新型コロナでテレワークになって減給、これってありなの?

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新型コロナウイルスの影響で、経営が悪化する企業が増えています。会社から突然、解雇や減給を伝えられたら――。すでにその危機に直面している人や不安を感じる人も少なくないでしょう。4月にコロナ関連の「労働相談ホットライン」を実施した弁護士法人「金沢合同法律事務所」の徳田隆裕弁護士(36)に、気をつけるべきポイントを聞きました。

「働く場所が違う」だけ

――どんな相談が寄せられているのでしょうか。

例えば、「会社から『テレワークを始めるので、給料を4割カットする』と言われて困っている」というものがありました。労働基準法には「会社の事情で従業員を休ませる場合は平均賃金の6割以上の休業手当を支払う」という決まりがあるのですが、どうやら会社側がそれを勘違いしているようなんですね。

テレワークの場合、従業員は休んでいるわけではなく、働く場所が「会社」か「自宅」かの違いだけなので、給料は全額を支払わないといけません。

もしテレワークを理由に給料の一部が支払われなかった場合、裁判をすれば差額が認められると考えます。ただ、裁判には多くの時間と手間がかかります。まずは従業員の皆さんが団結して会社と交渉するのが良いと思います。

――テレワークで通勤がなくなり、仕事の合間に家事や育児をしている人も多いと思います。実質的な「オン」の時間が短くなったのだから、給料を減らしても良い、という会社もありそうです。

それも認められません。たまたま仕事に関わる時間が短くなっても、それで成果が出れば問題なく、給料を減額する理由にはなりません。

インターネット通話で取材に応じる德田弁護士

退職届には安易にサインしない

――会社から「辞めてほしい」と言われた時は、どう対応すればいいのでしょうか。

コロナの影響で業績悪化した企業が、従業員に「退職届にサインしてほしい」と迫るケースが出ています。ですが、安易に応じてはいけません。

サインすれば、法律上は「自己都合退職」となります。自分から勝手に辞めた、という扱いで、その後、会社に何も請求できなくなる可能性があるのです。

――会社から強要されてサインしてしまった場合、泣き寝入りするしかないのですか。

そうとも限りませんが、裁判では「自由な意思に基づいてサインしたわけではない」と、従業員側が立証する必要があります。現実的には、会話の録音でもないと、ハードルは高いです。

会社の都合による「整理解雇」を行うには、厳しく条件が定められています。例えば役員の報酬をカットするとか、従業員を配置転換するとか「解雇を回避するために最大限の努力をしたか」が問われることになるのです。

――コロナの影響で従業員を休ませる企業には、国が休業手当の一部(上限1人1日当たり8330円)を助成する「雇用調整助成金」制度の特例もあります。

そうです。雇用調整助成金も使わず、いきなり解雇した場合、それは無効だと私は考えます。もちろん弁護士に相談して裁判となれば時間はかかりますが、自己都合退職に比べれば争いやすくなります。解雇が無効になれば、解雇されていた期間中の未払い賃金の請求が認められます。

――派遣社員や契約社員の「雇い止め」の場合も同じでしょうか。

日々、非正規社員の方々からも相談を受けていますが、本当に難しい問題だと悩んでいます。有期労働契約の更新が認められるには「労働者側に更新されるものと期待することについて合理的な理由」が必要になります。つまり、正社員にはないハードルがあるのです。

例えば、会社側から「ずっと雇用する」と言われ、それが録音や念書という形で残っていれば、まだ争いやすくなります。あるいは10年間に10回も有期労働契約が更新されてきたとすれば、従業員は当然、「次も更新されるはず」と期待することに合理的な理由があるといえます。しかし、そのような場合はそれほど多くないのが実情です。

日本労働弁護団がまとめたコロナ関連の「労働問題Q&A」などを参考に、まずは正しい知識を身につけ、助けが必要な時は弁護士などの専門家に相談してください。

知事の要請で休業、給料はどうなる?

――休業要請で仕事が休みになった場合、休業手当は支払われるのでしょうか。

これは専門家でも意見が分かれるところです。休業手当を支払う必要があるのは「会社の責めに帰すべき事由」で休業する場合です。

一方、コロナ特措法(改正新型インフルエンザ対策特別措置法)に基づく知事の休業要請があった場合。例えばナイトクラブやバー、娯楽施設ですね。これらの娯楽施設が休業要請を拒否すると企業名が公表されてしまうので、企業は事実上、応じざるを得ません。そこまでくると「会社の責めに帰すべき事由」とはいえなくなってくる可能性があります。

休業手当が認められるかどうかは、知事の休業要請の内容、業種、地域によって異なってくると考えられ、一概には言いにくいです。最終的には裁判所に判断が委ねられると思います。

感染した従業員のペナルティーは?

――「感染したら会社から処分を受けたり、損害賠償を求められたりするのでは」と不安を感じている従業員も少なくないと思います。法的には可能なのでしょうか。

まず懲戒処分についてですが、会社の就業規則で「コロナに感染したら懲戒処分する」などと定めてあるところなんてないでしょうから、そもそも懲戒理由がないとして無効といえます。

最近は感染経路が分からない人がほとんどで、感染者に責任はないと思います。この観点からも、コロナに感染したことを理由とする懲戒処分は無効になると考えます。

感染した従業員に対し、会社側が損害賠償を求めるケースが出てくるのでは、というのは私も心配しています。特に中小企業では。

ですが、感染者が出て会社に損害が生じても、従業員に過失がなければ、会社は従業員に対して損害賠償は請求できません。

――経営者も苦しい状況で、従業員を雇い続ける余裕がなくなってきています。

私も法律事務所を経営している立場ですので、よく分かります。ただ、従業員は弱い立場で、解雇されれば路頭に迷う人も出てきます。国の助成金や借り入れなど全力を尽くして、何とか雇用を維持していただきたい。「従業員を守りたいが、どうすればいいか」という相談も弁護士にしてください。

(聞き手/読売新聞中部支社 小野田潤)

新型コロナウイルスに関する労働相談を行っている団体

弁護士法人 金沢合同法律事務所

日本労働弁護団

日本弁護士連合会

日本労働組合総連合会

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