おそれずにスケールアップしよう!国際女性ビジネス会議リポート

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 国内外で活躍中の働く女性が集まる「第24回 国際女性ビジネス会議」(イー・ウーマン主催)が7月7日、東京・台場のホテル「グランドニッコー東京 台場」で開催されました。24回目となる今年のメインテーマは「スケールアップ」。会社で昇進したり、事業を拡大したりするためにはどんな視点が必要なのか、女性の働き方やリーダーシップはどうあるべきかなど、様々なテーマについて活発な議論が交わされました。大手小町は同会議のスペシャルサポーターとして参加しました。

 同会議は、プロフェッショナルとしての誇りを持ち、仕事で貢献したいと考える女性たちに、必要な知識や技術を身につけてもらい、同じ志を持つ人と積極的に交流できる機会を提供する目的で、1996年に始まりました。会議には、働く女性だけでなく、男性や高校生・大学生らも参加していました。

「七夕に願い事はしない。実践して成就する」

 冒頭、イー・ウーマンの佐々木かをり社長が「今日は七夕、願い事をする日ですが、私たちはしません。願い事を実践して成就するんです」とあいさつ。メインテーマである「スケールアップ」について、「一般的に女性は、『いいの、私は』と、スケールアップをしてこなかった。今日の会議を通して、自分の考えていること、やっていることが、スケールアップにつながるのかを考えてほしい」と参加者に呼びかけました。また、安倍首相がビデオメッセージで、「女性活躍の原動力になる会議。世界に発信してほしい」とエールを送りました。

 会議は、前半と後半の2部構成で行われました。前半は、基調講演やトークショーが中心。後半は、テーマごとに分かれて、参加者を巻き込んだ円卓会議が開かれました。

挑戦すると、見える景色が変わる

 基調講演では、各界でリーダーとして活躍する女性が相次いで壇上に立ち、スケールアップとはどんなことを指すのか、どんな気持ちでチャレンジしていったのかについて語りました。

 女性の社会参画が進んでいるスロベニア共和国のシモナ・レスコバル外務副大臣は、女性が意思決定のテーブルにつくことの重要性について触れ、「自分の強みに自信をもってほしい」とエールを送りました。

 野村アセットマネジメントの中川順子社長は、スケールアップした後のイメージが描きにくいことについて、「挑戦すると、見える景色が変わってくる」と語り、「チャンスがきたら、おそれずに取り組んで」と激励していました。

真剣な表情で講演を聴く参加者

「これをやりたいという信念を持つ」

 また、マインドの持ち方についても語られました。ダイヤ精機の諏訪貴子・代表取締役は2004年、父親の逝去に伴い、父親が経営していた町工場を引き継ぎました。社長就任当初、社員の理解が得られなかったり、リーマン・ショックなどの困難にぶち当たったりした時に、「ネガティブな言葉を全部消した」と振り返り、「人から何を言われても『こうなりたい』『これをやりたい』という信念を持つことが大切」と強調しました。

 証券会社に勤める女性(31)は、諏訪さんの基調講演を聞き、「仕事で失敗した時など、日々不安に感じていたり、逃げ出したくなったりすることがあるが、そういう考え方があるのかと、とても元気づけられました」と話していました。

政治の在り方

 女性がスケールアップし、思い切り働けるようになるには、パートナーである男性のサポートが欠かせません。野田聖子衆院議員(自民党)は、有志議員が男性の育休義務化を目指す議員連盟を設立したことについて触れ、「男性上司は育児をしてこなかった世代だから、どんなことをすればいいのかわからない」と指摘。「法律を作り、育休を義務化することで、男性上司も変わる。若い人はもとより、マネジメントする人の意識改革が必要」と、新しい法律を作ることで古い思考を変えていこうとする政治の在り方について話しました。

男性のトークショーも

 パワフルな女性リーダーの基調講演の後、ダイバーシティー(多様性)が企業成長にどう関係しているのか、男性経営者ら3人によるトークショーも行われました。

 ネスレ日本の高岡浩三社長は、ダイバーシティーについて、「改革を起こす時に必要な視点」と指摘。帝人の鈴木純社長も、ダイバーシティーが、企業が成長する上での「手段になっている」と話していました。

『変えたい人』ばかりで『変えられる人』がいない

 カルビーの松本晃・元会長は、女性社員を執行役員や管理職に登用してから会社の利益が上がったとし、「みんなやればいいのに、やらない。取り組むと損をする人がいるから。女性を増やせば男性が減る。だから反対が起きる」と説明。「トップダウンですべきことだが、この会議には、『変えたい人』ばかりで『変えられる人』はほとんど来ていない。(企業では)ダイバーシティーの優先順位が低い」と指摘しました。

なぜ?女性活躍が進む金融業界

 日本の企業社会では、女性役員がなかなか増えませんが、そうした中で、女性役員が次々と誕生しているのが金融業界です。特に証券分野では、その動きが活発だといいます。金融業界で活躍する女性リーダーたちによるトークショーでは、メリルリンチ日本証券の社長を務めた経験を持つ小林いずみさん(ANAホールディングス社外取締役)が、その理由について「日本の証券会社は外資との競合が厳しく、優秀な女性がみな外資に移ってしまった。それでプレッシャーがかかったから」と分析していました。

