家族がストレス抱えずに暮らせる「ウィズコロナ」の住空間とは

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新型コロナウイルスの感染拡大を機に、テレワークやオンライン学習が一挙に広がり、多くの家庭で暮らしぶりが大きく変化しました。これらは今後も「新しい生活様式」として定着するとみられますが、家族が家で一緒に過ごす時間が増え、ストレスを感じるケースも増えています。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の時代に、家族が快適に暮らすための住空間づくりについて、積水ハウス・住生活研究所の河崎由美子所長に聞きました。

在宅勤務、9割近くが継続希望

「私たちの研究所は、1日24時間を『休養』『家事』『仕事』の三つの時間に分け、住む人が幸せに暮らせる家づくりを研究しています。研究所が設立された2年ほど前は、仕事の時間を家で過ごす人はそれほど多くなく、職場での仕事の一部を家に“お持ち帰り”する程度でした。ところが、新型コロナ禍で多くの人が本格的な在宅勤務を始め、子供もずっと家にいる状況になって、この三つの時間をどうやりくりするかという問題に直面しています」。河崎さんはそう指摘します。

同研究所が5月、小学生以下の子供を持つ20~49歳の男女300人を対象に実施したアンケート調査では、在宅勤務をしている人(88人)のうち、86.4%が「今後も在宅勤務をしたい」と回答しました。在宅勤務で良かったと思うことを尋ねたところ、「時間に余裕が持てる」が50.0%で最も多く、「通勤時間を気にしなくて良い」(45.5%)、「家族とのコミュニケーションが増えた」(39.8%)、「子供とゆっくり話すことができる」(同)と続きます。

一方で、在宅時間の増加で「ストレスが増えた」と答えた人が60.7%に上り、増えた人の割合は、女性(70.0%)が男性(51.3%)を大きく上回りました。河崎さんは「在宅時間が増えて不満に思っていることとして、運動不足や、家計の出費の増加、家事の増加などが挙がっています。特に女性は、家事の負担が増えたと感じ、それがストレスの原因になっている傾向が見受けられます」と分析します。

ダイニングテーブルを移動し、オフィス化

家庭でのストレス軽減のため、河崎さんは次のように住まいを工夫するようアドバイスします。

(1)家具を使ってリビングルームに「コーナー」を作り、オフィス化する

アンケート調査では、在宅中に長時間過ごす場所は「リビング・居間」が87.4%で最も多く、在宅勤務をしている人の58.3%が「リビング・居間」で仕事をしていると答えています。

「リビングルームは、家具をうまく使って仕事のコーナーを作り、そこをオフィス化することをお勧めします。例えば、リビングの隅に仕事用の机を置き、その後ろに本棚を置いて仕切りを作れば、家族が同じ空間にいても、仕事に集中しやすい環境を整えられます」

在宅勤務者の58%が「リビング・居間」で仕事(写真はイメージ)

LDKの間取りなら、ダイニングテーブルを大胆に移動させるのも一つの手だといいます。広くて仕事がしやすいダイニングテーブルをコーナーに動かし、ワーキングスペースとする一方、リビングとキッチンをまとめた生活空間「リビングキッチン」を作り、そこでくつろいだり、食事を取ったりするのです。従来のLとDの家具配置を入れ替えてしまうという発想です。

家族が同じ空間で過ごしていると、オンライン会議などの最中、家族の生活音が妨げになる場合があります。河崎さんは対策として、家族がそれぞれ一日の時間割を作り、それを共有することを提案します。「家族で朝礼を開き、その日の時間割を確認し合ってはどうでしょうか。そのうえで、『この時間はオンライン会議だから、音に気を付けてね』と一声かけると、家族も心づもりができ、お互いのストレスが軽減されます」

(2)家の中に植物やフェイクグリーンを置く

積水ハウスが大阪市立大学医学部と共同で行った研究では、住空間で緑や土が目に映ると、疲労感が著しく軽減されることが明らかになっています。「在宅勤務がきっかけで家庭菜園を始め、オンとオフをうまく切り替えている人が増えています。家庭菜園は無理でも、エアプランツなどの観葉植物ならそれほど手がかからないので、室内に飾ることをお勧めします。フェイクグリーンでも効果は得られます。廊下やベランダに人工芝を敷いて感触を味わってみるのも、手軽な気分転換になります」

