出産直前の解雇に泣き寝入り 非正規社員が安心して妊娠期を過ごせる会社とは

妊娠と仕事

シリーズ「妊娠と仕事」には様々な反響が寄せられている。非正規社員やフリーランスなどの立場で働く人たちの声を中心に紹介する。

非正規で働く妊婦からの声

派遣社員など非正規の立場で働く妊婦からは、出産直前の解雇の経験談が多数寄せられた。

《昨年6月に出産。妊娠7か月で派遣契約を打ち切られた。どんどん大きくなるおなかを抱え、つらかったが、行政の窓口に駆け込み、解決するまで闘った。後に続く女性のためにも、対会社だからと諦めず、理不尽なことには声をあげてほしい。(首都圏会社員、38歳)》

《フルタイムで働いていたが、妊娠8か月で派遣契約を更新してもらえず、事実上の解雇となった。あと2週間ほど雇われていれば、産休や育休が取れ、所得補償も受けられた。失職したので、出産数日前まで深夜アルバイトをし、産後すぐから働かなくてはならなくなった。10年たった今も状況はあまり変わっていない。なんとかしてほしい。(岡山県アルバイト、51歳)》

フリーランスで働く人からは、「十分な休息が取れず、母子が危険にさらされた」という指摘があった。

《最初に授かった子は流産した。医師からの安静の指示も守れなかった。会社員とは異なり、仕事を休むと収入がゼロになってしまう。事務所の賃料などを払うためには働き続けざるを得ず、事務所の床に横になるぐらいしか対処できない。その後も原因不明の高熱が出るなど、体調不良が続いた。子どもを産むことが難しいと感じる。(首都圏弁護士、41歳)》

妊婦を守る助産師からは、働く妊婦の「将来」を心配する声が届いた。

《医師は「赤ちゃんと仕事とどっちが大事なの?」と決断を迫るような言い方をすることがある。赤ちゃんを無事に産むことだけを考えれば間違っていないのだろうが、その後の女性の人生はどうなるのか。一度仕事を辞めてしまうと、なかなか仕事に復帰できない現実がある。同じ働く女性としていつも、胸が痛い。(横浜市助産師、41歳)》

安心した妊娠期 職場次第

妊娠中に転職した経験から、「会社によって対応が全く違う。疑問を感じるなら職場を変える方法もある」と感想を寄せた人もいる。

川崎市内に住む女性(30)は昨年8月、妊娠3か月で転職した。正社員から契約社員となったが、「理解ある職場のおかげで安心して妊娠期を過ごせた」と振り返る。

妊娠中、転職した女性は「今の職場なら、2人目を考えられる」と話す

転職前の職場は、人手が足りず、誰もが納期に追われていた。妊娠が分かった後も、重い段ボールを持ち上げる力仕事や深夜残業をこなし、つらくても「これまで通り働かなければ。迷惑をかけてはいけない」と思い込んでいたという。

まもなく疲労で起きあがれなくなった。妊婦健診でも検査の数値が悪化し、「とても体が持たない」と退職を決めた。そんな時、知人から転職を勧められた。

転職先は残業ゼロを掲げていた。全社員に月1回の面談があり、「無理していないか」を確認した上で仕事量を考える仕組みで、同僚もそれぞれ自分のペースで働いていた。「周囲への気兼ねや罪悪感が減り、楽になった」と感謝する。

女性はその後、妊娠糖尿病と診断されながらも出産直前までフルタイムで働き、2月末に出産した。産後約半年で復職した女性は「働きやすい職場だから、早めに復職したいし、できると思える。そういう職場に人が集まってほしい」と話している。

「お互いさま」 受け入れる社会に

妊娠と仕事の両立に悩む女性がなぜ多いのか。女性のキャリア形成に詳しい日本女子大学教授の大沢真知子さんに尋ねた。

国や企業は「育児休業を取った女性の職場復帰率は9割」などと言いますが、妊娠した女性全体でみれば、出産後も働き続ける女性は今でも4割ほど。育児休業が取れるのは、一部の恵まれた女性に限られているという印象です。

一方で、妊娠が分かってから産前休業にたどり着くまでに退職している女性が3割もいます。妊娠で退職する女性を「子育てに専念したい人もいるから」などとしてごまかし、社会全体がこの現実に向き合ってきませんでした。

妊娠退職した女性に理由を尋ねた民間の調査があります。「家事や育児に専念したくて自ら仕事を辞めた」という人ももちろんいますが、「仕事と両立できないと思った」と答えた人が2割以上います。

なぜ両立できないと感じたかを具体的に尋ねると「勤務時間が(長すぎるなど)合わなかった」「自分の体力が持たないと思った」「妊娠・出産に伴う体調不良」などが挙がります。女性活躍を進めるなら、しっかり現状を調べ、対策を考えるべきです。

日本の職場では、男性にも女性にも常に全力で働くことを求めてきました。妊娠するとそれまで通り仕事に全力を注ぐことは難しくなり、多くの妊婦が無理をして働くことになります。無事出産までこぎ着けても、「職場に迷惑をかけて産ませてもらった」「妊娠と仕事の両立はこりごり」と感じる女性は多く、次の子どもを考えることができません。

妊婦だけに甘い制度を作るという意味ではありません。介護や家族サービスなど、様々な理由で「一時的に働くペースを落とす」ことができ、それを「お互いさま」と受け入れ合えるよう、男性も含めて働き方全体が変わる必要があります。

(読売新聞社会保障部 大広悠子)

【あわせて読みたい】

流産の危険あっても点滴を打って出社 非正規で働く妊婦の現実

フリーランスの妊婦に産休制度はない? 早期の復職で産後うつに