「GALS!」復活、藤井みほな「ギャル魂で自分を愛して」

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ルーズソックスやガン黒、パラパラ……と聞いて、懐かしいと感じる人も多いのでは。1990年代から2000年代初めの「コギャル」が世の中を席巻していた時代に「りぼん」(集英社)で連載されていた人気少女マンガ「GALS!」が17年ぶりに復活し、話題になっています。作者の藤井みほなさんは漫画を通じて、人生の選択に悩むアラサー世代の女性たちにエールを送ります。ビデオ通話でインタビューし、復活のきっかけや作品に込めた思いを聞きました。

底抜けに明るい、それこそがコギャル

4月に発売された「GALS!!」第1巻

「GALS!」 カリスマコギャル・寿蘭が、東京の渋谷を舞台に、学校や街で起こる数々の出来事を、持ち前の明るさと正義感で解決していく物語。「りぼん」で1998年~2002年に連載され、累計発行部数は500万部以上。当時、ギャルにあこがれる少女たちのバイブル的な存在だった。2019年にアプリ「マンガMee」で続編の「GALS!!」の連載が始まり、今年4月に1巻が発売された。

――なぜコギャルをテーマのマンガを描こうと思ったのでしょうか。

当時のコギャルたちは、世間のはみ出し者じゃないですけど、大人たちから珍しいものでも見るようにテレビなどで取り上げられていました。実際に渋谷に行ってコギャルたちを観察しましたが、センター街では、たばこの吸い殻などが落ちていた地面にも平気で座るし、メイクや服装も派手。でも本人たちは、通りかかる人が変な目で見ても、まったく気にせず、ものすごく楽しそうに笑っている。今この瞬間を心から楽しむということを謳歌おうかしていました。そんな底抜けに明るいコギャルたちのパワーの源とは何か、探っていくうちに魅了され、私が描くしかないと思いました。

――主人公の蘭ちゃんはどのように生まれたキャラクターですか?

コギャルの要素を全部凝縮しました。友達思いで、仲間が大事。そして落ち込むようなことがあっても、いくらたたかれても、常にフルスロットルで「うちらサイコー!」という気持ちでいられます。さらに警察官一家の娘としての正義感もプラスしました。戦隊ものでいえばレッド、完全無敵のヒーローです。2002年当時はカラーギャングなど、少年犯罪が目立った時代だったので、そういった問題に堂々と斬り込んでいく性格にしました。そういうキャラクターが主人公なので、蘭が恋に落ちて悩むような恋愛メインの物語にはしませんでした。少女漫画のセオリー通りなら、蘭ちゃんとイケメンポジションの乙幡くんがくっついたのでしょうが、2人は特別な関係性にはなったけれど、恋愛関係にはなりませんでした。もし2人を恋人にしていたら、まったく別の作品になっていたと思います。

続編はファンの熱い後押しがあったから

――なぜ17年もたって、続編を描くことになったのでしょうか。

主人公の蘭(中央)、その親友の美由(右)、綾たちの高校卒業後の様子を描く

昨年、弥生美術館(東京都)で開催された企画展「ニッポン制服百年史」の展示の準備をしていて、カラー原稿が大量にあることに気づき、せっかくなので見てもらおうとツイッターのアカウント(@mihona_fujii)を開設したことがきっかけです。初めは期間限定の予定でした。その後、SHIBUYA109とコラボすることになり、短編マンガを描いてツイッターにアップしたんです。主人公の蘭ちゃんたちが当時の2002年から現代にタイムスリップするというお話です。「GALS!」の中で恋人同士になった綾ちゃんと乙幡くんに子供がいるような様子を描いたら、当時の読者が衝撃を受けたようで大騒ぎになりました。閲覧数は1000万を超えました。こんなに反響があるのならと、マンガアプリ「マンガMee」で連載することになりました。

――続編の舞台を2002年当時のままにしようと思ったのはなぜですか。

読者の皆さんの要望が「昔のGALS!の続きが読みたい」だったからです。綾ちゃんと乙幡くんの話も、ようやく2人が向き合って関係が始まるところだったのに、物語が完結していましたから、2人がその後、どうやって距離を縮めていったのかを描かないと、みんな納得しないと思ったんです。109とのコラボマンガも「当時の自分に戻って一緒に楽しめた」という声が多かったので、2002年の続きから始めることにしました。

前作の最終回後の2002年が舞台

ガラケーもファッションも「これが最先端だ」と思いながら描いています。今と昔では、やっぱりSNSの発達が一番違いますね。2002年はmixiすらなくてBBS(インターネット掲示板)の時代ですから。携帯電話も地下は電波が入らないとかありましたよね。だから、今よりも人と人とのコミュニケーションが重要でした。現在は、SNSが発達したことで、目に見えにくくなったことも増え、恋愛の仕方も変わった気がします。

