日本の学校にPTAは本当に必要? 海外では

サンドラがみる女の生き方

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全国の学校では毎年2月ごろから、翌年度のPTAの役員決めが本格的に始まります。このことで頭を抱えている親御さんも多いのではないでしょうか。読売新聞オンラインでも「負担が大きいPTA 「一部外注にしては?」と提案の声」という記事で問題提起がされ、大手小町でも「PTA役員、押し付け合い…「仕事」「介護」理由でも拒否できず」
という記事が掲載されるなど、PTAは何かと話題になりやすいトピックです。今回は、海外のPTAにもスポットを当てながら、この問題について考えたいと思います。

任意参加であるはずが……

PTAとは「Parent-Teacher Association」の略称で、保護者と教員で組織する社会教育団体です。運動会などの学校行事を手伝ったり、保護者会の運営をしたり、学校の敷地の清掃や草刈りをしたり、子供の安全を守るために登下校中に通学路をパトロールしたりと、日本のPTA活動はかなり忙しいです。ただ、活動時間を作り出せる親ばかりではないため、役員決めの季節になると、悩む親も多いようです。というのも、
PTAへの参加は本来「任意」のはずなのに、実際には任意とは名ばかりで、何らかの形で参加を求められることも少なくないからです。発言小町にも、小学生の子供を持つ女性から「発達障害とうつ病で障害者手帳2級を所持しているけれど、PTA役員を断るには障害のことを皆に報告するしか方法がないのか?」という相談が寄せられていました。このように、PTAは多くの場合、「全員が参加すべき」という前提で動いているため、事情があって参加できないと、「自分のプライバシーにまつわることを公表しなくてはいけないのか……」と悩む人も出てくるのです。

アメリカの親が企画する「子供のお楽しみ会」

日本のPTAには「全員の親が参加してこそ平等が保たれる」という前提があるようです。では、海外ではどうなのでしょうか。

アメリカの場合、地域によって違いがあるようですが、日本でいうPTAは「PTO」という名称で、やはり「親たちが活動」をしているのだとか。ただ、子供の登下校時の安全については、基本的に個人の責任だと見なされているため、親が交代で通学路をパトロールするというような活動はなく、その他の活動についても、日本のように忙しいことはあまりないといいます。

日本のPTAでいうところの「役員」は、アメリカでは「クラス・ペアレント」と呼ばれ、主な役割は、年に4回ほどある、子供たちのための「お楽しみ会」の企画です。このお楽しみ会とは、子供たちが集まって歌を歌ったり、ゲームをしたり、おやつを食べたりといった会になることもあれば、子供たちがテーマを考えてコスプレをするお楽しみ会なんていうのもあるそうです。

ドイツの場合、参加する親はごく少人数

筆者の母国のドイツでPTAに該当するものに「Elternbeirat(親による会議)」があります。学校での子供の教育について親が提案をしたり、校長との面談の場を設けたりと、教育のある種の改善を図る場となっているところは、日本のPTAと同じです。

拙著「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)にも書きましたが、ドイツの場合は、日本と同様に役員を選ぶものの、本当の意味で「あくまでもやりたい親」だけが集まります。例えば、筆者の出身地バイエルン州にある公立学校のElternbeiratは10人程度の親で回しているところが多いです。「参加している親」の数がそもそも少ないのです。日本では以前、PTAを抜けた人の子供が卒業式で、PTA予算で購入した記念品のコサージュをもらえなかったことが問題になりましたが、ドイツでは、このような
「Elternbeiratに参加しない親の子供が不利益を被る」ことはありません。

もちろん、Elternbeiratも人間が集まるところなので、気の強い親が主導権を握るなどして、なんとなく上下関係のようなものができてしまうという話は聞きます。人間が集まると、どこでもそういうことは避けられないのかもしれません。そうは言っても、
Elternbeiratの場合は「参加しなくてもいい」のですから、日本のPTAと比べるとずいぶん気楽なものです。

日本のPTAは女性の負担が大きい?

Parent-Teacher Associationの名前の通り、本来は両親のどちらが参加してもいいPTAですが、特別な事情がない限り、日本では暗黙の了解で、「母親が参加すること」が求められていたりします。しかし、PTA関連の会合は平日の昼間が多いため、働く女性が会合に出るには、有給休暇を取らざるを得ません。筆者の知り合いの女性は、「PTAの役員だった年は、有休をほぼすべてPTAに使ってしまったので、その年は家族旅行にも行けなかった」と嘆いていました。

本来は、「子供のため」であるはずのPTA活動が原因で、「家族との時間が取れない」「家族旅行ができない」という本末転倒の事態になることもあるようなのです。そういったことを考えると、PTAをなくす必要はないけれど、「違うやり方にシフトする時」が来ているのではないでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)。