集客力の低下が懸念されるHey! Say! JUMP、台湾公演に見る強み

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コンサートが行われた台北アリーナ

Hey! Say! JUMPが10月5、6日、台湾の台北アリーナでコンサートを開催しました。JUMPの台湾公演は2012年以来7年ぶりで、今回は2公演で計2万人以上を動員。台湾のチケットサイトでチケットを購入した記者も渡航し、JUMPの雄姿を見守りました。一方、日本国内でのアリーナツアーを見送ったにもかかわらず、台湾公演を行ったことから、「担降たんおり(ファンをやめるという意味の造語)」するファンも。11月下旬から始まる日本国内のドームツアーについて、「空席が目立つのでは」と心配する声がありますが、台湾公演に飛躍のヒントがあるように感じました。

巧みなフォーメーションダンスで魅了

7年間待ち望んだ台湾のファンたちは、ペンライトやうちわを手に「JUMP! JUMP!」とコールし、開演前から熱気が会場を包みます。「楽しんでいこうぜー!」とメンバーが登場し、「『ありがとう』~世界のどこにいても~」を歌い出すと、割れんばかりの歓声が起こりました。同曲は約20か国語の「ありがとう」を歌詞にちりばめた遊び心のある楽曲で、海外公演にぴったりなチョイスです。

「Beat Line」「BANGER NIGHT」などダンスナンバー4曲をノンストップで踊るコーナーは圧巻でした。JUMP史上最も過酷だったのでは……と思うほど。JUMPのウリは、8人という大人数を生かした巧みなフォーメーションダンスです。縦1列に並んだり、4人と4人にわかれて踊ったり、万華鏡のようにめまぐるしく変わる激しいダンスに、ファンの盛り上がりは最高潮。言葉が通じないファンもいるなか、パフォーマンスでみせるというJUMPの気迫が伝わってきました。直後のMCコーナーで、しばらくメンバーたちは息が上がったままだったのも、無理はありません。

「Born in the EARTH」にあわせたフライングも、今公演の見せ場の一つでした。フライングは、舞台などで度々披露されているジャニーズのお家芸。8人が手を取り合い、円になって宙を舞う姿は、ジャニー喜多川さんが手掛け、かつてJUMPも出演したショー「SUMMARY」を彷彿ほうふつとさせました。

このほか、着物風の衣装に身を包んで和太鼓や三味線を演奏するなど、JUMPのコンサートではあるものの、ジャニーズそのものや日本を代表しているような盛りだくさんの内容。7年ぶりの公演で、大きく成長した姿を台湾のファンに印象づけました。

台湾で身近なジャニーズ

台湾は、嵐やNEWSなどもコンサートを開催したことがあり、日本人ファンに負けず劣らず熱狂的なファンが多い場所です。

台湾のチケットサイトで購入したためか、記者の周辺は8割ほどが台湾のファンでした。ファンは、メンバーが近くに来る度、山田涼介さんなら赤、知念侑李さんならピンク……といった具合に、ペンライトの色を8人それぞれのメンバーカラーに変えます。自然に始まった行為に、温かいおもてなしや歓迎の意を感じました。

記者は、10年以上前にも台湾で開かれたジャニーズのコンサートに行ったことがありますが、当時より、台湾の人が増えた印象です。実際、MCでメンバーが「JUMPのコンサートに初めて来た人?」と聞くと、大勢の人が挙手していました。

1990年代半ば、台湾では日本語のテレビ番組など日本文化の輸入が自由化され、日本ブームが起こりました。ドラマ、漫画、ファッションなど日本の大衆文化に夢中になった若者は「哈日族(ハーリーズー)(日本大好き族)」と呼ばれました。今も台湾の街を歩くと日本語の看板が目立ち、テレビをつけると日本の番組が頻繁に放送されています。現地ファンの増加は、日本の大衆文化がより日常的なものになり、心理的な距離の近さを感じている人が多いことを痛感しました。

SNS上に私設ファンクラブを開設した台湾のファングループ。開演前に集まり、情報交換や写真撮影などをして楽しんでいた

実際、開演前に話した台湾の女子学生は、「台湾でもジャニーズが出演するドラマがよく放送され、ジャニーズを特集した雑誌も手軽に手に入るので、自然に好きになった」と日本語で教えてくれました。彼女は、私設ファンクラブサイトをSNS上で開設し、運営するメンバーの一人。台湾のファン同士で情報交換などをするため、サイトを開設したそうです。

