大学生がジェンダーを学び本を出版、固定観念にとらわれない 

News&Column

立教大で月に1度開かれるコーヒーアワー。出入り自由で気軽に参加できる

「ジェンダー」(社会的・文化的性差)という言葉は、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)で初めて公式に使用されてから四半世紀を経て、一般的になった。紆余曲折うよきょくせつを経ながらも、「男性は仕事、女性は家事」といった決めつけが過去のものとなった今、いまだに残る課題について考えようと熱心に学ぶ若者たちもいる。

ジェンダーについて意見交換

「ジェンダーの問題って、女性だけのことだと思われがちですよね」

2月上旬、立教大の一室で、学生らがコーヒーを片手に、日々の生活の中で感じる固定観念にとらわれた男女像などについて意見を交わしていた。

北京会議から3年後の98年に設立された同大学のジェンダーフォーラムは、公開講演会の開催や全学共通科目の開講など、様々な取り組みを通じた社会教育を目指す組織。毎月恒例の「コーヒーアワー」もその一つで、ジェンダーやセクシュアリティー(性的指向)について、学生らが自由に意見を交換できる。この日姿を見せた1年生の女子学生(19)は、「女らしさや男らしさって何だろうと、もやもやした思いを打ち明けられた」と笑みを浮かべる。

一橋大でも、2007年度に始まった「ジェンダー教育プログラム」が学生の注目を集める。今年度新設された全学生向けの講義は、40人ほどの想定に対し約480人が受講。担当教授の太田美幸さんは「リポートの採点が大変でした」と苦笑する。

同大学の学生たちは昨年、ジェンダー研究のゼミで学んだ成果をまとめた「ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた」(明石書店)を出版。「女子校の意義ってなに?」や「性暴力の被害者って女性だけだよね?」など、学生たちが実際に問いかけられてきた疑問に、分かりやすく回答している。

自分やゼミの仲間が手がけた本を広げる一橋大の学生たち

執筆を担当した学生たちは「ジェンダーの問題は身近にあると知ってほしかった」と話す。指導にあたった教授の佐藤文香さんは「10年前では本を出すことが難しかったのでは」と時代の変化を感じている。

日本の政策に遅れ

北京会議で採択された「北京行動綱領」は、女性の人権への配慮などを重点目標として盛り込んだ。会議に政府代表団の一員として参加した弁護士の林陽子さんは「世界的にジェンダー平等という流れが生まれ、例えば、女性が抱える困難の解決に向けた様々な政策が打ち出されるようになった」と評価する。この25年で、生物学的な視点ではなく、社会的・文化的に作られた性差がもたらす問題は何かを考える社会に変化してきたという。

一方で、ジェンダー平等への取り組みは、「行き過ぎた平等」といった反発も受けた。性暴力を巡る問題に加え「#MeToo」運動が波紋を呼ぶなど、解決されていない課題は多い。林さんは「日本のジェンダー平等に向けた政策は主要国の中でも最低レベル。性差への固定観念はいまだ根強い」と手厳しい。

ジェンダーについて学ぶことへの批判的な声は今もあるという。太田さんは「学生たちが学んだことを社会の中に広めてくれることに期待したい。どうすれば理解が広がるか、考えてみることも大切」と話す。

(読売新聞生活部)