小倉優子さん離婚危機で考える、日本の妻の 「内助の功」

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先日、タレントの「ゆうこりん」こと小倉優子さんの離婚危機が話題になりました。小倉さんは2018年に子連れで再婚し、現在、第3子を妊娠中ですが、歯科医である夫とは既に別居生活に入っていると報じられました。本当は何があったのか、知るのは当人のみですが、今回は、「結婚」に関する「世間の価値観」にスポットを当ててみたいと思います。

活躍する男性には「内助の功」が必要?

小倉さんの離婚危機が報じられるなかで、ネット上にはご主人について触れた記事もありました。それらの記事のコメント欄には、「ご主人が歯医者さんなら、妻は夫を支える『内助の功』をするべき」という意見が多数みられました。

仕事で成功を収めた人を身近な人が陰で支えていることは多いので、「内助の功」を全面的に否定する必要はないと思います。でも今の時代、結婚した女性に対して「内助の役割」を強いるのはどうなのかなと思いました。

小倉さんは、母親であることを売りにした「ママタレ」として確固たるポジションを築いています。「こりん星からやって来た」として有名になった十数年前から、再婚後の今に至るまで、芸能界の仕事が途切れていないことを見ても、本人には仕事に対するこだわりがあると思われます。仕事が好きでないと、ここまで長く続けることはできないですし、収入もそれなりにあることでしょう。

ところが、ネット記事のコメント欄に「ゆうこりんは芸能活動をセーブして、ご主人の歯科医院を手伝うべきだった」という声はあっても、「ご主人は歯医者を辞めて、小倉優子のマネジャーをやるべきだった」という声は聞きません。どうも今もなお、「女性は自分の仕事より、男性の仕事を優先するべき」と考える人が多いようなのです。

実際、仕事で活躍する女性と結婚したら、妻が仕事を辞める、あるいはセーブすることを望む男性は多いように感じます。「どんなに仕事が好きな女性でも、好きな男性と結婚をしたら、喜んで仕事を辞めるはず」と信じてやまない男性の姿がそこにはあります。もちろん全員ではありませんが。

人それぞれですので、歯科医師のポジションを捨て、喜んで妻のマネジャーになる男性もいるのかもしれません。でも大概の男性は、妻にそういう提案をされたら、プライドが傷つくのではないでしょうか。

女性のプライドは「ないがしろ」にされがち?

問題は、一部の人々の間に、「好きな人と出会ったら、女性は喜んで仕事を辞めるはず」という昭和の男性さながらの価値観が、いまだに存在していることです。決して悪気があるわけではなく、純粋にそう信じている場合もあります。

栄養バランスがとれた食事を用意するのは妻の務め?(写真はイメージです)

世間にも「内助の功」を良しとする風潮は残っているので、これも追い風となり、彼らの目には「結婚と同時に、女性が仕事を辞める、またはセーブする」ことが「自然の流れ」になっているように映るようです。

どんな仕事でもそうですが、仕事が軌道に乗るまでは、性別に関係なく、「努力」が必要です。たくさんの努力を重ねて成功を収めた人には、これまた性別を問わず、仕事に対する「プライド」もあります。そう考えると、女性にばかり「結婚とともに、仕事へのプライドを捨てること」を求める風潮は酷なのではないでしょうか。

「内助の功」 海外では

筆者が育ったドイツでは、例えば、サッカー選手の妻は仕事をしていないことが多いです。彼女たちの「内助の功」は、観客席で夫を応援したり、試合先について行ったり、といった「精神的な支え」がメインです。栄養管理や体調管理は専属のアドバイザーが担当しているので、日本のように妻が行うという考え方はありません。

基本的にヨーロッパには、女性が結婚前からしていた仕事について、「結婚後に辞めるべき」と考える男性はあまりいません。ドイツに関しては、性別や年齢を問わず、仕事については現実主義者が多いため、会話の中で若い女性が「収入が減ると、将来もらえる年金の額が少なくなる」といった類の発言をすることがたびたびあります。自分の人生を長い目で見たとき、「女性だからといって仕事を辞めるのはリスキー」だと考えるわけです。ただ、リスクを考える以前に、今の時代はそもそも、女性自身に「仕事を辞める」という発想がないことが多いです。

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先ほどドイツ人は現実主義者だと書きましたが、ドイツでも一般的に女性の収入は男性よりも少なく、「女性がもらえる年金の金額が男性よりも少ない」ことがメディアでたびたび取り上げられており、世間でも問題視されています。そういった現状を直視し、「女性が仕事を辞めると、もらえる年金額がもっと少なくなる」ことを深刻な問題だと考える人が多いのです。これは、日本人が聞いたら夢のない話かもしれません。しかし、日本でも高齢者を含む女性の貧困は問題になっていますので、この手のリスクについて考えてみることも必要なのではないでしょうか。

男女間で起きる「矛盾」はお互いさま?

縁とは不思議なもので、どんな男性がどんな女性と出会って一緒になるのかについて、はっきりとした答えはありません。言ってみれば、互いの好みや相性が大事なのだと思います。

「内助の功」に関しても、夫が妻にそれを求め、妻も納得していれば問題ないのかもしれません。ただ現実的なことを言うと、男性が女性に内助の功を求めるのならば、今の仕事を好きだと感じていない女性を選んだほうがうまくいくかもしれません。というのも、女性が自分の「仕事が好き」という心の声をかき消して夫のサポートに回ると、無理が生じるからです。

女性の第一線での活躍ぶりを目にして恋愛し、結婚しておきながら、当たり前のように「結婚後は自分を支えるために女性は仕事を辞めるものだ」と考えるのは矛盾しています。かつて芸能界では、歌手の岩崎宏美さんが離婚した際、結婚相手の男性から家庭に入るよう望まれたことがその理由だとされました。得意分野で成功を収めている女性に仕事を辞めさせるとはどういう思考回路なのかと、筆者は不思議に思ったものです。

でも、よく考えてみると、女性の中にも「矛盾」はあるのかもしれません。というのも、「仕事ができる男性が好き」と言い、付き合っている時はパートナーである男性の激務がそれほど気にならなかったのに、子供が生まれ、「ワンオペ育児」になってから「夫の激務」を嘆く女性が多いのも事実だからです。最初からワーク・ライフ・バランスを重視した生き方をしている男性を選べば、起こらなかった問題だと言えるでしょう。

そう考えると、「矛盾」に関しては、男も女もお互い様なのかもしれません。自分の中にある矛盾した考え方には、私も含めて気をつけたいところです。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)。