選挙事務所に潜入 人生かけたロマンを感じる

参院選・辛酸なめ子が行く(中)

        イラスト・辛酸なめ子

21日に投開票が行われた参院選。社会保障や改憲、消費増税などを争点に舌戦が繰り広げられました。選挙戦はどう行われ、どんな人々が携わっているのでしょうか。読売新聞長野支局の企画として、独特の視点で世間を描くコラムニスト、漫画家の辛酸なめ子さん(44)に長野選挙区(改選定数1)の選挙現場を歩いてもらいました。

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裏方スタッフや支持者が集まる選挙事務所。7月上旬、一般市民には少し縁遠い選挙事務所を初めて訪問しました。

長野選挙区のある候補者の事務所に着くと、屋外の水道でなぜかカブを洗っていたスタッフの女性が「こんにちは!」とあいさつ。大量のタケノコを前に「これから煮るんだよ」と話しかけてきたスタッフもいて、意外にアットホームな雰囲気です。

椅子に腰掛けて壁に貼られた大量の推薦状や必勝祈願ポスターを眺め、手作りのお菓子をつまみ、候補者のチラシを読んで……。もう少し殺伐とした雰囲気かと思っていましたが、ついのんびりしてしまいます。

ふと机に目をやると、アジサイなどの生花が。いかなる時でも花を  でる心を持つことが大切だと教えられます。

選挙事務所内のキッズスペースを取材する辛酸さん

事務所の奥には子連れスタッフらのため畳敷きのキッズスペースがあり、今っぽさを感じました。無邪気な子どもの姿は、疲れた候補者やスタッフを癒やしてくれそうです。

別の候補者の事務所はパソコンや電話が並び、オフィスのようです。壁には遊説スケジュールが細かく書かれた紙が貼られ、多忙な様子がうかがえます。

陣営関係者から飛び出す名言

選挙を支えるベテランの陣営関係者とも話ができました。ある候補者の陣営関係者は「中傷されることもあり、選挙をやると人を信じられなくなる」「選挙は国取り合戦みたいなもの」。メモすべき名言がどんどん飛び出します。

それでもなぜ選挙に携わるのかと問うと、「候補者を国政に送り出したい、その一心だ」。選挙期間中は睡眠時間も4時間程度のようで、いかに多くの人が快く手伝ってくれるかは、候補者の人徳次第なのかもしれません。

別の候補者の陣営関係者は「負けたら俺の能力のなさ。勝てば皆さんのおかげ」「朝から怒っているか謝っているか。これが選挙ですよ」と真剣な表情で語ります。

政治の裏も知っていそうな人たちへの興味がわいてきました。厳しい戦いの中、言葉の力で自分を鼓舞しているようでした。「落選したら武士のように腹を切る」という言葉も飛び出し、政治は人生をかけたロマンなのかもしれません。

候補者の肩には、様々な人間の熱い思いものっているようです。まさに負けられない戦いです。

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辛酸なめ子が行く(上)

辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)
コラムニスト・漫画家

 1974年生まれ。独特の視点で世相を分析するスタイルが人気。著書に「大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ」など。