ニッポンの職場に残る「女性限定」ルールの気になる理由とは?

サンドラがみる女の生き方

2020年になりましたね。筆者はこの正月、初詣をしてずっと日本で過ごしました。華やかな着物姿の女性を見ると、「日本の正月って、やっぱりいいな」と思うのでした。ただ、「お仕事で着物を着なければならない」状況だと、また違う印象を持つかもしれません。今回は、「女性だけ着物姿で初出勤」を含む「職場での女性の服装ルール」について考えてみたいと思います。

女性だけ着物で初出勤はアリ?

年が明けて仕事始めとなった1月6日、大発会に晴れ着姿で参加した東京証券取引所の女性社員らの写真が読売新聞オンラインで紹介されていました。その姿を見て、一瞬「華やかだな」と思ったものの、「仕事で着物を着なくてはいけないというのは大変だろうな」との思いも頭をよぎりました。

自分で着物を着られる人ばかりではありませんから、着付けの先生に来てもらったり、髪を結ってもらったり、何かと時間がかかりそうです。人によっては混雑している電車での出勤を避け、タクシーでの移動が必要になるかもしれません。着物姿では、大股で歩けませんし、トイレに行くのも大変そうです。

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筆者はかつて、ある職場でドイツ人男性の上司と雑談中に、「正月明けに女性社員が着物を着てきたら楽しいのではないか」と言われたことがあります。こんな案が通ってしまっては大変だと危機感を持った私は、「着物はドイツの民族衣装のDirndl(ディアンドル)と違って、ライセンスを持っている人でないと、なかなか上手に着られないんですよ。だから、始業時間に間に合わせるには、女性だけ朝5時に起きることになりますし、タクシー代も必要になってくるかと思いますね」とまくし立ててしまいました。(ディアンドルについては、こんなに違う!民族衣装に見る各国の「美的感覚」で触れています)。

「ちょっと言い過ぎたかな」と思っていたら、その話を聞いた日本人の女性社員から、後に「ありがとう。着ることになったら大変」と耳打ちされたので、「ああ、同じ気持ちだったのだな」とちょっとホッとしました。そんなこんなで、着物は「見ている分には華やかできれい」だけれど、実際に着物姿で仕事をするのは不便ですし、女性にばかり時間やコストの負担がかかります。「女性が着物を着て初出勤」に、即「いいね!」とは言えないのでした。

着物は、民族衣装で「伝統的」なものですが、実は日本に限らず、他国でも「女性にばかり伝統的な服装をすることを求める」傾向があります。たとえば、イスラム教徒のカップルを見ると、女性はベールをかぶり、体のラインが見えない伝統の服を着ている一方で、隣の男性はジーンズにTシャツ姿という光景をヨーロッパでよく見かけます。伝統を大事にするのは良いことだと思いますし、一概に是非を決めつけることもできません。しかし、そんなカップルを目にすると、女性としてちょっぴり複雑な気持ちになります。

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個人的にすてきだなと思ったのは、数年前にドバイのショッピングモールで見かけた「男性も女性も伝統的な服装」のカップルです。女性のほうは黒いアバヤで、男性は白いカンドゥーラ(マキシ丈のワンピースのようなもの)姿。男性が白と赤のクゥトラという布を頭に巻いており、カップルとして服装のバランスが取れているなと思いました。

女性だけメガネ禁止!?ニッポンの職場の理不尽なルール

最近、「女性だけメガネの着用が禁止されているニッポンの職場」が話題になりました。発端となったのは、昨年10月、ニュースサイトで報じられた「職場でメガネ禁止される女性たち」という記事です。職場の上司から「メガネ禁止」を言い渡された女性たちの声を取り上げていました。

接客業や美容クリニックの看護師にメガネの着用が禁止されている場合があるようです。この報道を受けて、ネット上では「時代遅れ」「女性を仕事内容ではなく、容姿でしか評価していない」といった批判の声が相次ぎました。

「女性のメガネ姿」に関しては、ヨーロッパのテレビを見ていても、メガネをかけている女性の司会者が男性よりも少ないので、これは日本に限った話ではありません。ただ、ショービジネスなどのマスメディアに出る女性ではなく、一般の職業で女性にメガネ禁止令が言い渡されるのは、ニッポン特有かもしれません。

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気になるのは、女性側は近眼などの視力調整でメガネをかけたいだけなのに、一部の男性が「女性のメガネ」の話を「容姿の話」にすり替えて語っていることです。報道によると、経済同友会の桜田謙悟代表幹事がこのメガネ騒動について、「ナンセンスとしか言いようがないですね。私はメガネの女性好きなので。そういうこと言うと、またいけないのかもしれないけど」とコメントしました。ご自身でツッコミを入れているので、まだ良いほうなのかもしれませんが。

かつて、お見合い結婚が盛んだったころ、生まれてくる子どもに近眼が遺伝するといけないということで、「女性の近眼」を理由に男性側が断るというケースもあったそうです。お見合いの衰退で会社が男女の出会いの場となると、女性社員を「花嫁候補」として採用する風潮もありました。そう考えると、「女性だけメガネ禁止」のルールは、こうした歴史の悪しき名残なのかもしれません。

望ましいスカート丈って?

ニッポンには「女性だけが制服」の会社もまだまだ多くあります。近年、制服がパンツかスカートかを選べる会社も出てきましたが、全体的には制服の場合はスカートしか選べないことのほうが多いようです。

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制服のない会社であっても、女性のスカートの丈が決められている職場もあります。短くもなく、かといって長くもなく、いわゆる「ひざ丈」が望ましいとされることが多いようです。職場が「スカートの丈」に関するルールを作っているところに、「メガネ禁止」や「女性のみ晴れ着で初出勤」といった「女性限定」ルールに通じるものがあるように思いました。

女性を「働く人間」というよりも、いまだに「結婚相手としてふさわしいか」という観点から、会社のルール作りをしているのではないかと勘ぐりたくなってしまいますが、私の考えすぎでしょうか。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/