台湾でもアイドルは「かわいい」

公演中、メンバーが何か日本語で発言しても時間差がなく笑いが起こり、日本語が理解できる人が多い印象です。何より、「かわいい」という単語を使いこなしていたことに感嘆しました。公演中、周囲から日本語で「かわいい」と漏れ聞こえてきたのです。

日本のファンも、ジャニーズのアイドルを評する際に「かわいい」という言葉をよく使います。ジャニーズのアイドルは中性的な雰囲気が漂うせいか、「格好いい」より、「かわいい」がしっくりきます。

公演中にメンバー同士でくっついたり、おちゃめな発言をしたりした時、台湾のファンも同様に「かわいい」と言うのです。振り付けを間違えるなど、ちょっと失敗をしても、「かわいい」。「かわいい」には、愛らしい、チャーミング、好き、最高、癒やされるなど、実に様々な意味を含んでいます。そんな日本独特の感性や考え方を含んだ単語を、台湾のファンは自然に使っていました。

客席は、中高生や20代と思われる若者が目立ちます。若年層に支えられている点も、日本と同様です。JUMPはデビュー13年目の中堅グループで、アラサーを迎えたメンバーもいます。グループの歩みと共にファンも年齢を重ねていくものですが、JUMPファンの多くは中高生などの若者。それは、かわいい系のタレントが多いグループだからなのか、グループ独特の緩さやおおらかさが若者にとって居心地がいいのか……。一考の余地がありますが、台湾でも、JUMPは若いファンを獲得し続けるポジションにいました。

開演前に会場付近で写真撮影するファン

熱狂ぶりは、コンサートにとどまりません。台北市内に開店した期間限定のポップアップストアには入場を待つ人たちの行列ができ、DVDやCDなどは売り場の棚からなくなっていました。
10月3日にメンバーが台北に到着した時も、大勢のファンが空港に詰めかけました。日本では空港や駅などでの出待ちは基本的にNGですが、台湾のコンサート主催会社が、JUMPが搭乗する便をSNSで明らかにしました。JUMPは、再三の注意にもかかわらず公共交通機関でのファンのマナーが改善されなかったため、今年は日本国内でのアリーナツアーの開催を見送っています。こうした経緯もあり、ファンのマナーや空港の混乱を心配する声がSNSなどで散見されました。「日本は出待ちNGなのに……」という不満も理解できますが、主催者側には、台湾での盛り上がりを世間に広めたいという思惑もあるようです。

ドームツアーは集客に苦戦?

台湾公演は大成功に見えた一方、11月下旬から始まるJUMPの4大ドームツアーの集客は苦戦しているようです。10月中旬、ドームツアーのファンクラブ向けチケットの抽選結果が発表されると、ツイッターには「重複当選した」「落選者はいるの?」「当選倍率が低すぎる」などの声が多く投稿されました。ファンクラブ向けチケットの定価は7700円ですが、売買サイトやツイッターを検索すると、3000円前後でやり取りされているチケットもあります。要因の一つとして考えられるのが、ファン離れ。日本国内でアリーナツアーを開催せず、台湾公演を行ったことなどで落胆し、担降りした人がいるようです。

台湾公演から探るJUMPの強み

確かに、24時間テレビのメインパーソナリティーをV6と務め、伊野尾慧さんがブレイクする「伊野尾革命」が起こるなどしていた3、4年前と比較し、グループの失速感は否めません。10月30日に発売された最新アルバム「PARADE」の初週売り上げも、昨年発売のアルバムと比較し、ダウンしています。中堅グループになり、「若さ」「フレッシュさ」をウリにできなくなった今、コンサート演出、トーク力などにも、大胆な変革がほしいところです。

ただ、台湾公演を通じ、JUMPにしかできないパフォーマンスがあると感じました。先述したフォーメーションダンスは、まさにJUMPならではの強みです。キレのある群舞は、コンサートでこそ迫力をもって観客に訴えかけてきます。また、和を重視するグループゆえ、JUMPの群舞はそろっていて、美しく見えるという点も特筆すべきものです。デビュー時はメンバー間のキャリアにばらつきがあったものの、長年のグループ活動を経て、信頼感を構築。ここ数年、踊りのシンクロ率はさらに磨きがかかっているように思います。

また、台湾公演ではラブソング「White Love」を中国語で丁寧に歌い上げ、涙する観客もいました。こうしたファンに寄り添った、真心あふれる演出も、ファンを大いに喜ばせることでしょう。

今こそ、自分たちを見つめ直し、レベルアップを図る好機なのかもしれません。Hey! Say! JUMPが令和でも大きくジャンプできるか、今後も注視していきたいです。

(読売新聞東京本社 山村翠)

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