「主人在宅ストレス症候群」は日本特有?海外では

サンドラがみる女の生き方

先日、知人から「日本特有の病気(症状)があるんだよ。『主人在宅ストレス症候群』と言うんだって」と教えてもらいました。確かに、発言小町にも「夫がいるとイライラしちゃう」だとか、「夫はただのストレス源」といったトピックがたっています。その昔、定年退職後に仕事も趣味も仲間もなく、妻に頼り切って離れようとしない男性をやゆした「ぬれ落ち葉」という言葉がはやったこともあります。ところで、この「主人在宅ストレス症候群」は果たして、日本特有の現象なのでしょうか。海外と比べながら考えてみたいと思います。

「夫はウザイもの」のコンセンサスがあるニッポン社会

以前、テレビで「残業を減らすこと」に関する街頭インタビューを見たことがあります。その中で、インタビュアーが「残業が減ることについて、どう思いますか?」と質問をしたところ、ある専業主婦は「残業が減って、夫に早く帰ってきてもらっても困る」と答えていました。

一瞬笑ってしまったのですが、よく考えてみると、「残業」というテーマの時に「仕事をする人」の視点からではなく、「夫婦関係」の観点から語っているところが日本特有だなと思いました。それにしても、「夫婦関係が良くないから、残業が減って夫に毎日定時に退社して家に帰ってきてもらっても困る」とテレビで暴露してしまうのは、ヨーロッパ人の感覚からすると、なかなか衝撃的です。

このようにニッポンのメディアでは「夫とはそもそも困った存在である」といった前提で「夫」なるものが語られることが多いのでした。意外かと思われるかもしれませんが、ドイツを含むヨーロッパのメディアでは、女性が「ウチの夫はウザイ」と語るのはあまり見られない現象です。

相手の「スペック」よりも「一緒にいて心地良いか」

昔のお見合いの名残なのか、日本では結婚というと、相手の「スペック」が重視されがちです。女性にとって、相手の男性の職業や年収などはやはり気になるポイントのようです。

ただ、紙に箇条書きにできるもの、つまり「職業、年収、家族構成、趣味」からは「一緒にいて居心地が良いか」という肝心なことは伝わってきません。しかし、結婚して最後まで添い遂げるとしたら長期間になるわけですから、「一緒にいて居心地良いか」は、一番大事なファクターなのではないでしょうか。逆にこのことがあまり重視されないと、結婚後に女性が「旦那がウザイ」と感じてしまうことにつながる気がします。

一緒に居て居心地よい基準とは?

「居心地の良さ」と書きましたが、前に友達が「家を探すのと、結婚相手を探すのって、とても似ているよ」と言っていたことがあります。「物件も結婚相手もタイミングが悪くて縁がない場合があるし、紙の上での条件が良くても、実際に相手と同じ場に身を置いてみて『何か違う』と思うこともある。そういったことが家探しと結婚相手探しではとても似ていると思う」とのことでした。確かに、「特定の男性と一緒にいて居心地良い」と感じることと、「この家にいると、なんだか落ち着く」と思う感覚にはある種の共通点があるような気がします。
筆者自身は、結婚は「魂と魂のつながり」だと思うことがあります。難しい話のようですが、要は相手とフィーリングや感覚が似ているということです。

以前列席したノルウェー人女性と日本人男性の結婚式で、お互いの子供時代の写真をスライドで見せていました。ノルウェー育ちの新婦は活発な女の子だったとわかる写真が多く、また新郎の写真も、木によじ登ってピースをするなど、活発な少年時代だったことをうかがわせるものが多くありました。育った国はまったく違うのに、そういう活発なところでフィーリングが合うんだろうなあ、と勝手に納得してしまいました。

もともとお似合いのカップルでしたが、子供時代の写真から醸し出していた雰囲気がなんだかとてもよく似ていたのです。それを受けて我が家のことを考えると、夫も筆者も子供時代からインドア派の生活をしていたため、木によじ登っている写真などは夫婦ともども「ない」のです。大人というか中年になった今も、二人ともインドア派なので、「そこが合うのかなあ」なんて勝手に思ってみたりしました。

夫の悪口を言うヨーロッパ女性が少ないのは、実は……

ところで、先ほど「ドイツを含むヨーロッパのメディアでは、女性が『ウチの夫はウザイ』と語るのはあまり見られない現象」と書きましたが、離婚の予定があって既に別居していたりすると当然、夫の悪口を言う女性は少なくありません。既に離婚した女性から元夫の悪口を聞くことはよくあるのです。ただ離婚の予定がない現役の夫婦の場合、女性があけっぴろげに「夫がウザイ」というのは、もしかしたら日本特有の現象かもしません。

そんなこんなで、ヨーロッパの夫婦の場合、やはり「一緒にいるときの居心地の良さ」や「フィーリング」がいつまでも重視されるため、夫がウザイと感じる時間が長くなったら、日本よりも早く離婚に踏み切る女性が多い(だから延々と夫の悪口を言う女性は日本と比べて少ない)というオチなのでした。なんだか夢のない話ですみません。

日本では、「結婚とは生活」とも言われます。長く結婚生活を続けながら、夫の悪口を言って「ガス抜き」をするニッポン流と、夫が嫌になったら決断を急ぐ「欧米流」のどちらが良いとは一概に言えず、これもまた「文化の違い」なのかもしれません。

【あわせて読みたい】
サンドラがみる女の生き方
日本の夫婦はなぜセックスレスなのに子供が欲しいのか
外国人女性が前髪を作らない理由

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/