「タンポン税」10%が日本で議論にならない理由

サンドラがみる女の生き方

公の場やメディアで「生理」について取り上げられることが多くなりました。ユニ・チャームは6月に生理用品を購入する時に紙袋で隠さない選択肢を提案するプロジェクト『#NoBagForMe(袋はいりません)』を開始。11月に、生理を擬人化して女性の苦労をコミカルに描く映画「生理ちゃん」が公開されます。生理をオープンに語れるようになると、社会はどう変わるのでしょうか?

「男の人に見られたらどうするの?」

今、生理にスポットが当てられているのは、ニッポンの生理を取り巻く状況がこれまで閉鎖的だったからにほかなりません。筆者が10代だったころ(1990年代)、生理に対する日本人とドイツ人のスタンスの違いにとても驚きました。当時、日本人の友達の家に遊びに行った時のことです。友達のお姉さんがバスルームの引き出しを開けっ放しにしていました。それに気づいたお母さんが、「中に入っているナプキンが見えちゃうでしょう。男の人に見られたらどうするの!?」とお姉さんを叱っていました。

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筆者が通っていたドイツの学校では、男女共学であるにもかかわらず、教室で女子生徒が、「タンポン忘れた。誰か、タンポンない?」と平気で聞いていました。そればかりか、別の女子生徒がタンポンを投げて渡し、教室にタンポンが飛び交うなんてことが日常化していました。だから、「男の人に見られたらどうするの!?」という発言の意味がよく理解できませんでした。

生理用品がトイレやバスルームの目に留まる場所に置いてあるのは、むしろ理にかなっています。ただ、「開けっ放しの引き出し」からも分かるように、ニッポンでは、生理についてオープンにすることは「品のよくないこと」とされてきました。生理用品のテレビCMが流れると、なんとなく気まずい雰囲気になる家庭もあったと聞きます。

使用済みの生理用品はどうするの?

このように、ニッポンでは長年、生理に関する情報そのものを男性から遠ざけてきました。そのため、最近、笑うに笑えないトンチンカンな対応をしてしまった“事件”も起きています。

今年6月に開催されたG20大阪サミットで、爆発物などによるテロ対策として、都内の主要な駅でゴミ箱が撤去されました。この際、一部の鉄道会社は、トイレ個室内にある生理用品を捨てるサニタリーボックスも併せて撤去してしまいました。しかし、G20が開催されるからといって、女性は生理にならないわけではありません。生理用品がいきなり不要になるはずもありませんし、使用済み生理用品のゴミも出ます。

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「G20とはいえ、サニタリーボックスまで撤去してしまうとはいかがなものか」。ニッポンの駅の困った状況について、イギリス人女性がツイッターでこうつぶやくと、議論が巻き起こりました。なによりも驚いたのは、決定権を持つ鉄道会社幹部の男性やテロ対策に詳しい専門家の男性が口をそろえ、「サニタリーボックスを撤去することで、そこまで反発があるとは盲点だった」と漏らしていたことです。つまり、彼らはサニタリーボックスを撤去する前に、「生理中の女性が使用済みの生理用品をどう処理するか」を考えなかったのです。

ドイツの「タンポン税」は19%

では、筆者の母国ドイツには全くこの手の問題がないかというと、そうとは言い切れません。「教室を飛び交うタンポン」の例でも分かるように、確かに生理に対して「オープンな雰囲気」はあります。しかし、生理用品にかかる税金がやたらと高いのです。

ニッポンも10月から消費税が10%になりますが、食料品と新聞は軽減税率が適用されます。ドイツの消費税は標準税率が19%ですが、食料品や生活必需品は軽減税率の対象で7%となります。ところが、ドイツではぜいたく品だとされている赤キャビアや切り花が税率7%なのに、生理用品は19%の税金がかけられているのです。軽減税率の対象となっていない状況に反発の声は高まっています。すでに、8万人以上の署名が集まっており、ドイツの連邦議会で議題に上がっています。

生理用品を巡って、ドイツではちょっとユニークな本も話題にもなっています。その名はズバリ「ザ・タンポンブック」。パッと見ると普通の本なのですが、表紙を開いてみると、中に付録のタンポンが15個詰まっています。ドイツで書籍の消費税率は7%。つまり、「生理用品が本を装って税率7%で発売された」というわけです。サブタイトルは「税金差別に関する対策本」。なかなかウィットが利いていて、風刺や皮肉が好きなドイツの国民性が見て取れます。

「男性は知らない」を知る

ニッポンでも生理用品は軽減税率の対象外です。多くの女性にとって必需品であるにもかかわらず、ドイツを含む多くの国で高い税率が課されています。生理用品の免税を求める人たちからは、理不尽な付加価値税との意味で「タンポン税」とも呼ばれます。現在、生理用品が非課税になっている国は、ケニア、オーストラリア、カナダ、インドなど一部にとどまっています。

タンポン税廃止が実現した背景には、活発な抗議運動や熱心な啓蒙活動があります。生理について、状況を変えるには広く知ってもらうことが大切なのです。ニッポンでは、生理用品を男性の目に触れないように遠ざけ、生理についての授業は女子生徒だけ集めて行っていました。男性の理解が及ばないのも無理はありません。とはいえ、企業も政治も行政も決定権のほとんどが男性に委ねられている状況を考えると、もっと生理について知ってもらうしかありません。

「生理について語らないのが女性として品のあること」という考えとはサヨナラする時が来ています。

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオ共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(ともに流水りんこ共著/KKベストセラーズ)など。
「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/