胸を打つドームツアーやドキュメンタリーで、核心を語り出した嵐

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嵐のデビュー20周年記念ツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」が昨年12月25日、東京ドームで最終公演を迎えました。コンサート本編最後の挨拶では大野智さんが落涙するなど、メンバーの本音や覚悟が垣間見えました。胸襟を開く5人の姿は、先月から配信が始まったNetflixのドキュメンタリー番組でも話題になっています。核心を開示し始めた嵐。それは、嵐の活動休止前ラストイヤーとなる2020年のキーワードの一つになりそうです。

2018年11月に始まった同ツアーは札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5大ドームで計50公演を行い、総動員数は237万5000人にも上ります。デビュー時から嵐を見守ってきた記者も、12月25日のファイナル公演を取材しました。公演は、全国617スクリーンで計19万人がライブビューイング鑑賞。音楽ライブビューイングとしては史上最大規模で、国民的アイドルとして桁違いのスケールを見せつけました。

コンサートは「One Love」「Happiness」などシングル曲を中心に構成。歴代の衣装をまとったジャニーズJr.と共にパフォーマンスするコーナーもあり、20年を振り返るにふさわしい公演でした。

「命がけ」「ついてきて」ファンに訴え

同ツアーでは、本編の最後にメンバーが一人ずつ挨拶を述べます。ファイナル公演の挨拶は心に刻まれるような言葉がちりばめられ、各自の本心に迫るものでした。

大野さんは「(2019年)1月に(活動休止の)発表をした後のツアーは、正直不安でした。正直怖かったです」と吐露。涙で声を詰まらせながら、「でも、みんなが優しい目で僕らを見守ってくれていたから、僕は最後までやりきることができました。本当に感謝しています。4人の支えがなかったら、ここまで来られなかった。あの決断は本当に命がけだった」と続けました。大野さんの涙はもちろん、「命がけ」という言葉も胸を揺さぶりました。多くのレギュラー番組やCMを抱える超人気グループが歩みを止める。トップアイドルとしての責任感、ファンの落胆、周囲への影響などを考えると、活動休止は「命がけ」だったのも無理はありません。

櫻井翔さん、松本潤さんは「ついてきてほしい」とファンに熱く呼びかけました。

櫻井さんは「数々のチャレンジの速度についていけないと思う人がいるかもしれない。それでも俺は言う。『どうか、ついてきてほしい』。何度でも(そう)言い続けます。まだ見ぬ世界へ、みんなと行きたいと思っている」と述べました。

確かに、嵐は昨年1月に活動休止を公表して以降、精力的に新しいチャレンジに挑み、2019年をまさに嵐のように駆け抜けていきました。SNS解禁、初のデジタルシングル「Turning Up」のリリース、サブスクリプションサービスでの楽曲配信、天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」や新しい国立競技場のオープニングイベントでのパフォーマンス披露……。あまりの速さに、時についていけないと感じるファンもいるかもしれません。

こうした活動の真意を、松本さんも説明します。松本さんは「僕らが今チャレンジしていることは、みんなに一番に情報を伝えていきたい、一番近くに感じてもらいたいから。それだけは信じてほしい。みんなと見たい景色がまだまだあるんです。これからも嵐についてきてください」と言葉を紡ぎました。

櫻井さん、松本さんの挨拶からは、嵐を守りながらラストイヤーを全速力で走りきる覚悟が伝わってきて、一種の壮絶ささえ覚えました。

二宮和也さんは「僕たちにはたくさんやりたいことがあるけど、今決まっているものだけにならないよう頑張らないといけない。20201231235959秒、際の際まで楽しい思い出を作りたい」とコメント。相葉雅紀さんは「僕は『活動休止』と書いて、『パワーアップ』と読むと思っている。絶対に戻ってきます!」と笑顔を見せ、活動休止を悲しむファンに希望をもたらしました。

負の側面も臆せずさらけ出す

より直接的に、率直に語り出した嵐の姿は、Netflixで配信が始まったドキュメンタリー「ARASHI’s Diary -Voyage-」でも見られます。同番組は嵐の活動休止までを追うオリジナル番組で、全20話以上が毎月不定期で配信される予定です。

もちろん、これまで5人が語ってきたこともうそではないと思います。しかし、嵐=仲良しというパブリックイメージを彼ら自身も重んじ、言及できないことも少なくなかったと考えます。「仲良し」というより、「互いを尊重する協調性、人間力にたけていた」と表現したほうが的確かもしれません。

「机をたたいてどなったこともあった」「愛するものを自分の手で殺そうとしている」。先月31日に配信された初回では、活動休止の経緯や思いなどを告白。アイドルとしては、どちらかと言えば隠すべきとされてきた憤慨、葛藤、気うつといった負の側面をさらけ出しています。それでも公表したのは、影を明かしてもファンはついてくるという確信や信頼があるからではないでしょうか。活動休止を巡って憂苦を抱えていた嵐も、アイドルである以前に、一人の人間なのだと考えさせられます。

こうした激論や苦悩があったにもかかわらず、テレビやライブでは笑顔を振りまき、ファンを幸せにしてきた嵐。あらためて、5人のプロ意識の高さに感服します。
エンターテインメントが多様化する中、今後、嵐ほど幅広い世代に支持される男性アイドルはなかなか登場しないのではと考えると、活動休止までを記録として残すことは意義深い気もします。

私自身、ドキュメンタリーの初回は涙なしでは見られませんでした。それは、内容に衝撃を受けたと同時に、本気でぶつかり合った5人の姿を見てほしいという嵐なりの誠意が胸に刺さったからなのかもしれません。ファイナル公演やドキュメンタリーを通じ、「本当の嵐」に触れられた気がしました。

揺るがないファンへの感謝

嵐の赤裸々な告白に、胸が苦しくなったファンも少なくないでしょう。ドキュメンタリーでの言葉尻だけを捉え、「不協和音」などとかき立てる一部メディアを苦々しく感じる人もいると思います。

そんな中、嵐の公式SNSにアップされたのは、パソコンを囲んで、Netflixのドキュメンタリーと思われる番組を元旦に見る5人の後ろ姿の写真。1枚の写真で和やかな雰囲気を漂わせ、「一部シリアスな内容があることは承服済みで、5人で一緒に番組を見られる状態ですよ」と暗示させるのは、さすが嵐といったところです。昨年1月の活動休止会見を湿っぽくならずまとめた点と重なりました。

5×20ツアーのファイナル公演で、5人は「感謝」「ありがとう」という言葉を何度も口にしていました。50公演にも及ぶ大規模なツアーを行ったこと、コンサートで会場の隅々まで届くよう必死で手を振ったこと、全てファンに感謝を伝えるためです。ファンにとっては、謝意に満ちた5人を思うことも、戸惑いの解消につながる気がしました。

覚悟を持って、自分たちが刻んできたリアルな時間や思いをファンと共有し始めた嵐。ラストイヤーにどんな風景を描いていくのか、こちらも本気で向き合いたいと思います。
(読売新聞東京本社 山村翠)

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