「教育は、女の子たちがピースフルに戦う手段」 フォトジャーナリスト・安田菜津紀さん 

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10月11日は「国際ガールズ・デー」。若い女性の権利を国際社会に広く呼びかける日です。毎年様々なイベントを開いている国際NGO「プラン・インターナショナル」は今年、活動国の一つである「グアテマラ」をテーマにしたドキュメンタリー映画の上映会を同日に開くほか、グアテマラを訪れたフォトジャーナリスト・安田菜津紀さん(32)の写真展を10月1日から開催します。安田さんにグアテマラでの思い出や写真展にかける思いを聞きました。

初めてのグアテマラ

中米メキシコの南に位置するグアテマラ。国名を聞くと、古代マヤ文明の遺跡を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。年中穏やかな気候であることから、「常春の国」と呼ばれる一方で、近年は米国を目指す移民集団の問題や、ギャングによる治安の悪化などで揺れている国でもあります。

安田さんは今年7月、プラン・インターナショナルの活動地であるグアテマラに初めて降り立ちました。成田空港から飛行機で約12時間かけて首都・グアテマラシティーに到着し、数日後、車でプルラ市を目指しました。

©Natsuki Yasuda / Dialogue for People

プルラは、山々に囲まれた人口5400人ほどの、のどかな町です。斜面には棚田のようにコーヒー畑やとうもろこし畑が広がり、農業をなりわいにした先住民が多く暮らしています。

男性優位の「マチスモ」に生きる

©Natsuki Yasuda / Dialogue for People

早速、取材に取り掛かった安田さんは、この町の女の子たちが置かれた厳しい現実を目の当たりにしました。

中米には、「マチスモ」と呼ばれている男性優位の価値観があります。プルラの女の子たちも、家事や子守のため学校に通えなかったり、望まない妊娠によって中途退学を余儀なくされたりと、教育すら受けられない環境にあるのです。

学校に通うと、「女なのだから勉強する必要はない」「どうせ彼氏を作りに学校に行くんだろう」と、父親や兄から心ない言葉を投げられる子も。また、学校では性教育や保健の授業も行われず、初潮を迎えたのに生理についての知識がないため、「血で汚れた服を周囲に見られるのが恥ずかしい」と学校を辞めたケースもあったといいます。

「性についての正しい知識を持っていないために、中学校に進むと妊娠してしまうケースも多い。学校に通っている子が望まない妊娠をすると、妊娠をさせた男性に非難の声は上がらず、女性だけが責められてしまうこともあるのです。日常のいたるところに、マチスモが染みついていることを痛感しました」と安田さんは振り返ります。

支援で広がる女の子たちの夢

でも、そういった過酷な状況下でも、目を輝かせながら将来の夢や希望を語ってくれる女の子たちがいました。プラン・インターナショナルの支援を受けた子たちです。

©Natsuki Yasuda / Dialogue for People

プラン・インターナショナルは、発展途上国で子どもたちへの性教育や、ジェンダー平等を促すプログラムを実施するなど、女の子たちの自立を支援する活動に取り組んでいます。

プラン・インターナショナルは、安価で質の良い生理用ナプキンを作りました。プルラ市でも、支給されたそうです。

出会った女の子たちはこれまで、女性に発言権がないことが当たり前で、父親に言われたことに違和感を持っても、言い返すなんて思いも及ばなかったそう。「(プラン・インターナショナルの)プログラムを受けるまで、シャイで全然話せなかったの。初めて発言してもいいんだって気づけたんだ」。輪の中で一番おしゃべりだった女の子の言葉が、安田さんは忘れられません。

安田さんは、女の子たちに将来の夢を尋ねました。「パイロット」「学校の先生」「心理療法士になって、性暴力に遭った子を支援したい」。照れながら口々に語ってくれたこれらの夢には、家に押し込められて暮らしていたら、絶対に気づけないであろう職業もありました。教育を受けたことで、将来の選択肢も広がったのです。

「まるで自分に価値がないかのように育ってきた女の子たちにとって、教育を受けて自立することは、最もピースフルにマチスモと戦う手段なのかもしれません」と、安田さんは目を細めます。

その一方で、「意識の壁は越えても、まだ貧困という経済的な壁が残っている。それをこれからどう乗り越えるか、考えていかなければいけません」とも指摘します。

「女の子の問題」ではなく、「人間の問題」ととらえてほしい

安田さんの写真展は、10月1日から16日まで、東京・六本木のAXISビルで開催されます。プラン・インターナショナルの活動の様子や、グアテマラの女の子たちの暮らしぶりを写し取った作品37点が展示されるほか、1日夜には同所で安田さんのトークショーも予定されています。

「写真を通して、彼女たちと会った気持ちになってほしい。そうして、彼女たちが背負ってきたものを『女の子の問題』ではなく、『人間の問題』ととらえてほしいと思います」

(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)

「国際ガールズ・デー」に合わせて、プラン・インターナショナルが日本で開催するイベントの詳細についてはこちらから。