台風被災地支援にシェフレシピ ツイッターで広がる

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台風19号の豪雨災害で甚大な被害を受けた長野県のリンゴ農家などを応援しようと、料理人たちが、被災地の農産物を使った秘伝のレシピをツイッターで公開する動きが広がっています。レシピは洋菓子、サラダ、肉料理など90近くに上っており、投稿をきっかけに農産物が完売した農家も。取り組みは、被災地の復興に一役買っているようです。

「被害に遭われた農園のりんごをまだ買えるなら、そこで買ってタルトタタン作ってくれたらうれしいです。たくさん消費できるので」

愛知県出身でフランス在住のシェフ・神谷隆幸さんは、10月下旬、自身のアカウント(@Taka09KMY)で、こうツイートしました。リンゴを使った洋菓子「タルト・タタン」の写真も投稿し、被災地の農家からリンゴを買った人に対して、レシピを提供すると呼びかけました。

深刻な農業被害「農家助けたい」

台風19号は、長野県のリンゴなど農作物に大きな被害をもたらしました。県は、田畑への土砂流入など580億円以上の農業被害を確認(11月21日現在)。千曲川の堤防が決壊した長野市穂保ほやす地区はリンゴ栽培が盛んで、収穫期を迎えたリンゴが被害に遭いました。

浸水被害に遭った長野市のリンゴ畑(撮影・三浦正基)

インターネットのニュースで被害を知ったという神谷さん。「高齢化や後継者不足など農家を取り巻く状況が年々厳しくなっている中、甚大な台風の被害。このままでは農家をやめてしまう人も出かねないので、何とか助けたいと考えた」と話します。ボランティアの参加も浮かびましたが、国外に住んでいるため、容易に駆けつけることはできません。

もどかしさを抱える中、思いついたのが料理人としての支援でした。料理人にとって最も大切なレシピを人に教えることはめったにありませんが、「#被災地農家応援レシピ」とハッシュタグを付けて発信したのです。タルト・タタンのほか、ポトフ、豚肉のリンゴベーコンマスタードなどのレシピを提供しました。

ツイートは拡散され、このハッシュタグでこれまでに約90のレシピが投稿されました。リンゴのほか、サツマイモ、シイタケ、ナシなど使用する農作物の種類も広がっています。「シェフのレシピを元に、被災農作物で料理を作りました」と報告するツイートもあります。

東京都と神奈川県に6店舗を構えるイタリア料理店の統括料理長、関口幸秀さんも、神谷さんの取り組みに共感した一人。焼きリンゴ、モスタルダ(果物をマスタード風味のシロップで漬けたイタリアの郷土料理)などのレシピを公開しました。関口さんは「ツイッターで気軽に支援できる。農家を勇気づけられたらうれしい」と話します。

リンゴ完売 農家にも波及

取り組みは、生産農家にも波及し始めています。長野市の「フルプロ農園」では、通販していたリンゴ1500キロがツイッターをきっかけに完売しました。同農園は、千曲川の堤防が決壊した現場の近くでリンゴを栽培。4代目の徳永虎千代さんは「神谷さんたちのおかげで、あっという間に売り切れた」と驚きます。

神谷さんは、投稿されたレシピをまとめた料理本の出版も検討しています。「料理人は農家がいてこそ料理が作れる。息の長い活動にしたい」と神谷さん。関口さんも「日に日に台風の報道は減っている。風化しないよう取り組みたい」とコメントしています。

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