研究と育児で経済的負担も…ロレアルが女性科学者に奨励賞

News&Column

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を受賞した(右から)藤本さん、渡部さん、岡田さん、岡畑さんの4人

 化粧品大手・日本ロレアル(東京都新宿区、ジェローム・ブリュア社長)はこのほど、2019年度 の「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者4人を発表しました。フランス大使公邸(東京都港区)で行われた授賞式では、結婚・出産を経験した女性科学者が「女性としてのライフイベントを経験しながら、限られた時間でもコツコツ続ければ結果を出せます」と語るなど、仲間や後進に向けてエールを送りました。

若手女性科学者のさらなる活躍にエールを送る日本ロレアルのジェローム・ブリュア社長(フランス大使公邸で)

 この賞は、日本の若手女性科学者の研究活動を奨励するため、2005年に日本ロレアルが、日本ユネスコ国内委員会と協力して創設し、今年で14回目。毎年、「物質科学」または「生命科学」の博士後期課程在籍者、同課程に進学予定の女性科学者を対象に応募を受け付け、各分野で2人ずつ選考して、それぞれに奨学金100万円を贈っています。

科学分野に残る「ガラスの天井」

 今年度の受賞者の1人、甲南大大学院の岡畑美咲さんは、生後6か月の子どもを連れて授賞式に出席。ステージ上で行われたインタビューで、「科学者としてのキャリアアップとなる博士後期過程の時期は、女性の妊娠、出産、育児の時期と重なり、限られた時間の中で研究活動をしなければなりません」と自身の経験を交えて説明しました。

妊娠や育児を経験しながら、研究活動を続ける岡畑さん

 岡畑さんは「博士課程に在籍している学生ですので、自分の学費と子どもの保育料をどちらも支払っており、ほとんど何も残らない状態です。これでは、出産や育児をしながら、研究を続けるのが難しいと考える女性も多いはずです。女性科学者がもっと活躍できるように、社会的な面から支援やフォローをお願いしたいと思っています」と話していました。

 岡畑さんのほかには、産業技術総合研究所の藤森詩織さん、東北大学大学院の渡部花奈子さん、神戸大大学院の岡田萌子さんが受賞。3回目の応募で受賞が決まった藤森さんは、大学院や研究機関で女性の割合が少ないことに触れたうえで、「私が行っている基礎研究は、一般に理解してもらうのが大変難しい分野です。こうした賞を通して基礎研究の意義を広く知ってもらい、研究が活発に行われるようになり、科学の発展につなげていきたいと考えました」と語っていました。

 日本ロレアルによると、科学の分野では、女性のキャリアアップを阻む「ガラスの天井」が依然として存在しており、世界的な研究者のうち女性の割合はわずか29%、学術機関で上席の職位に就いている女性は11%、女性のノーベル賞受賞者は3%にとどまっています。

受賞者それぞれに、研究活動のきっかけや成果についてインタビューが行われました

【受賞者一覧】(敬称略)

〈物質科学〉

 藤森 詩織(27歳) 産業技術総合研究所触媒化学融合研究センター特別研究員(京都大学大学院理学研究科化学専攻卒) 
 世界で初めてベンゼンのアニオンの炭素を重い元素に置き換えた「重いフェニルアニオン」の合成と性質を解明

 渡部 花奈子(28歳) 東北大学大学院工学研究科化学工学専攻 助教(東北大学大学院工学研究科化学工学専攻卒) 
 世界で初めて外部刺激により構造が自在に変化する新しい微粒子材料を開発 

〈生命科学〉

 岡田 萌子(27歳)神戸大学大学院農学研究科生命機能科学専攻 
 野生コムギとマカロニコムギの雑種が育たない原因遺伝子の特定と機能の解明に向けた研究実績を評価

 岡畑 美咲(26歳)甲南大学大学院自然科学研究科生体調節学  
 環境の酸素情報が温度受容ニューロンの神経活動を制御するメカニズムを解明