勉強は「立ったまま」で効率アップ

(3)座るだけの「自分の空間」を作る

家が手狭なため、「自分のスペース」が持てず、それがストレスにつながっているという人は少なくありません。「『もっと家が広ければ……』『自分用の部屋があれば……』と考えがちですが、実は、自分用のスペースを作る簡単な方法があります。それは『座れる場所』を確保することです」

狭いトイレを「居心地が良い」と感じる人がいるように、人は座れる所を自分の居場所だと感じやすいといいます。「意外に思える場所でも、人はそこに腰を下ろすと落ち着けるのです」。キッチンや洗面所、廊下、玄関ホールなどに、小さな丸いすやベンチを置き、「自分のスペース」を作ります。「クッションも用意して、そこで仕事の合間に新聞を読んだり、コーヒーを飲んだりして、くつろいでみてください。バルコニーやデッキにスペースを作れば、屋外ならではの心地良さを感じられるはずです。私の場合は洗面所で、30~40分座って過ごすこともあります。どこの家も洗面所は明るいのでお勧めです」

いすを置いて自分のスペースを作ると落ち着ける(写真はイメージ)

(4)子供が勉強する場所を複数設ける

家庭内の子供の学習環境に頭を悩ませている親も少なくないのでは。子供に個室を用意している家庭も多いはずですが、勉強場所をあえて固定せず、子供が好きなように勉強できる環境を複数整えるといいそうです。「例えば、算数ドリルを解く時と、読書感想文を書く時では、子供の気分も違うはずです。『気分に合わせて、どこで勉強してもいい』という環境を作ってあげると、子供の学習意欲が高まる効果が期待できます」

子供部屋、リビングのほか、キッチンのカウンターや洗面台など、立ったまま勉強する場所を設けると、意外にも勉強がはかどる可能性が高いといいます。「子供が何らかの作業をする場合、短時間であれば、立ったままの方が、いすや床に座って作業するよりも集中力が増し、疲れにくいという研究データがあります。例えば、ノート1ページ分の漢字練習ぐらいなら、立ってやった方がいいと思います。また、文字がはっきり見えた方が、記憶力が上がるという研究データもあるので、ポータブルのスタンドライドを用意しておけば、様々な場所に持ち運んで勉強できるので便利です」

複数の勉強場所を設けるという考え方は、在宅ワークにも通じるといいます。「ワーキングスペースが1か所だけだと、仕事に集中する余り、疲労感が増してしまいがちですが、複数のワーキングスペースを使い分けて仕事をすれば、そうした疲労感がやわらぐはずです」

「みんなで家事」意識を

河崎さんは「『ここはこういうことをする場所』といった既成概念は忘れて、我が家流のやり方で住まいを有効活用してもらえれば」と話します。

「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の時代に、家族みんなが快適に暮らしていくためには、住まいの環境を整えるだけでなく、家族一人一人の考え方を変えることも大切です。「家事を『お母さんの義務』ではなく、『家族みんなで楽しく取り組むもの』と考えてほしい。家事を義務と捉えると苦しくなりますが、お父さんは仕事の合間の、子供は勉強や遊びの合間の『気分転換』として、一日のスケジュールに家事を組み込んで取り組めば、暮らしにメリハリがついて楽しくなるはずです。家族一緒の時間が長くなった今こそ、『みんなで家事』を意識したいものです」と河崎さんはアドバイスしています。

(取材/読売新聞メディア局 田中昌義)

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河崎 由美子(かわさき・ゆみこ)

積水ハウス住生活研究所長。1987年、積水ハウス入社。高校入学までの12年間を海外で過ごした経験や子育て経験などを生かし、同社総合住宅研究所でキッズデザイン、ペット共生、収納、食空間など、日々の生活に密着した分野の研究開発全般に携わる。2018年8月から現職。一級建築士。