ヴォーグ イタリア、コロナ禍で見せた驚きの表紙

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Vogue Italia

新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の状況が一変する中、ファッション誌「VOGUE(ヴォーグ)」の各国版が、これまでにない打ち出し方で注目を集めています。

死者の数が3万人を超えたイタリア。そのイタリア版「VOGUE」4月号の表紙はなんと真っ白でした。文字まで白く統一されています。

「これは色や文字が足されることを待っている空白のシート。これから始まる新しいストーリーのタイトルページ」と、エマニュエレ・ファルネティ編集長は説明しています。

白は尊敬や再生、暗闇のあとの光など複数の意味を持つのに加えて、ひとりでも多くの命を守るために奮闘している医師や看護師のユニホームの色でもあり、彼らへの敬意を込めたのだそうです。

40人以上の有名写真家やアーティストらが参加。ファッションデザイナーたちもオリジナルスケッチなどを寄せました。デジタル版は無料でダウンロードも可能です。

まもなく発売になるアメリカ版「VOGUE」6、7月号の表紙を飾るのは、1輪のバラの花の写真。VOGUEの表紙を何度も飾り、2009年に亡くなった写真家のアーヴィング・ペンの1970年の作品です。50年余で静物の写真を使うのは初めてのことだそう。美しく力強い写真です。

この号では通常のファッション誌とは異なり、患者が急増するニューヨークに全国から応援にやってきた医療従事者の写真を撮影して掲載しています。

出版に先駆けてアナ・ウインター編集長は「これまでもVOGUEは暗い出来事を記録してきたが、すべてをリモートワークで行うという未知の領域に挑戦した」と記しています。

新型コロナウイルスとは関係ありませんが、今月発売されたイギリス版6月号を飾ったのは、女優のジュディ・デンチさん。映画「007」シリーズのM役や「恋におちたシェイクスピア」など数多くの映画に出演しているデンチさんは85歳で、VOGUE史上最年長だとか。美しさの基準はひとつだけではないということを訴えているようです。

コロナがもたらした未曽有の事態を、ファッション誌としてどのように表現するか。これまで通りの雑誌作りができない状況に陥りながらも、「今」を切り取ろうと果敢に挑む姿勢には頭が下がります。大きく変わりつつある私たちの生活や価値観。ニューノーマルが叫ばれる中、世界のファッション誌は、時代の空気をいち早く読み取って発信しており、目が離せません。

(読売新聞編集委員 宮智泉)

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