バンコクはかつて、「東洋のベニス」と呼ばれていたことをご存じでしょうか? 市街地にはたくさんの運河が縦横にめぐらされ、人々の生活、そしてタイの経済を支えていました。しかし、それらの多くは都市化とともに埋め立てられ、今では主要な数本を残すのみとなっています。
そのひとつが、バンコクを東西に流れるセンセープ運河。ここで運行している定期船は、渋滞がなく、電車よりも運賃が安いため、郊外から都心に通うバンコク市民の足となっています。ローカルな風情を味わいたい旅慣れた観光客にとっても試す価値ありの交通手段です。おすすめは、大型モールのセントラルワールドなどがあるラチャダムリ通りの北に位置するプラトゥナム船着き場から西へ向かう路線です。

この船着き場の近くには、女性用ファッションアイテムの充実した品ぞろえで有名なプラティナムファッションモールや、行列ができる2軒の人気カオマンガイ屋があり、買い物や食事が楽しめます。

西の終点、パンファーリーラートを目指して船に乗り込みます。運賃は11バーツ(約39円)。船が出発してから船員が回収しにくるのを待てばOKです。運河を走る船からは、中心部とはひと味違うバンコクの風景と人々の日常の暮らしが垣間見えます。

20分程度で終点に到着したら、まずは歩いてすぐの「マムアンショップ」へ。タイ人漫画家で、日本に留学経験もあるウィスット・ポンニミットさんが描く女の子のキャラクター「マムアンちゃん」は、癒やされるビジュアルと日本語でも書かれた心温まる優しいメッセージが特長で、日本でも人気が高まっています。ここでは売れ筋商品のカレンダーやボールペンをはじめ、さまざまなグッズを買うことができます。
特に、ここでしか食べられないマムアンちゃんアイスは必食。「マムアン」とはタイ語でマンゴーのことで、黄色い部分はもちろんマンゴー味。食べるのがもったいないかわいさです。暑さで溶けてしまう前に食べましょう。

次は、同じく終点から歩いていける距離にある「黄金の丘」と呼ばれる寺院、ワット・サケットへ。アユタヤ王朝時代から存在する由緒ある寺院で、344段のらせん階段を上った、さらにその上に黄金に輝く仏塔がそびえ立っています。厳かな空気の中、時折響く鐘の音を聞ききながらバンコク都心を望むと、穏やかな気持ちになります。
ここからタクシーやトゥクトゥクに乗って、王宮やカオサン通りへ。巨大ブランコで日本人観光客にも知られてきた寺院のワット・スタットなどにもアクセスできます。

道路と鉄道網の発達によって役目を終えつつあるかと思われていたセンセープ運河ですが、バンコク都内の渋滞解消のための交通手段として再び注目されており、Eチケットシステムの導入や運河の水質浄化を柱とした2020年までの開発プロジェクトが政府によって立ち上げられています。観光客にとっても利用しやすい移動手段として発展することが期待されます。
(取材・文/ 広告局バンコク駐在 杉崎雄介)
住所: 1 Lanluang road, Bangkok
営業時間: 水曜日から日曜日、午前11時~午後7時