有休義務化なのに「朝礼でお礼」「罪悪感」…職場のギスギスなくすには

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あなたの有給休暇(有休)、今年度は何日残っていますか。働き方改革の一環で労働基準法が改正され、労働者に年間5日の有休を取得させることが企業の義務になって、間もなく1年。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、有休を巡って、「取った翌日には、必ず朝礼でお礼を言わされる」「先輩から『休みすぎ』と言われた」といった取得者からの投稿が寄せられています。そのエピソードからは、どこかギスギスした職場の様子がうかがえます。年度末だからこそ知っておきたい有休制度の基本について、労働関係の法律に詳しい専門家に聞いてみました。

「お休みをいただきありがとう」は普通?

「有給休暇を取った翌日の朝礼の挨拶(あいさつ)」というタイトルで投稿してきたのは、トピ主「ジミー」さん。職場では、部署ごとの朝礼で各自が業務内容を報告しますが、前日に有休を取った人は必ず、「昨日はお休みをいただき、ありがとうございました」と言ってから報告を始める「しきたり」があるそうです。

「この『昨日はお休みをいただき』という表現に違和感を覚えるのは私だけでしょうか? かといって、『昨日はお休みを下さり』というのもちょっと大げさな響きがありますし、何と言うのが自然で正しい表現でしょうか?」と、トピ主さんは発言小町で聞きました。

この投稿には18通の反響がありました。

ベテラン、新人関係なく一人一人にあいさつ

 

同じような体験をしている人もいました。「ビネガー」さんは、「(私も)最初に入った会社は、有休の前日に、一人一人に『明日、有休いただきますので、よろしくお願い致します』と言う習慣がありました」と書きました。ベテランも新人も関係なく、前日はもちろん、休み明けにも「ありがとうござました」と一人一人に言わねばならず、うんざりしたこともあるそうです。

「違和感があるなら言わなければ良い」と書いてきたのは、「ケンちゃん」さん。「しきたりと言っても別に強制力はないのですよね。だとしたら『昨日は有休取得でした』と言ってから業務内容を報告したらどうでしょうか」と提案します。「りり」さんも「なんだか時代錯誤的な考えのある職場のように感じますね。おそらく“有休をあげてやる”という考え方なのでしょうか。有休は権利であり、義務でもある(はず)。なので、堂々と明るく言い切っちゃいましょう。少しずつ職場の雰囲気が変わるといいですね」と励まします。

「罪悪感を伴わないといけないの?」

「有給休暇取得の罪悪感について。」というタイトルで投稿したのは、新卒で入って十数年間、同じ上場企業に勤めているトピ主「MIKU」さんです。自身は海外旅行が好きなこともあって、繁忙期以外を選びながら有休消化をしていますが、隣の課の50代の先輩女性から「あなたは休みすぎ。有休取得に罪悪感を感じないのは2割の人だけ。あなたの休みは8割の人の我慢の上に成り立っている」と言われたそうです。「有休を取得するためには、罪悪感を伴わないといけないのでしょうか?」と発言小町に問いかけました。

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この投稿に、「最近じゃ有休とらないと叱られるのに」と書いてきたのは、「ワーママ」さん。「50代の人たちは、考え方が違います。口では若者に理解のあるように言いますが、バリバリの昭和です。本音は変わらないです。『遊びで休むなんて許せない』。職場で海外旅行に行くなんて言うもんじゃないですね。遠方の親に顔出すとか、親の体調が悪いとか言っておくといいでしょう。罪悪感を感じる、感じないの統計はどこなんでしょうね? 本人の主観じゃないですか?」と指摘します。

同じように、有休取得で嫌な思いをしている人はいるようです。「有休取得は当然の権利、理由は言う必要ない、罪悪感持てだなんてハラスメント、繁忙期避けてたったの5日なのに、と心の中で思うのですが、『すみません』『有休ありがとうございます』と申し訳なさそうな表情でペコペコしながら皆に申し上げています」と書いたのは「匿名」さん。

これまでにも、妊活のための通院などで理由を言わずに有休を取ろうとすると、「遊びに有休なんて」と言われ、理由を公表すれば「いつまで続けるの?」「え? 土日や平日夜間の受診できる医院・病院いっぱいあるよね」と冷たく言われたことがあるそうです。

有給休暇は労働基準法で定められた労働者の権利

では、周囲の無理解、有休取得を巡るギスギスした雰囲気は、どうやったら改善できるのでしょうか。労働関係に詳しい弁護士の佐々木亮さんに聞きました。

年間5日の有休義務化について話す佐々木亮弁護士(東京・有楽町の「旬報法律事務所」で)

まず、有休取得前後の職場でのあいさつについて、佐々木さんは「仕事の引き継ぎの意味で、『明日は自分がいないからよろしく』という程度なら問題ないでしょう。でも、慣例的に職場全体で『この言い回しでないとならない』としているなら、それはある種、条件を付していることになって、問題です。投稿された方の違和感は当然です」と話します。

仕事を休んでも給与が支払われる有給休暇(正式には年次有給休暇)は、労働基準法で決められた休暇制度です。

休暇が付与される条件としては、
(1)雇い入れの日から継続して6か月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
の二つがあります。

両方の条件を満たす場合に、最低10日間の有休取得が可能になります。

年間5日間の取得は企業への義務付け

さらに2019年4月からは、年間5日間の有休を労働者に取得させることが企業に義務付けられました。正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、パートタイマー、アルバイトでも条件を満たす場合は、義務化の対象になります。「企業の労務担当は、常にどのくらいの割合で各労働者が有休を消化しているかを把握する必要があります。年間を通して5日の消化ができていない労働者が一人でもいる場合は、罰則の対象になりますから、企業側から個々の労働者に対し、有休取得を指定し、消化させる義務もあります」と佐々木さんは指摘します。

法律的に有休取得は労働者の権利であり、理由を問わないことになっています。

でも、投稿内容から垣間見えるのは、「同僚に迷惑をかけるような休み方はどうなのか」「取得できなくても、健康で働くことができるなら、それでいい」といった考え方です。佐々木さんは、「同じ職場の中でも、『有休は取得したくない』というツワモノもいるでしょう。でも、心身の疲れをリフレッシュし、ワークライフバランスを図るという有休の本来の目的を理解すれば、自分が取るか取らないかの以前に、みんなが気持ちよく取得できる環境にしていくのが上司のマネジメント能力でしょう」と話します。

中小企業の経営者の中には、「うちには有休はない」と強弁するケースが以前からあります。有休義務化によって、昨年度までは休業日だったのを、今年度は営業日にして有休とすり替える形で、「見せかけの有休消化」を達成しているケースなども出てきています。

職場の方法に疑問がある場合は、最寄りの労働基準監督署に相談すると良いそうですが、「まずは今、自分の有休がどれくらいあるのかは知っておきたいですね」と佐々木さん。

働き方改革の一つでもある有休義務化。多くの職場では、だれかが休めばその分をほかの人がカバーせざるを得ないのでしょうが、同じ職場で働く者として、互いに有休を権利として認め合うことから、雰囲気を変えていくしかないのかもしれませんね。(読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

【紹介したトピ】
有給休暇を取った翌日の朝礼の挨拶
有給休暇取得の罪悪感について。

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佐々木亮(ささき・りょう)
弁護士。1975年生まれ。2013年に若年労働者の長時間労働やパワーハラスメントなどの問題を扱う「ブラック企業被害対策弁護団」を結成、代表に。旬報法律事務所。共著に「まんがでゼロからわかる ブラック企業とのたたかい方」などがある。