「うんざり」の声もあるのに…ハロウィーンがニッポンにハマッたわけ

サンドラがみる女の生き方

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今年もニッポンにハロウィーン(10月31日)がやってきます。もともとはアイルランドが発祥とされ、仮装をした子どもたちが、「Trick or Treat(お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ)」と近所の家を回る姿はかわいらしく、ほほ笑ましい光景です。ところが、近年、ニッポンのハロウィーンは「若者のバカ騒ぎの場」と化していることが問題になっています。昨年は、東京・渋谷のセンター街で軽トラックを横転させたとして逮捕者が出る事態にもなりました。

「好き」と「嫌い」が対立するハロウィーン

さて、近年の騒動も含めて、周りの日本人に「ハロウィーンってどう思う?」と聞いてみました。

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目立ったのは、「もともと日本の文化じゃないのに、一部の人がバカ騒ぎしていて見苦しい」「街中で暴れたり、ゴミを散らかしたり、もううんざり」という反対意見でした。その一方で、「ハロウィーンは楽しくて大好き」「今年はどんな仮装をしようか考えている」という容認派もいました。「どうでもいい」「べつに」という、いわば無関心な人はあまりいませんでした。

容認派の中には、仲間と都心に繰り出し、イベントに参加したり、雑踏の中でお祭りムードを楽しんだりするというのが、10月の恒例行事となっている人が多いようです。何か月も前から衣装を手作りしたり、その年に話題になった人やキャラクターに変装したりして、ひときわ注目を集めたいと考える人も少なくありません。

そういえば、2016年のハロウィーンには、金ピカの衣装をまとった「なんちゃってピコ太郎」があちこちにいました。その翌年は、2人組の男性を引き連れて「35億」を連呼している「中途半端なブルゾンちえみ」の姿も。ミニスカポリス、ミニオン、ウォーリーもすっかり定番となっています。

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筆者は、「変装して楽しく過ごさなければいけない」といったムードにどうもプレッシャーを感じてしまうタチで、ハロウィーンを心待ちにしていたことはありません。まあ、これも性格的なものなのですが、「今年はハロウィーンに誘われませんように……」と心の中で祈っていたら、いつの間にか本当に誘われなくなりました。

日本にいる外国人は、ニッポンのハロウィーンをどのように思っているのでしょう?

日本人と同様に、毎年のように仮装をして街に繰り出すことを楽しみにしている人がいる一方で、複雑な思いを抱えている人もいます。

ハロウィーンの盛んなアメリカやアイルランドの出身でも、「日本人が外国の文化を受け入れてくれているのはうれしいけれど、渋谷などのハロウィーンはバカ騒ぎに終始している」と冷ややかな目を向ける外国人も少なくありません。

なぜニッポンにハロウィーンが「ハマッた」のか

では、なぜ、もともとニッポンになかったハロウィーンに「ハマる」人が多いのかを考えてみると、それは単なる「若者のバカ騒ぎ」で片付けられるものでもないのかもしれません。

そもそも、日本人はかねてより「お祭り好き」です。祇園祭(京都)、阿波おどり(徳島)、ねぶた(青森)などの有名な祭りだけでなく、地域に根ざしたけんか祭りや奇祭があふれています。ユネスコの無形文化遺産になった「男鹿のナマハゲ」(秋田)や「宮古島のパーントゥ」(沖縄)などの来訪神も、いわば仮面・仮装の神々として知られています。だから、ハロウィーンのような「変身」には違和感がないのかもしれない、なんて想像してみました。

日本人は、日常の生活では、静かに、礼儀正しく、決められたルールを守る傾向が強いように思います。「ハレとケ」(「晴れ」は祭りなどの非日常、「褻(ケ)」は普段の日常)をキッチリと線引きすることも見過ごせません。「ハレの日」は、祝祭ムードで盛り上がり、「祭り」と聞けば血が躍るという人も多く、「その日のために、毎日必死で働いているんだ」と豪語する熱血漢もいます。祭り当日ともなれば、下帯を締め、はっぴ姿に身を包む男衆に、着流しに髪を結い、白粉を顔にはたく女性も多いでしょう。

そう考えてみると、祭り好きのニッポンでハロウィーンはいかにも「ぴったりマッチ」してしまったのだと思われます。確かに、渋谷でハロウィーンに大騒ぎしている人も、普段はまじめに会社員として働いていたり、大学に通って研究論文にいそしんでいたりします。縁もゆかりもない土地で、神輿や祭りに参加するのは敷居が高いという都会暮らしにとって、ハロウィーンは「メリハリある生活」を楽しむのにうってつけのイベントなのかもしれません。そして、仮装というアイテムのおかげで、普段とは違う自分を演出して、大胆になれるのかもしれません。

度肝を抜かれるハロウィーンの飾り

ある年のハロウィーンの時期のことです。朝、都内を歩いていたところ、いきなりガイコツさんに出会ってしまい、路上で「ひゃー」と叫んでしまったことがあります。驚くと同時に、なんだかうれしくなってしまい、撮影した画像をSNSにアップしました。

壁に飾られたガイコツさん(筆者提供)

この写真を見た人から、「日本人の高齢者はこういった飾りに慣れていないから、びっくりして心臓に悪い。こういう飾りはやめるべきだ」との声が複数ありました。考えてみると、日本にも仮装の文化はあるけれど、家にこのような過激な飾りつけをする文化はなかったはず。ある日突然、壁にガイコツの人形がぶら下がっていたら、道行く高齢者が度肝を抜かれるのも分かる気がします。

筆者の母国であるドイツの高齢者にも「ハロウィーンについてどう思うか?」と聞いてみました。「カトリックでもプロテスタントでも、ドイツにはハロウィーンなんてなかった。アメリカからやってきた商業的なお祭りに大騒ぎしているのは、どうかと思う」。ドイツでは、こんな批判的な意見もよく聞きます。

「ハロウィーンが市民権を得るようになってからまだ歴史が浅い」状況は、ドイツも日本も共通しています。ただ、ドイツの高齢者はハロウィーンの「奇抜な衣装」には驚きません。というのも、ドイツには長くて厳しい冬を打ち破るように、月にカーニバル(南ドイツでは「ファッシング」と呼ばれる謝肉祭)が行われます。その際の仮装は、ハロウィーンの過激さとよく似ているのです。筆者も子どものころはファッシングでドラキュラになったり、泥棒になったりと楽しみました。

ドイツでは、こうした“由緒正しい”カーニバルの存在があるがゆえに、ハロウィーンについては、「自分たちの宗派にはないお祭りを、アメリカがやっているからといって、それに乗る必要があるのか」と疑問視している人が少なくありません。結局、日本でもドイツでも、「ハロウィーン反対派」が行き着くのは、「なぜ関係のない日本(ドイツ)でハロウィーンをやらなきゃいけないのか」ということです。

それでも、ハロウィーンにちなんだイベントやグッズは街にあふれ、商業的な後押しも拍車をかけています。こうなると、個人の好き嫌いは関係なく、コトは進んでしまっています。でも、お祭りってそういうものなのかもしれませんね。

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/