「なぜ、今?」コロナの危機感に温度差…神経質になりすぎか

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新型コロナウイルスの感染拡大を防止するには、外出の自粛に加えて、「3密」(密閉、密集、密接)を避け、人との間に一定の空間を保つソーシャルディスタンス(社会的距離)をとることなどが大切とされています。でも、具体的な実践となると、人によって温度差があるようです。読売新聞が運営する掲示板「発言小町」には、「旅行に行こうとする彼」「孫に会いに来たいと言う姑」「一緒にテレワークをしようという友人」など、身近な人との危機感の違いに戸惑う声が相次いでいます。どうすればいいのでしょうか。専門家に聞きました。

「神経質になりすぎているのでしょうか」

「今!孫に何かしてあげたいと言う義母」というタイトルで投稿してきたのは、トピ主「おでかけしたい」さん。今月7日に緊急事態宣言が出た地域に住み、生後半年の赤ちゃんを育てています。

車で1時間ほど離れたところに住む義理の母からメールでたびたび連絡があります。「布マスクを作ったから持って行きたい」「退屈なので孫に何かしてあげたい」「ケーキやおもちゃを買ってあげたい」。ありがたいと思いつつも、「外出自粛が要請されているのにどうして?」という気持ちになってしまうそうです。「私が神経質になりすぎているのでしょうか」と意見を求めました。

写真はイメージです

同じように緊急事態宣言が出された7都府県に住む人からも、身近な人との受け止め方の差をつづる投稿が相次いでいます。「むぎ」さんは、友人から「一緒にリモートワークをしよう」と誘われて戸惑っているそうです。リモートワークになった知人で自宅に集まって仕事をしたいとの提案があったそうです。これに、トピ主は「正直ドン引きしてしまって……」としつつも、「私の頭が硬いんでしょうか」と疑問を投げかけます。

桜の開花時期に合わせ、彼と秋田県へ旅行を計画していたという「anne」さん。本人は旅行の中止を考えていたのですが、彼からは「天気も良さそうだし、楽しみだよね~」と、のんきなメールが届き、思慮のない態度に不安を覚えました。旅行は結局キャンセルしましたが、このことで、彼との結婚に迷いを感じています。

曖昧で分かりにくい情報が混乱の原因

外出自粛や3密回避など、コロナ対策が繰り返し呼びかけられているにもかかわらず、なぜ、危機感に温度差が生じているのでしょうか。

リスクコミュニケーションの専門家、西澤真理子さんは「行政からの曖昧で分かりにくい情報が、危機感の温度差を生み、混乱につながっているのではないでしょうか」と指摘します。

例えば、東京都内では、「夜間の外出は控えてください」との呼びかけがある一方で、居酒屋を含む飲食店は午後8時まで営業して良いとされています。一部の地方自治体では当初、客足が遠のいたために観光客誘致に力を入れていました。ところが、ここへきて、都会から地方への「コロナ疎開」は遠慮してくださいと改めています。

マスクの着用については、予防効果の議論を続ける人もいて、「意味がない」という非着用派に、着用派は「マスクをしてほしい」と気をもんでしまいます。日用品や食料品の買い物へ出かけるのは構わないとされていますが、その結果、スーパーや商店街が大勢の人で密集するような状態が報告されています。

いずれの例も、ルールや基準が明確でないために、それぞれの人によって解釈が異なり、言動に温度差を生じさせてしまっています。

政府は16日、東京、大阪など7都府県に加えて、「緊急事態宣言」の対象地域を全都道府県に拡大することを決めました。対象地域でない自治体への移動が見られ、人の移動を全国一斉に抑える必要があると判断したとされています。

「この地域では自粛が求められているのに、隣県ではそうでないといった対応の違いがあっては、リスクに対する温度差が生まれてしまうので、対象地域を拡大したことは意味があることだと思います」と西澤さんは言います。「人々に行動変容を求めるのであれば、何をすべきか、何をすべきでないか、具体的で一貫したメッセージを伝える必要があります。なるべく短い言葉で、次のようなキャッチフレーズや標語にすることが大切です」と話します。

「Stay Home」
「家にいよう。みんなのために」
「手を洗おう。何回でも」
「離れよう。2メートル」
「誰かと話すときはマスクを」

リスクの伝え方は3段階で

「人の少ないキャンプ場なら大丈夫では」「困っている飲食店を助けるためにたまには外食しよう」「退屈している孫におもちゃを買ってあげたい」「学校が休みだから友達と遊びたい」……。リスクを理解しているつもりでも、実際の行動となると、自分に都合の良い解釈をしてしまい、周囲の人と温度差が出てしまうケースがあります。

西澤さんはこのような言動について、「大切な人を感染させたくないから家にいよう」「テイクアウトをして家で食事しよう」「落ち着くまで旅行はがまんして家で過ごそう」といった言葉で伝え、極力例外を排除し、一貫して「家にいる」という態度を示し、リスクを共有化することが大切とアドバイスします。

写真はイメージです

リスクを伝えるには、次のように3段階で行うといいそうです。

〈1〉 いったん受け止める。共感(「そうだよね」「それいいね」など)を示す
〈2〉 事実を伝えながら断る(「残念だけれど」「そうしたいけれど」「自分たちが感染しているかもしれないって考えたら」など)
〈3〉 代替案を提案する(「家でご飯にしない?」「LINEで会話しよう」など)

「この3段階で気持ちを伝えると、相手を怒らせたり、がっかりさせたりせず、リスクを理解してもらい、温度差を埋めることができます」と西澤さん。

新型コロナウイルスの感染防止について、夫婦、嫁姑、同僚、恋人同士など身近な人たちの間で考え方や行動の違いが浮き彫りになったとき、西澤さんは、「まずは、相手に問題があると考えるより、情報がそもそも混乱しているところに原因があると考えましょう」と提案します。

そして、相手の考え方や行動を批判するのでなく、「そういうことは感染のリスクがあると言われている」「今はこうしたほうがいいと思う」など、話し合いを重ねていくことを勧めます。「危機感を共有できれば、おのずと行動も変わってきます。ぜひ実践してみてください」と西澤さん。

いつ収束するか、先の見通しが立たない新型コロナウイルス。身近な人たちで対立するのではなく、ともに立ち向かうことが肝心です。感染を広げてしまう可能性のある行動は慎みたいものですね。
(メディア局編集部 鈴木幸大)

【紹介したトピ】
一緒にリモートワークしようと言う友人
緊急事態宣言後 旅行に行こうとする彼との結婚
今!孫に何かしてあげたいと言う義母

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西澤 真理子(にしざわ・まりこ)
リテラジャパン代表取締役

東京生まれ、上智大外国学部ドイツ語学科卒。銀行、製品安全コンサルタントを経て、英・ランカスター大環境政策修士号、インペリアルカレッジ・ロンドンにて博士号を取得。総務省、厚生労働省、科学技術振興機構、日本学術会議連携委員なども務める。IAEA(国際原子力機関)コミュニケーションコンサルタント。著書に『「やばいこと」を伝える技術:修羅場を乗り越え相手を動かすリスクコミュニケーション』(毎日新聞出版)など。

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