ方もできます。大人の方でも、(私たちの開催する)箸の持ち方教室などで学べば、短い期間で確実に正しい持ち方を身に付けることはできます。

箸を正しく扱える人は約2割

――正しく箸を扱える大人は、どのくらいいるのでしょうか?

統計を取ったわけではありませんが、箸文化に関するセミナーや講演会の来場者で正しく箸を持てて、かつ正しく扱える成人は2割に満たないと感じました。子どもは、さらにその10分の1にも満たないのではないでしょうか? 「正しく持てる」と自信を持って手を挙げる人の中にも、実は持てないという人はかなりいらっしゃいます。自身の親御さんに厳しくしつけられた人は、間違いを指摘されると、かなりがっかりされます。

正しく箸を持つコツは?

――正しく箸を持つには、どの指に力を入れたらいいですか?

箸を持つ時は、どの指にも力は入れません。軽く持ちます。ポイントとしては、常に中指は下から上の箸を支えます。中指を持ち上げると上の箸が上がり、中指を下げると箸が下がる。基本的に上の箸しか動かしません。親指、人さし指、中指の3本で、上の箸を軽くつまんでいます。そして、下の箸を親指の付け根からすーっと差し込みます。両方の箸先をぴったりくっつけます。そうしたら、先ほどと同じように中指を動かして箸を上下させます。慣れてくると、上の箸が真上まで上がります。

長年の癖を直すのはなかなか大変ですが、「邪念」を捨てて、ただ、ぶらーんぶらーんと、力を入れずに軽く上の箸を動かすだけです。慣れると、箸先をカチカチさせがちですが、それをやってはいけません。ゆーっくり動かしてください。

箸先がそろっていないと、米粒ひと粒をつかめないですから、箸先をお皿の上にトントンと当ててそろえる人がいますが、これはやめましょう。箸先も傷付きます。大人でも3週間から遅くても4週間ぐらい毎日練習すれば、100%の方が必ず正しく持てるようになります。

マナーを守って思いやりのある食卓に

――アジアでも中国や韓国などの国もお箸を使いますが一緒ですか?

持ち方自体はほぼ一緒ですが、神様の道具として扱うのは日本だけで、そこまで神聖な物ではありません。日本の物よりお箸が重たいので、中には日本人と一緒で正しく持てない人もいます。

――持ち方以外にも、身に着けてほしいマナーはありますか。

箸には持ち方以外にも、「寄せ箸」「迷い箸」「刺し箸」など「禁じ手」がたくさんあります。そういったことに気遣いをすることも、相手に対する配慮や思いやりにつながるのではないでしょうか。一緒に食事をする人に対するのはもちろん、食器や食べ物、料理を作る人に対する思いやりでもあります。

これを機会にぜひ練習してみてください。

(読売新聞メディア局編集部・遠山留美)

群馬県前橋市で箸の製造販売をする「箸専門店 箸久」がYoutubeで公開している「お箸の正しい持ち方」の練習動画を紹介します。

【紹介したトピはこちら】
箸の持ち方

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小倉朋子(おぐら・ともこ)
株式会社トータルフード代表取締役、トータルフードプロデューサー、日本箸文化協会代表。著書に「箸づかいが上手になれば ビジネスは成功する」(商業界)「 世界一美しい食べ方のマナー」(高橋書店)などがある。運営する食の総合教室「食輝塾」でテーブルマナーのリモート授業を実施する予定