「シンデレラ体重」は大丈夫!? やせすぎを防ぐためにすべきこと

News&Column

写真はイメージです

多くの若い女性が持つ「やせ願望」。日本の20代女性の5人に1人は「やせすぎ」で、妊娠・出産を通じて、その悪影響が子供にも及ぶのではと心配する声もありますが、なかなか当事者にはその声が届かないようです。読売新聞の掲示板「発言小町」には、「彼氏からやせろと言われる」という女性からの投稿がありました。美しく見えるための理想体重を指す「シンデレラ体重」という言葉も生まれた今、女性たちの「やせすぎ」を食い止めるにはどんな対策が考えられるのか、専門家に聞きました。

体重41キロに減量、彼氏がさらにダイエット要求

トピ主「ゆゆゆゆこ」さんは、身長156センチの小柄な女性。1年前は、体重が46キロでしたが、彼氏から冗談で「細ければ細いほどいい」と言われたこともあり、ダイエットをした結果、今では41キロまで落としました。それなのに、彼氏は「もっと体を引き締めたら」などと、さらなるダイエットを要求してくるそうです。

もやもやした気持ちのまま、「男の人は自分の理想のようになってほしいと思うのが普通なのでしょうか? 私はその理想に合わせるべきなのでしょうか? アドバイスよろしくお願いします」と発言小町で呼びかけました。

この投稿に20件を超える反響がありました。そのほとんどが、「あなたはやせすぎです。そんな彼とは別れましょう」という意見です。

「自分で41キロのからだを見てどう思いますか? モデルや芸能人とは違うのですよ。健康を害するのでもうダイエットをやめてください。そして彼とも別れましょう」(「ピーナッツ」さん)。

「私も同じBMI(体格指数)なのでわかります(私は食べてもどうしても太れない体質です)。『ドクターストップがかかって、太れと言われた。これ以上やせたら、メンタルクリニックに通うことになる』と彼に言ってみてください」(「ふうこ」さん)。

「まだやせろってのは体重30キロ台になれっつうことですか? 私の娘が体重30キロ台になったら急いで病院に連れていきますし、それが彼氏の指示だと分かったら旦那連れて彼氏に談判しに乗り込みますね」(「メメシス」さん)。

適正体重は無視!? やせすぎでも本人には届かない理由

肥満や低体重の診断に使われるBMIは、身長156センチ、体重41キロのトピ主さんの場合、16.85。適正体重(BMI=22)は53.54キロなのに、10キロ以上も少なく、BMIが18.5未満の「やせすぎ」に分類されます。

このため、病的な「やせ」を心配して、「これ以上やせないで」「自分を大切にしてほしい」といったアドバイスを書いた人が多いわけです。

写真はイメージです

厚生労働省の国民健康・栄養調査(2018年)では、BMIが18.5未満の「やせすぎ」の人が占める割合は、20歳代女性で19.8%でした。一番多かった2010年調査の29.0%よりは低い数値になっていますが、この10年間、やせすぎの人の占める割合は、女性全体で10%前後、男性全体では3~4%しかないのに比べ、20歳代女性が20%前後と顕著に高い傾向が続いています。

若い女性のやせ傾向、低体重児の出産や早産のリスク高く

文化人類学の立場から、日本の女性が直面する体の問題を研究している国際医療福祉大学大学院准教授の磯野真穂さんに話を聞きました。

「日本の若い女性のやせ傾向は、諸外国と比較しても行き過ぎです。栄養が十分でないために低体重児の出産や、早産のリスクを高めることなどが心配されるほど、深刻です」と磯野さんは話します。

「やせたい気持ちとうまく付き合う方法をみんなで考えることができれば」と磯野真穂さん(東京・港区の国際医療福祉大学で)

ただ、磯野さんは、当事者である若い女性たちには、そうした心配の声がなかなか届きにくい実態があると指摘します。「この投稿にあるように、お付き合いする異性から『もっと細い、引き締まった体になってほしい』と言われるケースもあるでしょう。また、親がダイエットに日々勤しんでおり、その親からやせ方を伝えられるケースもあります。思春期は、だんだんと大人の体になって、成熟していくのが当たり前なのに、日本の少なくない数の女の子たちがBMI=18.0の『シンデレラ体重』にあこがれてしまいます。やせ願望は他者との比較の中で生じるので、周りがやせれば『やせ』の基準はどんどん厳しくなります。その結果が、今の若い女性のやせすぎなのだと思います」と磯野さん。

「シンデレラ体重」へのあこがれはどこから?

磯野さんは、4年前から全国各地で「からだのシューレ」と題するワークショップを開いてきました。体と食べ物、社会の関係を見つめ直すのが目的で、体とマーケット、S NSと承認欲求など様々なテーマを扱ってきました。これまでに25回開かれ、延べ600人以上が参加しました。

「女性のやせすぎ問題は、個人に帰しても解決しません。ダイエットの関連産業は、『美容体重』『モデル体重』など、手を変え品を変え、商品を売り込もうと待ち構えているのですから、こうした社会の構造に目を向けないと」と磯野さん。

ここ数年、グッチやルイ・ヴィトンなどの有名ファッションブランドの運営会社が、相次いで「やせすぎたモデルを起用しない」とする声明を出すなど、欧米各国では、やせすぎモデルを規制する取り組みが進んでいます。でも、日本ではそのような取り組みは行われていません。

「ファッションが若い女性に与える影響を考えると、やせすぎモデルの規制は日本でも必要だと思います。小中高向けのダイエット特集をやめるといった取り組みも必要なのではないでしょうか。手を尽くして、社会の側が変わらないといけないと思います」と磯野さんは話します。

多くの女性たちが周囲の不用意な一言で、無理なダイエットに走ってしまう現実。社会全体でもっと深刻に受け止める必要がありそうです。(読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

【紹介したトピ】
痩せろといわれる

【あわせて読みたい】
女性の飲酒の適量はどのくらい? 危険度をチェック
美人になるには、どこから始めればいいか
CAから個人向けスタイリストに…転身する勇気が持てたワケ

磯野真穂(いその・まほ)
文化人類学者。早稲田大学文化構想学部助教を経て、国際医療福祉大学大学院准教授。2016年からは、一般の人も参加できるワークショップ「からだのシューレ」を開始。研究の関心は、体、食、医療、科学技術。著書に「なぜふつうに食べられないのか―拒食と過食の文化人類学」(春秋社)、「医療者が語る答えなき世界―『いのちの守り人』の人類学」(ちくま新書)、「ダイエット幻想−やせること、愛されること」(ちくまプリマー新書)、宮野 真生子さんとの共著で「急に具合が悪くなる」(晶文社)などがある。

「ダイエット幻想−やせること、愛されること」(ちくまプリマー新書)