生理休暇、察してほしくない…男性上司の言葉にモヤモヤ

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重い生理痛や貧血など、生理に伴う不調を抱えて働く女性のために、労働基準法で定められている「生理休暇」。ところが、生理休暇の取得率は下がっていて、どう申し出たらいいかわからないという人も。「生理と知られたくない」「職場に相談しづらい」など、それぞれの思いがあるようです。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、「生理休暇、察してほしくない」と題する投稿が寄せられました。働く女性の健康対策について、専門家に聞いてみました。

トピ主の「パプリカ」さんは、31歳の独身女性。ある日、生理痛がひどくなり、職場のトイレで吐いてしまいました。40代既婚の男性上司に「体調が悪い」とだけ話して、その日の午後は休みを取りましたが、翌日、職場に出ていくと、男性上司から「有給の生理休暇を取ってはどうか」と言われたそうです。「生理休暇の取得率が、女性が働きやすい会社としてのポイントになる」との説明もありました。

写真はイメージです

生理とは言っていないのに…

「私の会社では女性で生理休暇を取る人はいません。やはり生理と知られて休むことに私は抵抗があります。特に男性にはよほどの事情がない限り知られたくないし言いたくないです」と「パプリカ」さん。生理とは一言も言っていないのに「(男性上司から)憶測されていることもとても嫌な気持ちになりました」とモヤモヤした思いをつづりました。
この投稿に、50通近い反響がありました。

取る?取らない? 案外知らない申請方法

「(生理休暇は)ありがたい制度とは思いますが、実際に申告して取るのはかなり抵抗がありますよね。私も言えませんでした」と「ビール党」さん。「女性が少ない職場だと言いにくいかもしれませんね」(「転職予定」さん)と、トピ主さんの職場環境を案じる意見もありました。

「私は遠慮なく申請しました」と書いたのは「みにー」さん。「生理痛がひどくて、会社に生理休暇があることを知り、上司に申請しました。申請書を書いて出せば、すぐに申請がとおりました。さらに、休暇届けを出す時、上司が『生理休暇と書かなくていいよ』と気遣ってくれました。すごくありがたかったですよ」と体験談を教えてくれました。

仕事に集中できないほどの生理痛

生理痛(月経痛)は、生理の直前から生理中にかけて感じられる下腹部や腰の痛みのことで、要らなくなった子宮内膜が剥がされる時に出される物質「プロスタグランジン」の働きによって起きます。頭痛、胃痛、吐き気、めまい、腸蠕動(ちょうぜんどう)痛・下痢などを伴うこともあります。

佐藤製薬が2016年に20~30代の働く女性442人を対象に行った調査では、「仕事に集中できないほどの生理痛」を経験した人は53%。これだけ多くの女性が経験しています。しかし厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、働く女性がいる事業所のうち、生理休暇を請求した人がいた事業所の割合は2007年度には5.4%でしたが、2015年度は2.2%と減りました。生理休暇の取得率は下がる傾向にあります。

女性の健康やコミュニケーションの問題に詳しい、帝京平成大学薬学部教授の井手口直子さんに話を聞きました。

「鎮痛薬では生理痛の根本は解決できません」と井手口直子教授(東京・中野の大学研究室で)

「男性から生理について言われるのは、たとえそれが善意からの発言であってもショックだったでしょうね。たとえ良かれと思っていても、男性側から生理のことを口にしない方が良いです。会社は研修などを通じて、こうした問題について注意喚起するべきです」と井手口さんは指摘します。

女性の窓口担当がいれば気兼ねなく

井手口さんは、そのためにも、女性が生理休暇や体調不良について気兼ねなく相談できるように同性の窓口担当者を置くなど、この制度を利用しやすくする企業側の環境作りが必要だと言います。さらに、働く女性側も、自分が取得する・しないは別として、自分の会社にどんな形の生理休暇制度があって、どんな手続きが必要かを知っておくことも大事だと考えています。

「生理休暇を取るのに、医師の診断書は必要ありません。そういう基本的なことをおさえた上で、同じ会社に所属する女性たちとざっくばらんに話し合って、会社側に休暇制度を使いやすくしたいと要望を出すことなども大切です」と井手口さん。

おかしいなと思ったら婦人科へ

また、井手口さんは生理痛が重いというトピ主さんの体調についても、「とても気になります」と話します。「生理は、女性の体に様々な負担をかけます。妊娠や出産で生理が止まっている間は、体を休ませることができますが、現代は昔に比べて女性の出産する年齢が高くなり、出産しない女性も増えているため、体に負担がかかり続けています。生理に伴う不調を感じる人が増えている背景には、そういったことも影響しています」

日本では生理痛や生理に伴う体調不良を「我慢するもの」と思う風潮がありますが、井手口さんは「休むことも大切。痛さやつらさを感じたら、必ず婦人科を受診してください。低用量ピルなどで症状を軽減したり、コントロールしたりすることができる場合が多いです」と呼びかけます。

また、子宮内膜症などが原因で生理の痛みが強くなるケースも多く、会社などで受ける年1回の健康診断では詳細に調べられないため、たとえ健診結果に問題がなくても、異常を感じたら専門医の診察を受けてほしいと話しています。

女性が働き続けられる環境を整えるためには、一人一人の自覚も大切になります。女性の健康を守る様々な制度についても、まずは知ることから始まるのかもしれません。

(読売新聞メディア局編集部 李 英宜)

【紹介したトピ】
・生理休暇、察してほしくない
https://komachi.yomiuri.co.jp/t/2019/0928/915324.htm

井手口 直子(いでぐち・なおこ)
帝京平成大学薬学部教授 博士(薬学)。

帝京大学薬学部卒。日本大学薬学部講師を経て、2010年より現職。日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会常任理事、日本地域薬局薬学会理事。著書に「薬剤師のためのコミュニケーションスキルアップ」(講談社)など。ラジオNIKKEI「井手口直子のメディカル・カフェ」メインパーソナリティー。

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https://otekomachi.yomiuri.co.jp/news/20180128-OKT8T60893/