謙遜は美徳だと思ったのに…相手の気を悪くさせてしまうワケ

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相手から褒められても、おごらず自分のことを控えめに言ったり、一歩下がって相手を立てたりする「謙遜」は、好ましい振る舞いとされています。ところが、使い方によっては嫌みと受け取られてしまうこともあります。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」では、私立中学に合格した娘を巡って、「まぐれだよ」と繰り返し言ったところ、ママ友の気を悪くさせてしまったという投稿がありました。何がいけなかったのか、専門家に聞いてみました。

謙遜しすぎも嫌みになりますよ

トピ主の「ちょこぱい」さんは、今年4月に娘を私立中学に入学させたお母さんです。久しぶりに会うママ友に「○○ちゃん合格おめでとう」と声をかけられました。「ありがとう。まぐれだよ~」と返事をすると、「まぐれってことはないよ。○○ちゃんががんばったからでしょ」と言われ、改めて「いやあ、まぐれだよ」と答えました。すると、「まぐれではないんじゃない? あなたの娘の陰で、落ちた子もいるんだよ! あんまり謙遜するのはよくないと思うよ」と言われたそうです。トピ主は「謙遜は美徳だと思うのですが、皆さんどう思いますか?」と尋ねました。

このトピに、90件を超えるレスが寄せられました。「謙遜のしすぎは嫌みに聞こえる」「相手(の褒め言葉)を固辞し続けるのは美徳でなく失礼」など、コミュニケーションのニュアンスの違いを指摘する意見が相次ぎました。

「シホミン」さんは、「謙遜しすぎも嫌みになりますよ。トピ主さんは一度『まぐれだよ』と言っているので、二度目は言う必要なし。ママ友さんと同じように『娘がよくがんばってくれたと思う』と言えば良かったのに」と書き込みました。

写真はイメージです

「謙遜」は令和で廃れるのか?

「romihi」さんは、「今は、『つまらない物ですが』より『お口に合うと良いのですが』みたいに言うように変わってきましたよね」と、やりとりの変化を指摘。「我が子ががんばったんだから、素直にありがとう。楽しい学校生活を送ってくれると良いな、とかで良くないですか?」とアドバイスします。

一方、トピ主を擁護する声もあります。「アドヴァンテージ」さんは、「その時の会話の流れで、弾みでそんなふうになることってあるし、深刻なことではないと思います」と理解を示した上で、「謙遜が嫌みに聞こえることも確かにありますね。その場合は、表情に嫌らしさが表れます。勝ち誇ったドヤ顔で、謙遜しても白々しいです。成功すればするほど謙遜するのが、賢い処世術だと思うのですが。令和では謙遜は廃れるのか、気になります」としています。

謙遜は褒め続ける言動を仕向ける?

なぜ、謙遜しすぎると相手に不快感を与えてしまうのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

小日向さんは、謙遜しすぎてしまう人の特徴の一つに「自己肯定感の低さ」があると指摘します。こういう人は、褒められても、「何か裏があるかもしれない」「口車に乗せられないようにしよう」「隙を見せてはいけない」などと勘ぐってしまい、素直に受け止めることができません。

これに対し、褒めた相手は、褒め言葉を否定されたことで、会話の流れを中断されるだけでなく、さらに褒める言動を続けるように仕向けられることになります。この構造が、過剰な謙遜を嫌みや不快と感じることにつながると説明します。

写真はイメージです

褒められたり、評価されたりしたときの対応として、小日向さんは次のような三つのポイントで好ましい返答例を示します。

〈1〉 否定しない
「○○さんっていつもおしゃれであこがれます」
「ありがとうございます。自分が好きな格好をしているだけなのですが、気に入ってもらえるなんてうれしいです」

〈2〉 お礼を伝える
「合格おめでとう。難関試験なのにすごいね」
「ありがとう。自分なりにがんばったので、合格してホッとしてます」

〈3〉 同じ言葉を繰り返さない
「次の昇格試験受けてみないか」
「私なんかで大丈夫でしょうか。自信がありません」
「大丈夫だと思うから声をかけたんだよ」
「ありがとうございます。精いっぱいやってみます」
(ダメな例「私なんかで本当に大丈夫でしょうか」と繰り返す。)

小日向さんは「謙遜は本来好まれる行為ですが、過剰になると自己卑下になってしまい、相手に嫌な気持ちを与えてしまいます。褒められても否定ばかりせず、自分を肯定する気持ちを育てていってください」と助言します。

受験に合格したわが子を褒められたら、もっと素直に喜んでもいいのかもしれません。「ビール」さんからは「『まぐれだよ』以外、いくらでも言葉はあったと思いますよ。『ありがとう、ホッとしたわ』『ありがとう、お互い肩の荷がおりたわね』。無難な言葉はいろいろありますよ」という書き込みも。

おごり高ぶらないように気をつけていても、相手を不快にしたり、人間関係をこじらせたり……。言葉選びって難しいですね。

(メディア局編集部 鈴木幸大)

【紹介したトピ】
謙遜って
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小日向るり子
小日向るり子(こひなた・るりこ)
心理カウンセラー

1971年生まれ。静岡県清水市(現静岡市)出身。出版社に勤務しながらJAA認定アロマコーディネーター資格を取得。自殺予防電話ボランティア相談員として4年間活動。公的機関にてセクシャルハラスメント相談員を経て、2012年に「フィールマインド」を設立。対面・電話/スカイプ・メール相談受付件数約4000件(2020年4月現在)。

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