「事務系フリーランス」で高収入を実現するワーママたち

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今や、会社の中にワーママがいるのは当たり前の時代。とはいえ、有給休暇を取得したり時短制度を使ったりしてみても、家事・育児と仕事の両立に苦しみ続けている女性が多いのも事実です。そんな中、「フリーランス」の道を選んで、会社員時代以上の収入を上げている人も増えてきました。フリーランスと聞くと、ライターやデザイナー、プログラマーといった専門技能を持つ人たちがなるものというイメージが強いですが、最近は、広報や人事、総務といった事務系の職種にもフリーランスの道が開かれてきています。

マーケティング、広報の業務を請け負い

都内在住の鈴木夏帆さん(仮名・33歳)は、契約企業からマーケティングや広報などの業務を請け負っているフリーランスのワーママです。大学卒業後、外資系企業で商品マーケティングなどに携わっていましたが、入社5年目に結婚。「頭が動きっぱなしの日常をリセットしたくて」、退職しました。その後、妊娠・出産し、専業主婦として2年半を過ごしました。

子育てと家事だけの生活に物足りなさを感じ始めていた3年前、フリーランスと企業のマッチングなどを行う人材サービス会社「Waris(ワリス)」に出会いました。同社に登録した鈴木さんは、その2か月後、マッチする会社が見つかり、フリーランスとしてキャリアを再スタート。現在は3社と契約し、商品マーケティングや広報などの仕事を手掛けています。

「初めのうちはどこの会社も、短期間の契約からのスタートでしたが、だんだん契約期間が延びるようになりました。今は、年単位の案件とプロジェクト単位の案件を組み合わせて働いています」と鈴木さんは話します。

当初は月15万円程度だった収入も、うなぎ登りに。現在の月収は85万円ほどに上ります。複数の会社の業務を請け負うことで、会社員時代以上の収入を実現することができたのです。

「Warisさんから、フリーランスは社会保険や税金などを自分で払うため、会社員時代の給料を時給換算した金額の3割増しくらいの金額で時給を考えた方がいいと教えてもらいました。今もWarisさんからの紹介でつながった会社をメインに仕事をしています」と鈴木さん。契約各社から名刺も作られているため、対外的には社員とほとんど変わりません。

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「社員時代、広報の仕事はやったことがなかったのですが、クライアント企業からお願いされたことをきっかけに、自分で勉強してできるようにしていきました。声をかけられた時、『やったことがないからできない』ではなく、『やったことはありませんが、やってみたいです』と経験のないことを口にしつつ、前向きな気持ちであることを伝えたのが良かったのかもしれません」と鈴木さんは振り返ります。

スキルアップのチャンスを自分で作り、社員でなくとも契約会社にとってなくてはならない存在になった鈴木さん。子供が4歳と2歳になった今は、朝9時半から午後5時半を就業時間と決め、週5日労働を維持しています。クライアントの会社に出向く時以外は、仕事をする場所は基本的には自由。今の働き方が気に入っているといいます。

自分に投資しただけ必ず返る 人事のプロに成長

同じく、Warisをきっかけに事務系フリーランスの道を切り開いた都内在住の川原真紀さん(仮名・37歳)は、マーケティングリサーチの会社が初職でした。2年間勤めた後、経営戦略コンサルタント会社で人事を3年経験。その後、人事組織コンサル会社で2年の経験を積み、フリーランスとして働き始めました。

「会社を辞めたきっかけは、忙しくて死にそうになったから。子供もまだ1歳半で、ほとんど寝る時間もない状態でした。会社を辞めて一人で歩み出そうと決めた時に目標に置いたのは、とにかく週50時間眠れることでした」と川原さん。

川原さんの会社員時代の年収は1000万円ほどありました。しかし、家事代行やベビーシッターをフルに使っているのに、体が休まるのを感じられない生活に疲弊し、独立を決めたのです。「年収は高くても、ベビーシッター代などでお金は飛ぶようになくなりました」と川原さん。2014年にWarisに登録すると、人事で悩みを抱える企業からすぐに依頼がくるように。前年度の収入が高いため、税金の支払いなどでフリーランス初年度の手取りはかなり低かったものの、目標だった睡眠時間の確保はできるようになりました。

