「女性はドラえもんではない」コロナ禍で買い物は誰が行くべきか?

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経済活動が再開し、マスクをして客を待つ女性(5月6日、マレーシア、ロイター)

買い物は男性が行くべきだ­──。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出や活動の制限が続く中、アジアでは政府や政治家が、家庭での生活を巡って女性に対する偏見を感じさせる発言や情報発信をし、「炎上」するケースが相次いでいます。

夫婦の衝突は女性が原因なのか

「夫に小言を言わない」
「家の中でも化粧しよう」
「(夫に要望を伝える時は)ドラえもんの口調をまねしてくすくす笑いながら」

これらは、外出制限中に家庭内での夫婦の衝突を回避するため、マレーシアの女性担当省が国民に発信したアドバイスです。同省が3月下旬、こうしたアドバイスを盛り込んだオンラインポスターをフェイスブックに投稿したところ、女性たちから猛烈な反発を受けました。SNS上では、「#女性はドラえもんではない」などのハッシュタグを付けたツイートが相次ぎました。

マレー語で「#女性はドラえもんではない」というハッシュタグを付けて投稿されたツイート。ツイッターより

この時期、真に懸念されていたことは外出制限による家庭内暴力の増加でした。地元メディアは、外出制限が始まって以降、家庭内暴力の通報件数が倍増したと報じています。「(女性に化粧などをすすめるのではなく)家庭内暴力は犯罪だという声明を出しなさい」といった非難が殺到し、女性担当省はオンラインポスターを撤回、謝罪に追い込まれました。

東南アジアのジェンダー問題に詳しいアジア工科大学院(タイ)の日下部京子教授(ジェンダー開発学)は「本来、女性を保護すべき担当省が、『女性がきちんとしていないから問題が起きるのだ』と受け取れるメッセージを発信したため、炎上した。問題の原因を女性にだけ求めて責める考え方の根底には、根強い女性蔑視べっしがある」と指摘します。

買い出しは「家長」が行く

さらにマレーシアでは、外出制限の中で誰が買い物に行くかという問題でも、「炎上」しました。

厳しい外出制限を実施していたマレーシアでは3月下旬、政府が食料品などの買い出しを1回につき1世帯1人と定め、その1人を「家長」とすると発表しました。イスラム教国のマレーシアで「家長」といえばまず男性です。

これに対し、「ほとんどの家長はどの魚や野菜を買えばいいかわからないだろう」「家長は年老いて歩けないが?」「1世帯1人と言えばいいだけでは」といった批判が噴出しました。政府の指示通りに、「家長」が買い物に行ったためなのか、「(店内で)何を買えばいいかわからず、うろうろしている男性が大勢いる」「妻が買い出しする方が早く済む」といった声も上がりました。

スーパーでの買い物を巡っては、日本でも政治家の発言が取りざたされました。

「女の人は買い物に時間がかかる」「言われたもんだけ買うということになればね、男性の方が早い」
大阪市では、松井一郎市長が4月下旬の記者会見で、スーパーマーケットで買い物客が密集状態になっている問題についてそう発言しました。記者から「女性、男性に限った話ではないのでは」という指摘を受け、「そうやね。我が家では」と補足しましたが、ネット上では「古すぎる固定観念」などと批判が集まりました。

若い主婦は卵料理しか作れない?

タイでも与党議員が3月末、国内で鶏卵不足が起きていることについて、「若い世代の主婦たちは卵料理しか作れない。だから卵の消費量が急増するのだ」と当てこすりました。料理をするのは主婦と決めつけた上、若い世代をバカにしていると、批判が広がりました。

スイスの民間研究機関「世界経済フォーラム」による最新の男女平等度ランキングによると、タイは153か国中75位、マレーシアも104位と、日本の121位より上位にあります。日下部教授は、「日本より進んでいるといわれるタイやマレーシアでも、コロナ禍によって、根強く残る男女格差や役割分担意識が表面化した。世界的にも男女平等はまだまだ進んでいるとはいえず、国や社会は徹底して男女平等を推進すべきだ」と話します。
(読売新聞バンコク支局特派員 大重真弓)

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