大人の階段を上っていく過程を描きたい

――前作はわいわい楽しい学園生活だった一方、続編は心情の描写が多い気がします。

大人になった当時の読者に向けて描いているからです。私も初めは葛藤がありました。読者は成長しているわけだから、昔の世界観やノリのままでは描けません。蘭ちゃんたちは、まだ18歳だけれども、大人になった読者が共感できるエッセンスをどう入れていくか、さじ加減が難しかったです。恋愛要素を多くし、蘭ちゃんの悲しげな表情や思い悩んだ表情を描くようにしました。すると、作品自体がだんだん大人っぽい雰囲気になってくるんです。

読者の反響が大きかった綾と乙幡の恋愛の行方を丁寧に描いている

今まで「高校生」というカテゴリーに守られていた子たちが社会に出て、少しずつ大人の階段を上っていく過程を描きたいと思いました。前作は“完全無敵なコギャル”だったけれど、永遠に傷つかないキャラクターを描く必要はないと思いました。傷つきながら成長していく様を描かないと、続編の意味がない。恋愛パートでは、恋をするとどうなるのか、自分が自分でなくなっちゃうとか、とんとん拍子にいかないもどかしさがあるというエピソードに、読者のみんながすごく共感してくれているみたいです。

――読者の反応をどのように受け止めていますか。

「蘭ちゃんの言葉に励まされています」という感想が多くてうれしいです。アラサー世代ですから、小さなお子さんを育てているママやバリバリ働いている人、結婚や子育てなど、自分のこれからの生き方に悩んでいる人の相談も多いです。時代も変わり、様々な選択肢を自分でつかみ取れるようになってきたのに、「女性はこうあるべきだ」という、子供の頃からすり込まれた昔の価値観に苦しんでいる女性が多いように感じます。蘭ちゃんじゃないですけど、コギャルたちのように、誰に何と言われようと自分の人生なんですから。誰かの価値観なんかにとらわれないで、自由に生きていいんだよ、と背中を押してあげたいなといつも思っています。

「自分の価値は他人が決めるものじゃない」

――蘭ちゃんをはじめ、ギャルの“自己肯定力”はそんな人たちの心に刺さっているんですね。

蘭ちゃんのセリフで「自分の価値は他人が決めるものじゃない」というのがあるんですけど、これがまさに「GALS!」の原点です。他人の主観や価値観なんて、変わりますから。他人が「あなた100点ですよ」と言ったところで、次の日には0点になるかもしれない。他人の評価なんて何の頼りにもならないのに、周りの評価でしか自分の価値を測ることができなくて苦しんでいる人ってすごく多い。でも蘭ちゃんは自分に価値があると思っているから、何を言われても気にしない。そんな蘭ちゃんの姿に「自分の価値は自分でわかっていればいいと思い直せました」と感じた読者もたくさんいて、それだけでも続編を描いてよかったです。

――それが、藤井さんが考えるギャル魂ですか。

そうです。「私は私が大好き」「私を好きな私が好き」という二重肯定がギャルスピリットですから。「誰に何を言われようと、私は着たい服を着るし、生きたいように生きる」っていう。社会のレールをはずれるという意味ではなくて、「私の核は、誰に何を言われようと変わらない」というのがギャル魂なんです。最近、ファッションや雑誌など、また「ギャル」がカテゴリーとして復活しているのがうれしいです。

「GALS!!」を執筆する藤井さん

――現在、新型コロナウイルスの影響で社会全体に閉塞へいそく感が広がっています。今を生きる女性たちにはギャル魂をどう発揮してもらいたいですか。

20~30歳代、「GALS!!」の主な読者世代の女性たちは、これから子供を産んだり育てたり、後輩たちの面倒を見たりする立場になっていると思います。世の中が暗くなって、人の気持ちも縮こまって、可能性が失われていくように思っても、自分の中にあるギャルポテンシャルは、きっと燃やし続けることができる。自分の価値を丸ごと認めることができる人は、どんな世の中でも輝き続けるに違いありません。ギャルの格好をしていなくてもギャルのスピリットを持っていればギャルです! 「自分を愛していこうぜ!」と、そんなギャル魂を聖火リレーみたいに後輩たちに伝えていってほしいですね。

(聞き手・読売新聞東京本社 川床弥生)

※画像はいずれも©藤井みほな/集英社

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藤井 みほな(ふじい・みほな)
漫画家

東京都出身。1990年に「無邪気なままで」でデビュー。主な作品に「パッション・ガールズ」、「龍王魔法陣」など。マンガMeeで「GALS!!」連載中。Twitterアカウント@mihona_fujii