下着姿のままクローゼットの前で呆然…なぜ「おしゃれ迷子」になってしまうの?

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「クローゼットはパンパンなのに会社に着ていく服がない」「流行の服を買ったのに着ないままになっている」――。毎朝、通勤前に何を着ればいいのか途方に暮れる“おしゃれ迷子”になっていませんか。元銀行員でスタイリストの川上さやかさんに、失敗しない通勤コーデに必要な3つのポイントを聞きました。

失敗しない3つのポイント

――一つ目のポイントは流行です。「トレンドは買わない」ようにしているとか。

オシャレって、がんばってするものじゃないと思っています。あまり張り切ってしまうと、疲れてしまいます。もっと気軽に、楽しく取り入れてほしい。その意味で、トレンドと言われるアイテムには、初めて見るようなデザインやバランス、なじみのない色ということもあります。

流行だからと慌てて飛びついてしまうと、手持ちのアイテムで合わせることも難しく、着回しがききません。トレンドは2シーズン目くらいまで様子をうかがっていると、廃れて消えていくか、生き残っているかを判断できます。生き残ったトレンドは、それに合わせやすい小物やアイテムも多く出てきます。そうすればコーディネートの幅が広がり、何を合わせようかと悩む必要がなくなります。流行始めのトレンドは手を出さないのが賢明です。

――二つ目のポイントが服選びについてです。「たくさん服を持っているのに、着るものがない」という声も聞きます。

私の実体験でもあるのですが、朝、下着姿のままクローゼットの前で呆然とし、何を着たらいいか分からないと途方に暮れていました。そこには、一回も袖を通していないトップスがあったり、ワンシーズンに数回しか着ていない同じような色のスカートが並んでいたり……。服があればあるほど迷ってしまうのです。

GUやZARAなどのファストファッションは、「値段が安いから」「流行だから」という理由で手を出しやすいかもしれません。けれど、実際にはそれほど着ていないということも。たとえ安く買っても、着回せない、長く楽しめないなら、それは買い物上手とは言えません。着ない服を処分するときに、「買ったのに着なかった服」の法則を見つけてください。そこに、失敗を繰り返さないヒントがあるはずです。

画像はイメージです

――三つ目のポイントは自分らしさです。「似合う服がわからない」という声も少なくありません。

ファッションは自分のキャラクター、仕事、家族構成、住んでいる街といったバックグラウンドを考えることも大切です。働く地域や職種、職場の環境などによって、仕事に着ていく服は変わっていくはずです。胸元が大きく開いていたり、極端に短いスカートを着たり、派手なネイルやメイクをしたりというのは、オンの日のファッションとしてはふさわしくありません。外見の印象で損をしてしまうのはもったいないと思います。

好きなテイストや色というのは、誰かから言われるようなものではありません。「似合わない」というのはむしろ、サイズが合っていないとか、首が短いのにタートルネックを選んでいるといった問題だと思います。「好み」はとても大切で、好きな色やスタイルにこだわったほうが、「自分らしさ」の規則性を見いだしやすくなります。使いやすい色、形、素材というのを分かっていれば、失敗しにくくなります。

――ところで、この冬のおすすめのアイテムはありますか。

ブラウンのコートです。昨年あたりから、ブラウンをかなり見るようになりました。これまでは冬というと、グレーやベージュが主流でした。昨シーズンあたりから続くブラウンの流行2年目になって、今季はインナーなどでも合わせやすいアイテムが多く出ています。

ブラウンはなじみがないと敬遠する人もいるかもしれませんが、ショート丈などの新しいスタイルに挑戦せず、ベーシックなスタイルを選べば、コーディネートはしやすいと思います。ブラウンと一口に言っても、オレンジっぽいものや、赤みのあるものなども出ていますが、困ったらこげ茶がおすすめです。

銀行員からスタイリストに転身

――経歴がちょっと異色です。メガバンクに勤めていたそうですね。

短大を卒業後、20歳で銀行に就職しました。都内の支店で主に窓口業務など、7年間勤務しました。お金の細かい計算などコツコツと行う仕事は性に合っていました。けれど、銀行業界は男性中心で学歴社会が色濃く残っている現実を知りました。実力に応じて認められ、一生続けられる仕事をしたいと考えるようになりました。

――なぜ、まったく畑違いのスタイリストに転身することになったのですか。

愛読していたファッション雑誌『Oggi』で活躍されていたスタイリストの佐藤佳菜子さんがたまたまアシスタントを募集していました。彼女の大ファンだったので、すぐに応募しました。ただ、最初の1年は銀行員とアシスタントを掛け持ち、銀行の仕事が終わってからスタイリストのいろはを教わりました。各ブランドに洋服を借りにいったり、撮影用の衣装のタグを外したり、雑誌に載るブランド名や価格などを確認したり、どれも地味な作業ばかり。でも、そういった細かい作業がとても楽しく思えました。そして、30歳で独立しました。

「トレンドには飛びつかないで」と話す川上さん(東京都文京区で)

――銀行員時代の経験は今の仕事に生きていますか。

銀行員時代は、限られた給料の中で購入する服を選ばなければなりませんでした。実家に身を寄せていましたので、比較的余裕はあったと思いますが、それでも、休日しか着られないカジュアルすぎる服とか、平日しか着られないカチッとした服を選ぶというわけにはいきません。自然と平日も休日も使えて、着回しがきく服を求めるようになりました。シンプルでベーシックなスタイルはコーディネートの幅が広がるし、時代に左右されません。何より、長く愛用できます。

――ファッションとは何でしょうか。

銀行に勤めていた頃、月曜日の朝は気が重くて、それを打破するためにオシャレをするようにしていました。土日に買った服を合わせるなどして、自分の中の“ベスト・オブ・コーデ”で通勤していました。他人からは分からないかもしれませんが、自分なりの楽しみ方で気持ちを上げていました。同じように繰り返す日常にうんざりすることもあると思います。おろしたての服を着てみたり、お気に入りのアクセサリーを合わせたりするだけでも、代わり映えのない日常のアクセントになります。

(聞き手・メディア局編集部 鈴木幸大)

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川上さやか(かわかみ さやか)

スタイリスト。メガバンク勤務を経てスタイリストに転身。シンプル&ベーシックな中にも上品な女らしさが光る、リアルな通勤コーディネートが人気。今年10月に初の著書『おしゃれになりたかったら、トレンドは買わない。』(講談社)を出版。身長154センチ。instagram:@sk_120