すき間時間に仕事と学び、自営型テレワークの魅力とは

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昨年から在宅ワークを始めた飯田由香里さん。パソコンを携帯し、打ち合わせに出かけることも

育児や介護などで仕事から離れた女性にとって、自宅でできる在宅ワーク(自営型テレワーク)は魅力ある働き方です。自宅のパソコンを使って、多様な仕事に挑戦する人も少なくありません。ただ、初心者は戸惑うこともありそうです。経験者の話から、在宅ワークを始めるときに気をつけたいことをまとめました。

できそうな仕事に次々応募

埼玉県朝霞市の主婦、飯田由香里さん(38)は、名前の上に「データ入力のお仕事募集」と書かれた名刺を持ち歩いています。昨年6月、埼玉県女性キャリアセンターが主催した「在宅ワークを始めたい方のための初心者向け実務講座・初級コース」に参加したことがきっかけで、1日3~4時間程度、小中高校生の模試の採点やデータ入力などの仕事をするようになりました。

飯田さんは、大学卒業後に1年余り、大手生命保険のセールスレディーをしていました。その後、大手広告会社に転職し、人事総務部門で働きましたが、長女の出産を機に仕事をやめ、約10年間のブランクがあります。

仕事の打ち合わせをする飯田由香里さん(埼玉県朝霞市内で)

「子供が小学校から帰宅したときには家にいたいし、自分の趣味に費やす時間も大切。『仕事を再開するなら在宅ワークがいい』と主人と話して。ただ、詐欺などに遭うこともあると聞いていたので、とにかくリアルに顔の見える人たちの話を聞いてから始めたかったんです」と、講座に参加した動機を振り返ります。

講師から「次の講座の時までに、何かポチっと応募してみましょう」と宿題が出たのがきっかけで、インターネット上で在宅ワーカー向けに仕事を紹介している複数のクラウドソーシングサイトに登録し、「パンプスのモニター」に恐る恐る応募してみました。そのときは仕事を得られず、「応募したからって、すべて通るわけではないんだと気づきまして。それからは自分にできそうな仕事に次々と応募するようになりました」。

データ入力の仕事も、当初は労働単価をあまり気にせず、あるサイトから申し込んだそうです。レシートの記載内容を文字データとして一人で入力する仕事した時には、2万字以上を打ち込むのに丸1日かかったにもかかわらず、収入は数百円。「これじゃあ、ブラックすぎると思って、次からは単価を気にするようになりました」。

「キャリア・マム」で探した模試の採点の仕事は、パソコン上で採点していきます。採点作業は単価が決まっていて、こなした量に応じて支払われます。受験生が「わかりません」と正直に書いている答案を見ることもあり、「結構、楽しいです」と飯田さんは話します。

先月には、やはり「キャリア・マム」で、ほかの在宅ワーカーが仕上げたデータを検品する作業にも従事しました。「画像を加工する作業なんですが、どこまで加工すればいいのか、ワーカーさんによってとらえ方が違います。また、データが仕様と違うことに気づいた時に、『このくらいなら、私が直せばいいや』と思って直してしまうと、このデータを仕上げた人は同じ誤りを繰り返してしまいます。どこにお住まいの方か、顔も知らない方に、『こういう修正が必要になりました。再納品をお願いします』と連絡するのも仕事でした。これまで知らなかった世界だけに、いろいろと学びがあります」と飯田さん。

飯田さんが登録している「キャリア・マム」では、チーム型アウトソーシングという形態をとっています。プロジェクトの中には、何人もの在宅ワーカーがいて、リーダーとして検品作業を行ったり、納期や品質を管理するマネージャーもいます。リーダー役を担う人には、スカイプなどを使ってウェブ上であらかじめ研修を行うようにしています。同社の制作部の佐手みどりさんは、「在宅ワーカーの中には介護や育児といった事情を抱えている人が少なくありません。私たちは、約3000人の在宅ワーカーさんの中に、リーダー、マネージャーなどを置き、組織化することで、仕事に穴を開けずに品質が高い成果物を納品できるようにしています」と話します。

飯田さんの場合、仕事が不定期なこともあって、現在の収入は月数万円。まだ夫の扶養の範囲から抜ける予定はありませんが、だんだんと将来のステップアップも考えるようになってきたと言います。

個人事業主として企業に対応

埼玉県女性キャリアセンターで2月に開かれた在宅ワーカー向けセミナー。集まったのはほとんどが30代女性。講師の堤香苗さんは「子育て経験は必ずプラスに働きます」と呼びかけました。

在宅でできる仕事としては、ウェブサイト作成や、設計・製図、データ入力、テープ起こし、翻訳など様々あり、ネット上で仕事を募集・紹介するサービス仲介業者も増えています。

しかし、そうした業者の中には、高額の教材費や手数料を要求するなど、悪質な例もあるので注意が必要です。

また、フリーランスで仕事の発注先とやりとりをするので、雇用者ではなく、個人事業主としての立場になります。仕事の発注先企業に対しては、自分から納期や報酬額、支払い時期などを確認・交渉し、業務委託契約などを結ぶことになります。そして、報酬の未払いや遅延などのトラブルが発生した場合も、事業主として自分で対応しなくてはなりません。

厚生労働省では、こうした在宅ワーカーのことを「自営型テレワーカー」と呼び、総合支援サイト「ホームワーカーズウェブ」(http://homeworkers.mhlw.go.jp/)を開設しています。これから在宅ワーク(自営型テレワーク)を始めようという人向けに、仕事の流れ、キャリアデザイン、トラブル対策など、必要な基礎知識をまとめたガイドブックも公開しています。

写真はイメージです

埼玉県、滋賀県など自治体の開催する在宅ワーカー向け講習会で講師を務める「キャリア・マム」社長の堤香苗さんは、「子育てや介護などで、一つの会社に勤め続けることが難しいのが女性たちの現実。在宅ワークは多様な働き方を実現する一つの手段です。在宅ワークに興味を持ったら、自治体の開催する講習会に参加したり、厚労省のサイトでどんなことに注意を呼び掛けているのかを見たりして、周到に準備するに越したことはありません。もちろん、始めるにあたっては、家族への説得も大切です」とアドバイスしています。

再就職して常勤したり、パートタイムで働いたりと、女性の働き方はさまざま。その中で、なぜ在宅ワークを選ぶのか。そのメリット、デメリットも考えておきたいものです。(読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

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