落とし物を拾った人への「お礼」、妥当な額ってあるの?

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財布や貴金属など大切なものをうっかり落としてしまった経験はありませんか。運良く手元に戻ってきたらうれしいですが、読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、結婚指輪を落としてしまい、拾った人から「お礼の額が少なすぎる」と言われたという投稿がありました。お礼の額はどのくらいが妥当なのでしょうか。法律の専門家に聞いてみました。

 お礼の金額が「安い」と言われ

トピ主の「coco」さんは、4年前に26万円で購入したブランド品の結婚指輪をなくしてしまいました。あわてて警察に届けを出したところ、「見つかりました」と連絡があり、自分の指輪であることを確認。このとき、「拾った方がお礼を希望しています」と言われたので、連絡先を聞いて電話しました。

お礼に1万円の商品券と菓子折りを考えていることを伝えると、相手の女性から「安い。(指輪の)定価を調べたら、10%の3万円はもらえるはず」と言い返されてしまった、というのです。「びっくりしました。いわくつきの指輪になってしまった気がして悲しいです。みなさんなら、どうされますか」と発言小町に問いかけました。

この体験談に50通を超える反響がありました。

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「その拾い主はずうずうしすぎます。無視でいいですよ。お礼は主さんが提示している額で妥当だと思います」(「たか」さん)という意見の一方で、「不本意かも知れませんが、トラブルを避け、そのような人とのかかわりをこれから避けるためにも、中古品価格で計算せず、結婚指輪の購入時の価格で計算し、お礼をされると相手も文句の言いようがないと思います」(「お昼寝コロコロ」さん)という意見もありました。

お礼の強要って、どうなの?

「ケチのついた指輪など拾った人に差し上げればどうでしょうね。(拾得物の)お礼を強要する人は一定数いるらしいですが、現金ならともかく指輪の取得に対しお礼を強要する人本当に珍しいと思います。悪い人に拾われましたね。同情します」(「遅すぎた春」さん)と、指輪を手放してしまうことを勧める人もいました。

結局、トピ主さんは相手の要求通りに3万円のお礼を払い、一件落着したとのことですが、法律上はどうなのでしょうか。

遺失物法に規定、報労金の率に幅

弁護士の伊藤諭さん(弁護士法人ASK市役所通り法律事務所)に聞きました。伊藤さんは「遺失物法28条1項では、落とし物の持ち主は、『落とし物の価格』の5~20%の報労金を支払わなければならないとされています。だから、報労金を請求すること自体は、法律にのっとっているので、非難されるべきではありません」と話します。

遺失物法の規定について説明する弁護士の伊藤諭さん

ただし、「落とし物の価格」についてはトピ主さんの言い分に一理あるそう。「この場合の価格は、持ち主に返還されたときの価格であって、販売価格とは違います。だから、新品の26万円を根拠に、その1割強だから3万円という今回の拾得者の言い分はかなり乱暴で、中古品市場で鑑定して、お礼の金額は1万円程度というのが妥当だったかと思います」と伊藤さん。報労金の率に幅があるのは、個々の状況によって判断する必要があるためで、提示額についてどちらかに不満があれば、裁判で争うことになります。

拾得者の中には権利放棄する人も

「過去の判例でも、株券や小切手など、金券を拾ったケースで報労金をどう算定するかが争われたケースはありますが、今回のようなスケールの金額で争うと、裁判費用でコスト割れしてしまうのが実情でしょう」と伊藤さんは指摘します。

さらに伊藤さんは「拾得者の権利として、落とし物を届け出るのに、費用がかかった場合は、その費用は報労金とは別途請求することができますし、一定期間内に落とし主が現れなかった場合は、拾得者がもらうことになります。こうした権利を行使するために、拾得者は、自分の連絡先や氏名を落とし主に伝えることに同意しておくことになります。同意をすれば落とし主の連絡先等も教えてもらえます。もちろん、落とし物を届け出た段階で、これらの権利を放棄することもできます」と強調します。

発言小町には、「以前、カバンを電車の棚に置き忘れた際、警察に届けられていて無事に手元に戻ってきたのですが、拾った方は名前を告げずに立ち去ったと警察から聞かされ、『礼はいらねぇよ』と江戸っ子のように粋に立ち去ったのだと勝手に思い込んでいました。でも、(拾った方は)個人情報を書くのが億劫おっくうになり辞退しただけだったのかも……」(「昼廻り猫」さん)という書き込みもありました。

警視庁がまとめた東京都内の遺失物取扱状況(2018年)によると、落し物(拾得物)で多かったのは、証明書、有価証券、衣類・履物、財布、かさ、かばんの順。くした人に返ってくる率が高いのは、携帯電話の82・9%、証明書の72・8%など。反対に返ってくる率が低いのは、かさの0・9%、貴金属の1・7%などでした。

落とし物を取り巻く状況を知っておくことも、もしもの時に役立つかもしれません。しかし何より、大切なものをうっかりなくさないよう細心の注意を払っておきたいものです。

 (読売新聞メディア局編集部 永原香代子)

 【紹介したトピ】

結婚指輪の取得のお礼トラブルに巻き込まれています