モデルの夢に挑戦 障害者が前向きになれるレッスンとは

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真剣な表情でウォーキングのレッスンを受ける「スマイルウォーキング倶楽部」の生徒たち(東京都新宿区で)

発達障害や知的障害のある人たちが、ファッションショーのウォーキング技術のレッスンを受ける教室が各地で開かれている。人前で美しく歩くことで自信が生まれ、前向きに生きる力になるという。多様性が注目される中、海外では、モデルとして活躍する人も生まれている。

発達障害や知的障害のある生徒がウォーキングを練習 

「もっとゆっくり歩いて!」「ほら、前を見て!」

東京都新宿区のスタジオ。厳しい声が飛ぶ中、ダウン症や発達障害のある生徒約20人が、布の軽やかさを表現しながら歩くという課題に挑戦していた。

指導するのは、パリコレクションに出演経験がある元モデルの高木真理子さんだ。知人からの依頼がきっかけで、2016年に障害者向けのウォーキング教室「スマイルウォーキング倶楽部」を設立した。現在、東京都内や仙台市などで月に数回レッスンを開いており、約80人の生徒が登録している。

この日は、商品に見立てた布をPRするモデルという設定で、ワンピースやジャケットでおしゃれした生徒が、3人1組で音楽に合わせて息を弾ませていた。自閉症スペクトラム障害のマナさん(25)、ダウン症のイサオさん(31)は「レッスンの中でできなかったことを乗り越えていくことで前向きになれた」と口をそろえる。知的障害があるモエカさん(31)は、昨年化粧品ブランドが開催したショーに出演。「プロのモデルとして仕事ができるようになりたい」と意気込む。

年に数回、生徒がモデルを務めるファッションショーも開催しており、高木さんは「障害があっても、これだけのステージができることを多くの人に見てもらいたい。夢を与える存在になってほしい」と期待を込める。

静岡県島田市のモデルスクール「LB―モデルスクール」でも、障害者クラスを開設している。現在、10~40代の約10人がウォーキングの指導を受けている。

プロのモデルを目指す人、仕事の息抜きや姿勢をよくするためなど目的は様々。かかととかかとをつけ、ひざの裏を伸ばして真っすぐに立つ基本姿勢からターンの練習まで、毎月2回の練習内容は健常者の生徒と同じだ。スクール代表の吉田ちかさんは「レッスンを始めてから、自分が良く見える表情を鏡で確かめるようになった生徒もいる」と、意識の変化を感じている。

海外で活躍するダウン症のモデル

海外では、こうした動きの一歩先を進む。様々な障害や疾患を持つ人たちの生き生きとした姿を発信しようと、アパレル会社がモデルとして積極的に起用し始めている。

米国の化粧品ブランド「ベネフィット」は今年1月、北アイルランド出身のダウン症のモデル、ケイト・グラントさんをブランド大使に起用した。ブランドのインスタグラムにはグラントさんがアイライナーを手に持つ写真が掲載されている。同社は「彼女のフェイスブックを偶然見て魅了された。新たなキャンペーンにも一緒に取り組みたい」という。

ベネフィットの広告に起用されたダウン症のモデル、ケイト・グラントさん(ブランド提供)

米アパレルの「アメリカンイーグル アウトフィッターズ」は昨年、下着ブランド「エアリー」のモデルにダウン症の人や車いすを使用している人などを起用。ありのままの美しさや個性をたたえるキャンペーンも展開し、多くの女性の共感を集めた。

一方、日本モデルエージェンシー協会によると、「日本では、障害のある人が協会加盟のモデル事務所に所属している例はほとんどない」という。ただし、「来年の東京パラリンピックの開催で、多様な社会を作るという機運が盛り上がれば、モデルとして仕事をする機会が増えていく可能性がある」としている。(読売新聞生活部 福島憲佑)