川崎麻世、カイヤ離婚でわかった「国際結婚」女性の立ち位置

サンドラがみる女の生き方

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歌手の川崎麻世さんとタレントのカイヤさんの離婚訴訟で、東京家裁が先日、離婚を認める判決を言い渡したことがニュースになりました。今回の訴訟の過程では、双方がDV(配偶者からの暴力)を主張していたこと、カイヤさんが麻世さんに請求していた2000万円の慰謝料が認められなかったことなどが注目されました。今回は、この二人の離婚騒動を「国際結婚」の観点から見てみたいと思います。

夫の国に住むのは不利?

カイヤさんはかつて、バラエティー番組での「鬼嫁」キャラぶりが話題になりましたが、二人の長期にわたる離婚騒動を見ていて、筆者はなんだかカイヤさんがかわいそうになってしまいました。というのも、芸能人だから仕方がないのかもしれませんが、メディアは主にこの二人のスキャンダラスな面について報道しており、「国際結婚」という観点からの報道があまり見られなかったからです。国際結婚家庭に生まれ、周りにも国際結婚カップルが多い筆者としては、「結婚とともに外国に住むことになったカイヤさんの立場」が気になるのです。

違う国の人同士が結婚をすると、男性側の仕事に考慮をした結果、「妻が母国を離れ、夫の国に住む」ケースが目立ちます。外国に住むことで、「母国にいたらできなかったような新鮮な体験」をしたり、子供がいる場合には「子供を通して、その国のいろんな面を発見」したりと、海外生活をしているからこそ得られるものは、たくさんあります。

ただ、カップルにもよりますが、「外国に住むことになった妻」に不利な部分が多いことも否めません。というのも、夫は自分の国に住み続けるわけですから、仕事も人間関係もそのまま続けられます。言葉に困ることもなければ、多くの場合、両親やきょうだいも近くにいるため、家族と離れて寂しくなることもありません。

ところが妻は、母国を離れたため、友達や家族は近くにおらず、場合によっては言葉も新たに習得しなくてはなりません。

こういった妻の不利な点を理解し、夫が「妻と、自分の国の人たち」との「橋渡し役」を買って出る場合は、妻も心強いです。しかし、夢のないことを書くようですが、夫のサポートは「夫婦仲がうまくいっている場合」に限られてきます。夫婦仲がうまくいかなくなると、夫からのサポートが得られなくなるばかりか、妻が夫の国の事情をあまり分かっていないのをいいことに、妻を振り回してしまう夫がいることも見過ごせません。

「鬼嫁キャラ」の発端となった「あの会見」

川崎麻世さんとカイヤさんとの間には、どのようなすれ違いがあったのか。それを知るのは当人のみであることは前提として、1993年の「あの会見」を覚えている人も少なくないのではないでしょうか。川崎麻世さんの不倫が発覚し、その後に開いた記者会見で、カイヤさんは会見場に立って、麻世さんの様子をずっと見続けていました。当時、その姿が一部で「怖い」と報道され、それがカイヤさんの後の「鬼嫁キャラ」の発端となってしまいました。その後のカイヤさん本人のインタビュー記事を読むと、「会見に同席してほしい」と頼まれ、真面目な気持ちで会見する夫に立ち会ったら、それがいつの間にか日本のマスコミに「仁王立ち」「怖い奥さん」ということにされてしまっていたのだそうです。当時は今と違い、日本語もそれほど堪能ではなかったため、全体の状況がよく把握できないまま、周囲からも誤解され、気がつけば「怖い外国人の奥さん」というキャラクターに設定されてしまった。そういった部分は否めません。

芸能人に限らず、一般人の家庭でも、日本語が分からない外国人の妻がいろんな場所に駆り出され、気が付けば理不尽な目に遭っていた、ということは少なくありません。

筆者には、父親が日本企業で働く日本人のサラリーマンで、母親が欧州人の友達がいます。その友達の母親は「今はこの人(夫)、定年退職したけど、昔は夫の職場の飲み会や宴会によく呼び出されて、行くたびごとに、酔っぱらった夫の同僚の集団にセクハラされたのよ。今考えると、よく付き合ったわ」と語っていました。当時、日本語もあまりよく分からず、日本の習慣も分からなかった彼女は、「何が日本でスタンダードなのか」が全く分からず、かなり戸惑ったといいます。「しなくていい経験もした」と彼女はしみじみと語っていました。

もしも日本人の妻だったら、「飲み会のノリ」はある程度わかっているので、「酔っぱらいが多い席に出かけて行ってもロクなことはないだろう」と考えて、自衛しそうなものです。でも、外国人の妻の場合、日本人の夫に「ちょっと出てこいよ」なんて言われたら、「それが日本の習慣なのかな」なんて思ってしまうわけです。もし彼女がそこで、夫の仕事仲間の前で怒ろうものなら、「あそこの奥さんは外国人で怖い」なんていう展開になってしまうのも、一昔前は珍しくありませんでした。そのため筆者は、カイヤさんの騒動を見て、複雑な気持ちになったのでした。

外国に住む日本人の妻の場合

国際結婚カップルの中には、外国人男性との結婚後に、夫と外国に住む日本人女性もたくさんいます。

元夫がドイツ人で、今もドイツに住み続けているある日本人女性は「結婚後、最初の数年は、『夫の目を通してのドイツ』しか見えていなかった気がします」と語りました。最初の数年は、ドイツでの交友関係も全て「夫を通したもの」(夫の友達や夫の仕事関係者など)だったため、そこで抱いた印象をベースに、「ドイツって、こういう国なんだ」と、彼女なりの「ドイツ像」が出来上がったのだといいます。でもその後、自らドイツで働くようになり、自分で人間関係を開拓するようになってからは、もっと「幅広いドイツ」が見えてきたのだとか。

一概には言えませんが、国際結婚の場合、「僕の国ではこのようにやるのだ」と言うと、パートナーはそれを信じてしまいがちです。本当はそれが「その国のやり方」ではなく、単に「夫特有のやり方」であっても、何せその国の事情がよく分からないので、妻はナイーブに信じてしまいやすいのだと思います。

前述のドイツ在住の女性は、離婚後も現地で働き、ドイツの在留資格を得ています。しかし、もし現地の言葉がりゅうちょうではなく、専業主婦だった場合、離婚後の在留資格のことを考え、簡単に離婚に踏み切れない女性も多いようです。そんなこんなで、世間は川崎麻世さんとカイヤさんの離婚騒動について、スキャンダラスな芸能ネタとして扱っていますが、筆者は「離婚後のカイヤさんの日本での在留資格は大丈夫なのかしら。手続きとかきっといろいろ大変だろうな……」などと、知り合いでもないのに心配してしまいました。

日本に限らないことですが、国際結婚のシビアな部分について、世間でスポットが当たることはあまりありません。しかし、日本でも外国人が増え、国際結婚が珍しくなくなっている今、「女の生き方」を考えるに当たっては、女性にとってシビアな点を考えてみることも大事なのではないでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)など。2月19日に「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)が発売予定。