外出自粛で活況の宅配、ミシュラン星付きレストランで注文してみた

News&Column

タピオカを配達する女性

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、タイで3月26日に「非常事態宣言」が発令されてから間もなく1か月。外出時はマスク着用が求められ、商業施設が閉鎖されるなど息苦しい毎日が続いていますが、首都バンコクでは、屋台飯からミシュランのレストランまで味わえる宅配が活況を見せています。記者の1日から現状をお伝えします。

電車はマスク必須

「マスクはありますか?」
4月中旬の午前8時過ぎ、取材先に向かうため、バンコク中心部を走る都市高架鉄道(BTS)駅の改札を通過しようとしたら、係員にそう呼び止められました。BTSなどの交通機関では3月25日から、マスクがないと乗車できません。持参するのを忘れたことを告げると、新品の布マスクを15バーツ(約50円)で購入することができました。タイでは、質はともかく、屋台などで様々な布マスクが販売されていて、簡単に買うことができます。

普段なら、通勤ラッシュの時間帯で満員のはずの車内ですが、かなりすいています。感染予防策として、他者と一定の距離を保つ社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)を徹底するため、座席には1席おきに印が付けられ、並んで座れないようになっています。駅ホームでも、利用客が互いに間隔をあけて、電車の到着を待つ姿が見られました。

まるでゴーストタウン

午後1時過ぎに取材を終え、バンコクで最もにぎわう通りの一つ、スクンビット通りへ。在宅勤務などによる運動不足の解消も兼ねて、BTSプロンポン―アソーク駅の約1・2キロを歩きます。

バンコクでは3月22日以降、人が集まる商業施設などが閉鎖されました。現在は食料品や薬といった生活必需品を販売する店しか、営業を認められていません。在留邦人もよく利用するデパートやブティックは静まり返り、都会のオアシス・ベンチャシリ公園も立ち入りができなくなっています。タイ語で「ソイ」と呼ばれる脇道も人がまばらで、まるでゴーストタウンのようです。

おしゃれタイ料理で気分アップ

一方で、アソーク駅近くの商業施設は活気にあふれていました。食事宅配サービスの「フードパンダ」「グラブフード」などのオートバイがずらりと並んでいます。配達員がひっきりなしに出入りしています。バンコクの飲食店については3月22日以降、店内での飲食は禁止されているものの、持ち帰りと宅配での営業が認められています。施設内では、服や雑貨店がシャッターを閉めるかたわら、テナントの飲食店が料理引き渡しカウンターを設置していました。配達員はカウンターの近くで、ソーシャル・ディスタンスを守るため一定間隔をあけて置かれたイスに腰掛け、料理が出来上がるのを待っていました。

屋台文化が根づくタイでは、自炊の習慣があまりなく、台所がない家も少なくありません。以前からよく利用されていた宅配はますます充実し、屋台ご飯から、仏レストラン格付け本「ミシュランガイド」掲載レストランのメニューまで注文できるようになっています。

帰宅後、2020年のミシュランガイド・タイ版で二つ星を獲得したタイ料理店「R-Haan」のコース料理を宅配で頼んでみることにしました。選んだのは、「タイの味覚のシンフォニー“夏のセット”タイハーブの知恵」という前菜、メインディッシュ、デザートからなる計19品です。ミシュランのホームページに紹介されていた店のラインアカウントを通じてメニューを確認、注文すると、希望通り午後6時に自宅マンションに届けてくれました。

配達をしてくれたのは、店の従業員でした。タイでは、個人営業のオートバイタクシーが様々な商品の配達を請け負うこともよくあります。料理はそれぞれ個別の容器に入れられ、丈夫な紙袋にしっかりと収まっていました。従業員はマスク姿で、感染防止対策として手渡しを避け、マンション1階のカウンターに置く形で、受け渡してくれました。支払いは、夫の分と2人前を注文したので、宅配料金100バーツを含め、計3,524バーツ(約1万1600円)。こちらの都合で現金で支払いましたが、振り込みも可能だそうです。

前菜は、魚粉をまぶしたスイカ、チキンとカシューナッツがのったパイナップル、ポメロサラダなどで、いずれもさわやかな風味でした。メインディッシュのトムヤムクンと和牛リブのグリーンカレーは、ハーブとスパイスがしっかりと利いた食べ応えのある一品。グリルしたエビのマンゴーディップ添えも、異なる味の組み合わせが絶妙でした。デザートは、バナナの皮で包んだマンゴーご飯や、エッグカスタードとカボチャのムースなどで、どれも優しい味わいでした。ぜいたくな夕食となりましたが、夫婦で「元気をもらえるおいしさだね」など会話も弾み、楽しい気分転換になりました。

静かな夜

日中は自由に出歩けますが、午後10時~午前4時は外出禁止となっています。違反すれば、2年未満の禁錮や4万バーツ(約13万円)未満の罰金などが科せられます。

最寄りのBTS駅は、午後9時半にはすでにシャッターが閉まっていました。近所のコンビニエンスストアは午後10時ぴったりに閉店するとのこと。「閉店作業をした後、店に泊まって、明日帰るんだ」と、20歳代の男性店員が教えてくれました。午後10時過ぎ、自宅バルコニーから通りを眺めると、夜間混雑することもある道路なのに、1台の車も走っていませんでした。

4月20日現在、タイの感染者数は計2792人。新たな感染者数は1日30人前後とピーク時の約6分の1にとどまっています。非常事態宣言は4月30日が期限ですが、政府は慎重に判断する構えを示しており、先行きは不透明です。日々に小さな楽しみを見いだしながら、流行が過ぎるのを待つしかなさそうです。
(読売新聞バンコク支局特派員 大重真弓)

【あわせて読みたい】
「部屋着じゃダメ?」コロナで在宅勤務、ふさわしい服装は
感染拡大で続く自粛生活…コロナ疲れしないためにすべきこと
新型コロナで上司に不満爆発…転職を決意する前にすべきこと