「昭和のお母さん」を強いられる!? 日本のPTAが大変な理由

サンドラがみる女の生き方

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前回、日本と海外のPTAの違いについて書きました。アメリカのPTAは、1年に4回ほどある子供たちのための「お楽しみ会」の企画が活動のメインであり、また、ドイツのPTAは、「やりたい人だけがやる」少人数制のため、どちらも日本と比べて親の負担は少ないです。日本のPTAはなぜこんなに大変なのでしょうか。今回は、女性の観点からPTAを考えてみたいと思います。

働くママの悩みのタネに

公立の小学校に通う子供のお母さんが避けて通れないもの。それはPTAです。会合の大半は平日の昼間に行われ、暗黙の了解で父親ではなく、母親の参加が求められることが多く、これが働く女性の負担となっています。仕事があるためPTAの役員になるのを断りたくても、ボス的存在の人から「仕事をしていることは役員を断る理由にならない」と諭されたりするなど、PTAは悩みのタネとなっているようです。

ドイツを含むヨーロッパでは、「子供の親は性別に関係なく働いているものだ」という社会のコンセンサスがあり、PTAの会合が「平日の昼間」に行われることはまず、ありません。親と教師の面談も、PTAの会合も、基本的に「平日の夜」に行われます。その間は、会合に参加しない方の親が家で子供の面倒を見たり、ベビーシッターさんに子供を見てもらったりすることもあります。

そのため、外国人の視点から見ると、日本のPTAの会合が今なお、「平日の昼間」に行われていることは不思議に映ります。高度経済成長期だった頃の日本は、専業主婦が多く、PTAの会合が平日の昼間に行われることも自然だったのかもしれません。でも、働く母親が増えている今もなお、変わらず平日の昼間に会合が行われていることに釈然としない気持ちになっている人は、日本でも多いのではないでしょうか。

母親を「学校や地域のお手伝いさん」と見なす

筆者は、平日の昼間に母親がPTA活動に引っ張り出されている原因として、今なお消えていない「昭和のお母さん像」があると思っています。

発売中の「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)にも書きましたが、PTAの活動内容には「学校行事の運営の手伝い」「地域に学校や生徒の様子を伝えるための広報活動」「町内会主催の盆踊りやお祭りの手伝い」などといったものが含まれます。「PTAは学校のものなのに、なぜ地域の盆踊りの手伝いを?」と思ってしまいそうですが、PTAの活動内容には「地域の特性を生かした行事に参加する」というものが含まれているのです。そのため、女性たちが当たり前のように週末に地域の活動に駆り出されているところもあります。筆者には、これがまさに「昭和のお母さん」のように映ります。

というのも、かつて女性は、お盆やお正月に夫の実家の「おさんどん(台所仕事)」に駆り出されるのが当たり前でした。この「義実家」を「学校」や「地域」に置き換えてみると、構造がとてもよく似ていると思うのです。

言い方は悪いですが、PTAのお母さんたちが時に「学校や地域のお手伝いさん」として見なされていることが気になります。女性本人の意思は尊重されず、「女ならそれぐらいやるのは当たり前」と言わんばかりに、女性に負担を強いていることが多いのです。

さらに腹立たしいのは、ベルマーク運動など、やたらと時間のかかる活動は母親がメインでやっているにもかかわらず、PTA会長など「上の方のポジション」となると、そこは男性で埋まっていたりすることです。私の友達の女性は「PTAって何だか昭和の会社みたいなのよ。上の方のポジションは男性で埋め尽くされているのに、現場の下っ端は女ばかりで、面倒なことは全部、女に任せている感じ」と嘆いていました。今の時代、これはジェンダーバランスの観点からも問題だと思います。

「仕事以外の義務」女性にばかり

働くお母さん全員が「時間に融通の利く仕事」をしているわけではありません。そもそも、有休を取りづらい雰囲気の会社が日本では少なくありません。そんななか、女性にばかりPTAのために有休を取ることを強いているのは理不尽だと言わざるを得ません。

たとえば、有休を取って思い切りリフレッシュして仕事に戻るのならば、仕事のパフォーマンスも上がるでしょう。しかし、有休のたびにPTA活動をしていたのでは、リフレッシュとは言い難いです。細かいことかもしれませんが、PTAも含め、こういった「仕事以外の義務」が女性にばかり課せられることが、働く女性の足を引っ張っているのではないでしょうか。仕事に集中するためには、「仕事以外の部分」をなるべくシンプルにすることが求められます。しかし、女性がPTA活動に駆り出されていては、シンプルとはほど遠く、女性は疲労するばかりです。

PTA活動にも良い面はたくさんあります。しかし、「女性の立ち位置」を中心に今一度考えてみると、「ジェンダー・ギャップ指数2020」でニッポンが153か国中121位という結果になってしまった背景には、やはり「女性が仕事に打ち込みにくい環境」があります。家事やPTA活動を含む「仕事以外の部分で女性に負担がかかっている」現状を、見直してみる必要があるのではないのでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)。