フリーランスになる前に知っておきたい、社会保障の3つのポイント

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会社を辞めてフリーランスになって自由に働きたい――。そんな憧れを持っている人も少なくないでしょう。クラウドソーシングなど、インターネットを介して仕事を受注するサービスも普及し、以前より気楽にフリーになれるイメージを持っているかもしれません。でも、ちょっと待って。年金や医療などの社会保障の面では、フリーランスに比べ、会社員は手厚く守られているのです。どのような違いがあるのか、主な3つのポイントを、社会保障制度に詳しい社会保険労務士の諸星裕美さんに聞きました。

会社員とは異なる年金や健康保険

 1,老後の資金を多めに蓄えないといけない

老後の資金といえば、年金。ですが、フリーランスは、厚生年金に加入する配偶者の健康保険の被扶養者として認められない限り、国民年金保険料を全額、自腹で納めないといけません。現在、月約1万6400円です。40年間、全く未納せずに保険料を払っても、65歳から受け取れる年金は約65000円(2019年度)。蓄えなしで、国民年金だけで暮らすのは厳しそうです。収入が少ないなど保険料を納めることが難しい場合は、保険料の免除制度を利用できますが、その免除分に合わせて年金額は減ってしまいます。

一方、週30時間以上、働いている会社員は、国民年金に加え、「2階建て部分」と言われる厚生年金にも加入しています。従業員501人以上の企業に勤めている人は、週20時間以上でも対象になる場合があります。保険料は給料から天引きなので、意識していないかもしれませんが、保険料の半分は企業が負担してくれているので、国民年金だけの時に比べて、老後に多くの年金を受け取れるのです。年金額は収入額によって異なりますが、「フルタイムで40年間、働いた会社員は、おおむね2倍の年金をもらえる」と考えていいでしょう。

年金への不信感が強く、「年金なんて将来、もらえるか分からない。会社員を辞めれば厚生年金に入らずに済んでラッキーなんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。しかし、国のルールで、年金は将来にわたり、一定の水準を下回らないことが定められています。支持率に大きく影響しがちな年金問題には、政治家は敏感です。国の財政が破綻するような事態にならない限りは、多くの国民が保険料の払い損になるような状況は起きないでしょう。

 2,病気の時の保障が少ない

厚生年金に加入する条件を満たしている会社員は、健康保険にも加入していて、これも保険料の半分は企業が出してくれます。フリーランスは健康保険の被扶養者として認められていない限り、保険料を全額自分で支払い、国民健康保険に加入する必要があります。

この2つの保険、病気やケガで働けなくなった時の保障が大きく違います。企業の健康保険なら、「傷病手当金」といって、最長1年半、それまでの給与の約3分の2を受け取れますが、国民健康保険の場合は、この制度がありません。フリーランスには有給休暇や休職制度もありませんから、病気で働けなくなり、急に収入が途絶えた時に備えて、自分で民間の保険に入るなど、準備が必要と言えるでしょう。

また、会社員は全員、労災保険に加入しています。保険料は全額、企業が負担しています。労災に入っていれば、仕事中のけがや病気の場合、自己負担0円で医療を受けられますし、休んでいる間も給付金が出ますが、フリーランスは、労災の対象とはなっていません。

 3,育児休業中の収入がゼロ

「出産後、1年くらいは子育てに専念したいな」と思うと、フリーランスはその間、不動産収入などの不労所得がない限り、収入が途絶えてしまいます。一方、週20時間以上、働いている会社員は、雇用保険に加入しています。1年以上、加入期間があれば、育休中、最初の半年は給料の3分の2、それ以降は2分の1、最長で子どもが2歳になるまで、給料の代わりに給付金がもらえます。

求められる労働環境の改善 

フリーランスと会社員の主な違いを3つ紹介しましたが、ほかにも「会社員にはあって、フリーランスにはない制度」は少なくありません。「不安定」と言われる非正規雇用に比べても、フリーランスは、労働法制度のもとで守られていないと言えるでしょう。フリーランスの労働環境の改善については、国も議論を進めていて、今後、改善される可能性はありますが、現時点では、制度が追いついていない状況です。もちろん、「フリーになってスキルを磨き、自分らしく働いて、うまくいけば収入も大幅にアップ」という可能性もあり、フリーになるのはいちがいに悪いことではありませんが、こうした制度の違いを知ったうえで、決断することが大切ではないでしょうか。

 (読売新聞社会保障部 田中ひろみ)

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