木桶サミットで知る発酵文化の魅力とは

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しょうゆや日本酒を仕込むのに使われる木桶きおけへの関心が高まっています。伝統的な製法の魅力を伝え、技術を継承しようと、醸造元などが様々な取り組みを行っています。1月に香川県小豆島町で初めて開かれた「木桶による発酵文化サミットin小豆島」は、若い女性の姿も目立ち、まるで「フェス」のような盛り上がりでした。

作業の手伝い、祭りのような盛り上がり

小豆島の南東、草壁港からほど近いヤマロク醤油しょうゆで、サミットは開かれました。国内外から業界関係者や消費者らが集まり、木桶を組み立てる作業を手伝いました。

桶の外側の板は、木製のくぎでつなぎ合わせていきます。板の側面に参加者が思い思いに落書きをしていきます。100年後に木桶が寿命を全うしたとき、解体したら未来の人たちが自分の落書きを見るかもしれないのです。まるでタイムカプセルです。

側面の板をつなぎ合わせたら、たがをはめます。そのたがも、参加者が一丸となって、かけ声をかけながら編んでいきました。記者も参加しましたが、二の腕が痛くてなかなか大変です。「声がちっちゃいぞ!」などと、地元の大工、坂口直人さんが大きなかけ声で場を盛り上げます。神奈川県から来た鈴木遙渚さん(26)は、「しょうゆやみそは自分でも使うので興味があり、木桶仕込みにも関心があって各地の蔵を訪ねています。ここで職人さんと一緒に作業ができて、お祭りみたいで楽しい」と声を弾ませていました。

木桶職人復活プロジェクト

木桶仕込みをするメーカーは激減し、しょうゆの場合、流通量の1%以下だといいます。それに伴い、醸造用の木桶の製造も減り続け、「このままでは日本の伝統文化が消滅してしまう」と危機感を抱いたヤマロク醤油の5代目、山本康夫さんが、2012年に「木桶職人復活プロジェクト」をスタートさせました。

毎年1月に、業界関係者らが集まって、桶の製造技術を磨いています。完成した新桶は、同社や各地の醸造メーカーに送られます。福島県郡山市の仁井田本家も、ここで作った新桶で酒造りを始めたそうです。女将おかみの仁井田真樹さんは「将来は自社の山林の杉で桶を作ることができたら」と話していました。

サミットで木桶の魅力語る

サミットでは、醸造元や料理人らが2日間にわたり、味わいや技術の継承のあり方などについて意見を交わしました。

発酵やデザインに詳しい「発酵デザイナー」の小倉ヒラクさんは、「木桶造りは、その土地や蔵の個性を表す。一定の基準を満たした平均的においしいものが普及し、食文化が豊かになった。これからは個性が重視される時代になる」と指摘していました。

海外からの参加者もおり、スコットランドの大学から研究の一環で訪れたドゥブリエ・アリスさんは、「なくなりそうな伝統技術をどのように次の世代に伝えていくのかを研究しています。木桶のプロジェクトも調べているのですが、小豆島に全国各地から、しかも若い人も来ていて驚きました」と話していました。

木桶職人復活プロジェクトを推進するヤマロク醤油の山本康夫さん

山本さんは、「醸造メーカーが連携して市場を1%から2%に増やすことで、木桶の需要を生み、次の世代に伝統的な日本の発酵食の文化を残したい」と話します。「アメリカでは木桶で熟成させたしょうゆが注目されています。クラフトビールのように、小規模生産者による“クラフトしょうゆ”の時代がくると思います」

プロジェクトでは、4月4日に東京の渋谷ヒカリエでもサミットを行う予定です。共催するD&DEPARTMENT PROJECTの相馬夕輝さんは、「小豆島では蔵元たちが集っているので、東京で、食べる側の人たちに木桶仕込みの魅力を伝えたい」と、参加を呼びかけています。詳細は、こちら

東京聖栄大学健康栄養学部准教授の福留奈美さんは、「朝鮮半島・中国の焼き物、かめの文化に対し、日本には木工技術に支えられた木桶文化があります。日本の独自性、地域性を示すものとして、木桶による発酵文化を存続させることは、非常に意義があります。消費者にも日本独自の食やその価値を知ってもらいたいですね」と話しています。

(メディア局編集部 小坂佳子)

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