夫の転勤、ついていきたくない時にすべきこと

News&Column

サラリーマンの多くが避けて通れない「転勤」。家族がいる場合には、夫が単身赴任をするのか、妻や子供が一緒についていくのか、選択を迫られます。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、「転勤についていきたくない」という女性からの投稿が寄せられました。最近は共働き家庭が増えて、妻のキャリアの問題も浮かび上がっています。家庭の環境が大きく変わるこの問題にどう対処すべきか、専門家に取材しました。

生まれも育ちも東京、夫の地方転勤に耐えられない

東京で生まれ育ち、現在3歳の子供がいるトピ主の「桃栗三年」さん。夫が東京から遠い地方に転勤し、少なくとも数年、もしくはずっとそこで働くことになったそうです。「地方暮らしは耐えられそうもない」と考えたトピ主さんは、夫に単身赴任をしてもらい、自分は実家に戻ることを提案したところ、夫に複雑な顔をされてしまいました。そこで、発言小町に「なんとか単身赴任してもらえる方法はないでしょうか?」と尋ねました。

これに対して、「給料だけもらって夫に単身赴任させるなんて、夫をATM 扱いしている」(「バビロン」さん)、「自分のことしか考えていない」(「タタン」さん)などと、トピ主さんに厳しいコメントが多く寄せられ、「子供が小さく、専業主婦なら、夫についていくべきだ」といった意見も目立ちました。

一方で、地方で暮らしたくないというトピ主さんに同情する声もありました。同じく東京生まれ、東京育ちの「sunday」さんは、「地方で暮らし、車を運転する生活はどう頑張っても無理。ストレスで夫婦間に亀裂が入るのが目に見えています」とコメントしました。「転勤妻」さんは「慣れない土地、子供達の友達関係、教育問題で、うつになりました。自分の仕事をやめてキャリアも台無し」と、後悔した体験を語っています。

夫も行きたいわけじゃない

転勤する夫についていくのか否か、夫婦で意見が異なる場合、どう話し合えばいいのでしょうか。数多くの夫婦のカウンセリングに携わってきた「ワイズフェアリー」代表・玉井洋子さんに話を聞きました。

「今回のケースのように、『知らない土地に住むのが嫌だ、引っ越ししたくない』という妻の言い分もわかりますが、夫も好んで行きたいわけじゃないということをまず念頭においてください。話し合う時は、『ついてくるべき』『ついていきたくない』という感情を押し付けるのではなく、まずは相手の気持ちを否定せずに聞いてあげてください」と玉井さんはアドバイスします。夫側も、「出世のため」「人が足りない」などと、転勤の理由と自身の思いをきちんと伝えることが大切だそう。その上で、玉井さんは「二人がどんな家族を築いていきたいのか、どう生きていきたいのかをじっくり話し合って結論を出してください」と強調します。

転勤でうつや適応障害になることも・・・・・・

転勤先についていくことになった場合、妻は、知り合いのいない土地で孤独を感じます。人によってはストレスを抱え、うつや適応障害になることもあります。「夫は慣れない環境にいる妻を理解し、フォローするように努めてください」と玉井さん。そのうえで、「妻もついていったことをマイナスにとらえず、休日にドライブをするなど転勤先の環境を『みんなで楽しもう』と気持ちを切り替えていくといいですよ」と言います。

手作り料理を冷凍して夫の元へ宅配

子供の通う学校を変えたくないといった理由で、ついていかないケースもあります。その場合は、多少の出費には目をつむり、頻繁に転勤先に遊びに行ったり、テレビ電話を使ったりと、家族でコミュニケーションを取る方法をよく話し合っておくといいそう。

ある家庭では、妻が手作り料理を冷凍して、単身赴任中の夫に宅配便で送っていました。夫は健康的な食事が取れる上、家族と同じ食事ができたと喜んだそうです。玉井さんは「どちらかの希望が通れば、どちらかは我慢を強いられるかもしれませんが、いろんな工夫で乗り越えることができます」と強調します。転勤の可能性があるなら、内示が出てから慌てないためにも、日ごろから家族で話しておくといいそうです。

共働きの場合は?

今回は専業主婦からの投稿でしたが、共働きの場合は、夫についていくために妻が仕事をやめたり、夫が単身赴任をして妻がワンオペ育児になったりと、大変な要素が増えます。

共働き家庭の転勤問題についてはどう考えるべきか、企業の人材戦略に詳しいリクルートワークス研究所の中村天江主任研究員に聞きました。

転勤に対する企業の意識変わる

中村さんによると、人材不足や優秀な人材の確保のため、社員の転勤に対する企業の意識は変わりつつあるといいます。赴任地や赴任時期を希望できるようにしたり、配偶者の転勤のために退職をしても復職できる再雇用制度を採り入れたりしている企業が増えているそうです。

企業間で協力する例も出ています。全国の信用金庫で作る「全国信用金庫協会」では2015年に、結婚や配偶者の転勤、介護など、やむを得ない理由による転居で退職する人に対し、転居先の信用金庫への再就職を支援する制度「しんきん再就職ネットワーク」を導入しました。全国47都道府県の256の信用金庫が参加しています(1月末時点)。

こうした取り組みは鉄道会社にも広がっています。東急や阪急電鉄など大手鉄道15社は、配偶者の転勤や介護などで転居せざるを得なくなり、働くのが難しくなった場合、転居先にある鉄道会社に転籍などができる仕組み「民鉄キャリアトレイン」を取り入れています。利用希望者がいた場合は、送り出す企業と受け入れ側の企業が、それぞれの事情に合わせて処遇を検討します。出向や転籍をした後に元の会社に復帰する場合もあるそうです。

東急は「各社は、鉄道事業や不動産事業など『地域活性化』のための共通の事業モデルを持っているので、各社で培った経験が同業他社でも生かせ、相互で人材活用ができると考えた」と言います。18年6月から始まり、昨年10月時点で2件の実績がありました。

個別対応するケースも……

「企業にとって、新たに面接をして人を雇うのは、とてもコストがかかります。どんな人かが分かっていて、経験もスキルもある人を雇いたいという機運が高まっています」とリクルートワークス研究所の中村さんは分析します。このような制度がなくても、転勤する配偶者についていく社員に対し、テレワークや支社への異動を認めるなど、個別対応しているケースもあるそう。「配偶者が転勤になったから仕事をやめなきゃいけないとあきらめずに、まずは会社に相談してみることをお勧めします」と中村さん。

家族の幸せの形はそれぞれ。ついていくのか、いかないのか、家族のみんなが納得できる結果になるようにとことん話し合い、解決策を探し出すことが大切なようです。

(取材:読売新聞メディア局編集部 山口千尋)

【紹介したトピ】夫の転勤についていきたくない
【あわせて読みたい】
別れる前提で夫と暮らす…小島慶子が「エア離婚」を選んだ理由
離婚した夫婦の8割がやらなかったこと
世界が不思議に思う「離婚しない」ニッポンの夫婦