新型コロナで英デザイナーが医療従事者のために作ったもの

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©ANYA HINDMARCH

英国のバッグデザイナー、アニヤ・ハインドマーチさんが新型コロナウイルス治療の最前線で働く国民保健サービス(NHS)の医療従事者向けに、所持品を身につけるケース「ホルスター」をデザインし、話題を呼んでいます。

 「集中治療室で働く人のために、ペンや入館証、スマホなどの所持品を安全に携帯でき、簡単に取り出せるものを作れないか」

集中治療医学が専門のユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのヒュー・モンゴメリー教授から、ハインドマーチさんに電話がかかってきたのは、4月初めのことでした。感染者が連日4000人を超えていました。

モンゴメリー教授の話では、医療機関で着ている防護服はポケットが少ない。長時間労働の中では、みんなが必需品に加えて、スマホも持ち歩くことができれば、空き時間に子どもや家族とも会話ができるようになり、ストレスの軽減になる。そう聞いて、24時間でデザインを仕上げたといいます。

©ANYA HINDMARCH

 こだわったのは機能性。ホルスターは、高温で洗濯できて、汚れを拭き取りやすい素材を使用しています。ポケットにものを入れても動きやすく、快適に過ごせるよう、ハーネス状のストラップを採用しました。そして、表面に小さく「NHS heroes(NHSの英雄たち)」と刺しゅうを添えました。

©ANYA HINDMARCH

 第1弾として400個を製作し、複数の病院で使用を開始。この話を知った英国の大手日刊紙「ザ・タイムズ」がスポンサーとなり、5月には1500個を寄贈しました。さらに全国3万人の医療従事者全員に届けようと、記事で1口10ポンド(約1300円)の募金を呼びかけました。

 ハインドマーチさんは「医療従事者は小さなプレゼントを受け取ったように喜んでくれたし、持ち物を運ぶ負担が軽減されたのならうれしい。このホルスターは、新型コロナウイルスが終息した後も役立つはず」と話します。

デザイナーが社会のために何ができるのか。その役割の一端を見た気がします。

(読売新聞編集委員 宮智泉)

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