川原さんはその後、人事系コンサルとして独り立ちできるようにと、組織や人事を客観的に分析・評価し、組織の最適化を提言する専門家「パーソネルアナリスト」の養成講座を受講します。そこで理論を勉強した結果、企業から直接仕事の依頼が来るまでになり、今は一人社長として会社を起こし、社員時代の年収を見事に取り戻しているそうです。

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川原さんは「なにかしらの資格を取るためには、まとまったお金が出ていきますが、その後のリターンを考えれば安いものだと思います。それまでは、子供の将来のためにと保険商品などを使って貯蓄をしていたのですが、今は考えが変わりました。こうして資格を取ることは、いわば自分への投資です。投資すれば、それだけまとまった金額が得られる仕事をご依頼いただけるようにもなります」と強調します。

増えつつある事務系フリーランス

フリーランスの社会保障などを支援する一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事によると、こうした事務系フリーランスは着実に増えてきています。現在、同協会に登録しているフリーランス約2600人のうち、クリエイティブ系や技術開発系、出版メディア系に次いで多いのが、コンサル系のフリーランスだといいます。

事務系フリーランスに対する企業側のニーズも高まっています。フリーランスに業務を委託すれば、社員を抱えることによるコストを減らしたり、人手不足を解消したりできるからです。実際、求人サイト「indeed」でキーワード検索に「フリーランス」と入れてみると、採用面接や事務支援など、様々な事務系職種の求人情報が掲出されます。フリーランスが請け負うことの多い業務委託型案件も多く紹介する求人サイト「Reworker」では、請求書発行や入出金管理といった案件も見られ、幅広い業務でフリーランスが求められていることがわかります。

とは言え、事務系フリーランスとして鈴木さんや川原さんほどの収入が得られているのはまだほんの一握り。一般的な派遣社員と同程度の収入のフリーランスも少なくはありません。業務委託金額は大きく見えても、実際に業務に取りかかってみると意外と時間がかかり、「時給換算にすると500円ほどにしかならなかった」という人も。全ての人が高収入を得られているわけではないようです。

では、高収入を得るには、具体的にはどのようなスキルがあればいいのでしょうか。「フリーランスで大事なのは仕事の〝再現性〟が高いこと。どんな仕事がきても同じクオリティーでできるというのは最大の武器でしょう。総務としてオフィス移転業務を経験していることなども立派なキャリアです。その知識を借りたいと思う企業は多いと思います」と平田さん。いきなりフリーランスになるのは経験値や収入面で自信がないという人は、会社勤めを続けつつ、副業やボランティア、リカレント(学び直し)といった社外活動にも取り組む「パラレルキャリア」がおススメだそう。

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「今は業務をお願いしたい人と、スキルを持つ人をマッチングするアプリなども出てきています。副業として始め、自分のスキルがどのくらい通用するのか、また、需要があるかなどを確かめてからフリーランスに切り替える方法もあります」と平田さんは説明します。

フリーランスは、経理などを自分でしなければならない面倒さはあるものの、子育て世代にとっては時間を融通しやすいという大きな利点もあります。電車通勤プラス保育園の送迎を抱えるワーママにとっては、満員電車通勤の苦痛から解放されるだけでも魅力的な話です。そう考えると、今後も事務系フリーランスは増加していくといえそうです。

(取材/フリーランス記者 宮本さおり)

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宮本さおり(みやもと・さおり)
フリーランス記者

 元地方紙記者。結婚により退社、主婦歴15年。5年間の専業主婦生活を経てフリーランスのライター・記者に。夫の転勤帯同で地方、海外含めて6回の転居を経験、その間、2人の子どもを授かり「子育ても仕事もダブルに楽しむ」をモットーに地道に執筆活動を続けている。バリキャリでもゆるキャリでもない「ナチュラルキャリア」の拡散を願い、自らも実践にチャレンジ中。