お得な当日券でエンタメ楽しむ 「TKTS」日本初上陸

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ミュージカルの本場・米ブロードウェーなどで定着しているライブエンターテインメントの当日券の割引販売が、日本でも広まりつつあります。ブロードウェー発祥のディスカウントチケット販売店「TKTS(ティーケーティーエス)」がこの秋、日本初上陸となる店舗を東京・渋谷と大阪・なんばなどでオープンしました。ミュージカルや演劇だけでなく、歌舞伎や能などの伝統芸能、音楽ライブ、展覧会、体験ツアーなど幅広いジャンルの当日分と翌日分のチケットが、最大半額から2割引きで販売されています(一部、定価販売あり)。

当日券の割引販売は、定価で買った人に不平等感が生じやすいことなどから、あまり普及していませんでしたが、これからは、急に時間が空いた時に、ふらっと「TKTS」に立ち寄って、新しい楽しみに出会う。そんな暮らしが当たり前になるかもしれません。

東京、大阪に旗艦店がオープン

ニューヨーク・タイムズスクエアにある「TKTS」 撮影:Jeremy Daniel

ニューヨークのタイムズスクエアで必ず目にする、赤と白の「TKTS」ロゴ。その日に行われているブロードウェーやオフブロードウェーのミュージカル・演劇の当日券を、公式に割引販売する店です。この地で1973年にオープンし、現在はニューヨークで3店舗を展開。タイムズスクエア店は、広場の象徴的な存在になっています。

ユニークな形の日本第1号店 渋谷駅東口の「渋谷ヒカリエ」にあります

日本で「TKTS」を展開するのは、チケット販売サイト「カンフェティ」などを運営する「ロングランプランニング」(本社・東京都新宿区)。2015年から東京、大阪などでインバウンドにも対応した当日券販売店「チケッツトゥデイ」の事業を行っており、ここでの接客ノウハウや販売実績などがアメリカの「TKTS」の運営団体に認められ、日本での営業を開始しました。現在は「チケッツトゥデイ」の店舗を「TKTS」に切り替えるなどして、全国15か所で「TKTS」ブースを展開しています。

ふだん手が届かない公演もお得に体験

フロリダから旅行で来ていた女性が渋谷の店舗前で記念撮影

1号店は、複合ビル「渋谷ヒカリエ」のエントランスに常設されています。訪ねてみると、キャンピングカーのような車型ブースから、公演チケットの購入をサポートする「コンシェルジュ」の明るい声が響いてきました。この日は、店舗前で写真を撮る外国人観光客や、家族に頼まれて翌日の演劇のチケットを購入する人、ヒカリエ内で上演中のミュージカル『ボディーガード』の当日券について尋ねる人などの姿が見られました。

取り扱いチケットが書かれた掲示板を見ていた女性は「旅先でTKTSを見たことがあったので、日本ではどんな公演を扱っているのか、興味がありました。普段だったら手が届かない公演をお得に体験できたらうれしいし、知らなかったイベントも発見できそうで、楽しみです」と話していました。

販売する公演、自分でも見ているコンシェルジュ

カナダ出身のコンシェルジュ、マイケル・ウィドナーさんは「お客様を喜ばせることが好きなので、お客様が見たいものを提供したい」と流ちょうな日本語で話します。

丁寧に希望を聞き出すウィドナーさん

取り扱う公演は自分でも見て、会場への行き方や設備なども確認。お目当ての公演が決まっていない人には、その人の好みを聞き出して、最適な演目を勧めています。「どんなジャンルを見たい気分か? ほかに好きなショーがあるか? 今、笑いたいか、感動したいか?……と質問します」とウィドナーさん。今なら、楽しみたい人には『ボディーガード』、泣きたい人には、IHIステージアラウンド東京(東京・豊洲)で公演中の『ウエスト・サイド・ストーリー』がお勧めだそうです。

「せっかく店に足を運んで、私を信用してチケットを買ってもらうので、『損をした』とは思ってもらいたくないんです。劇場でお客様に偶然会ったときに手を振ってくれたり、見た方がわざわざ店まで来て『面白かったよ!』と言ってくれたりして、感激しています。その時、感想も必ず聞いて、次の説明に生かしています」

その日に取り扱うチケットは公式サイトに掲載されています。ウィドナーさんは「毎朝9時に情報を更新します。売り切れてしまったときはゴメンナサイだけど、代わりにほかの楽しいショーもお教えします。エンタメを気軽に体験するきっかけになったらうれしいですね」と声を弾ませます。

「当日券文化」を日本にも

アメリカでの運営団体との交渉などに携わったロングランプランニングの根本真子さんは「利用者はエンタメに詳しい人だけではなく、たまたま時間が空いた人や、『まだ知らない面白いことと出会いたい』と考えている人を想定しています」と話します。

店舗をオープンしてから、配券するイベント主催者の反応にも変化があったといいます。「当初は、『当日券を広く販売することで、残券があるというイメージがつくのでは……』と消極的な声もあったのですが、様々なメディアで取り上げられたり、TKTSを利用したお客様がSNSにうれしそうに投稿するのを目にされたりして、興味を持っていただけるようになりました。日本にも『当日券』で楽しむ文化を広げたい。ディスカウントするのは『売れ残っているから』ではなく、『まだ集客の可能性があるから』と思っていただけたらうれしいですね」と根本さんは期待しています。 

(取材/読売新聞メディア局編集部 李 英宜)