 大和証券グループ本社の田代桂子副社長は、「『今の働き方なら続けられない』と言ってやめていった女性社員が出たので、当時の社長が社員の退社時間を早める取り組みをした」と話し、誰もが働きやすい環境を作ることが、優秀な女性社員の登用につながるとの認識を示しました。

美術界のいびつな構図

左から津田大介さん、上野千鶴子さん、治部れんげさん

 それでは、女性の数が増えれば、それはジェンダー平等につながるのでしょうか。「ジェンダー平等が大切な理由」と題するトークショーでは、ジャーナリストの津田大介さんが、芸術監督を務める芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に出品するアーティストの男女比を半々にしたことについて言及。「美大生の7、8割は女性なのに、美術界には男性作家が多い。選ぶのは男性教員だからでしょう。同じく美術館長も男性が多い。学芸員は女性の割合が高い」といびつな構図を指摘しました。

 男女同数にしたことには、女性からも反対の声があがったそうですが、「これは女性のためではなく、公正な社会の実現、行政の理想達成のためにやっている」と、その意義を強調していました。

女を増やしてどんな社会にしたいのか?

 女性の割合を一定数高めるこうした動きについて、社会学者の上野千鶴子・東大名誉教授は「女を増やすことは表立ってノーとは言えない。ただ、女を増やしてお金もうけという話はしてほしくない。『女を増やして、どんな社会にしたいのか』が大切」と述べました。

 ジェンダー平等が求められるのは、仕事の場面だけではありません。ジャーナリストの治部れんげさんは最近、自分の子供が通う小学校では、クラスの出席番号が男子が先、女子が後になっていることを知ったといいます。「この会議の出席者は活躍している人たちばかりだから、差別や不平等に気づかないかもしれない。でも、実は足元にもあるということを知っていてほしい」と訴えました。

宇宙までスケールアップ

 メインテーマ「スケールアップ」に合わせて、宇宙を舞台にしたビジネスを展開している企業のCEOらも登壇しました。人工衛星の残骸など、宇宙に散らばるゴミを集める事業や、人工的に流れ星を作る事業などが紹介されました。

小池百合子東京都知事

 会議には小池百合子・東京都知事も駆け付け、「ともにスケールアップをしていきましょう」と参加者に呼びかけました。

ティール組織の取り入れ方

 午後からは、ダイバーシティー経営やリーダーシップなど、様々なテーマに分けて円卓会議が開かれました。出席者からも活発な質問が出て、熱い議論が交わされました。

 次世代の組織モデルとして注目を集めている「ティール組織」に関する円卓会議では、組織のあり方について議論が交わされました。

カゴメの有沢正人CHO(人事最高責任者)

 社長と従業員がいる普通の会社とは違い、ティール組織の会社は、指示命令系統がなく、働く人たちが信頼関係で結びついているのが特徴です。

 この仕組みを自社に導入しようと改革を進めているカゴメの有沢正人CHO(人事最高責任者)は「情報量が多いところに権力が集中する。だから、情報の徹底的な透明化を図りました。社長の年収も役員報酬も開示。そして人事プロセスを透明化し、評価と処遇をクリアに。併せてテレワークなどの働き方改革も行いました。社長や専務という呼び方をやめて『何々さん』と呼ぶようにしました」と自社の取り組みを紹介しました。

 会社の情報開示を進めることについては、出席者から不安の声も上がりましたが、「ティール組織」(フレデリック・ラルー著、鈴木立哉訳、英治出版)の解説に携わった東京工業大リーダーシップ教育院の嘉村賢州特任准教授は「出せない情報があるなら、この部分のこの情報はこういう理由で出せない、ということを明らかにすることが大切」と話しました。

円卓会議「20代・30代からのリーダーシップ」の会場は、多くの参加者の熱気に包まれていました

ESG投資に後れをとっている日本企業

 従来の財務情報だけでなく、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資「ESG(社会的責任)投資」が注目されるようになり、投資家が、女性役員の数と企業成長率の関係についてもチェックをする動きが出ています。

左から、佐々木かをりさん、熊谷亮丸さん、吉高まりさん、江田麻季子さん

 ESG投資に関する円卓会議では、大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストが、女性が高い役職に就いている企業では、高い投資パフォーマンスを上げていると報告。一方で、世界経済フォーラムの江田麻季子日本代表は「『女性活躍が大切』と言いながらも、その数や地位など指標がバラバラ」と、日本企業の問題点を指摘しました。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の吉高まりチーフ環境・社会ストラテジストも「まずは情報開示をすることが大切だが、日本企業はできていない。『あまりに低い数字なので、もっと良くならないと出せない』という人もいるが、低さよりも、それを改善するためにどんなことをしたのかが大切」と話していました。

 こうした問題について、イー・ウーマンの佐々木かをり社長は、自社で実施している、ダイバーシティーの深度を数値化する調査「ダイバーシティインデックス」を紹介。数値化の大切さを話しました。

OTEKOMACHI(大手小町)は同会議のスペシャルサポーターとして参加しました

 会議の最後は、参加者同士の交流を図るネットワーキングパーティーの時間。ビュッフェを楽しみながら、名刺交換をしたり、講師により具体的に質問をしたりと、参加者一人ひとりが意欲的に過ごしていました。

 「スケールアップ」がメインテーマだと聞くと、その言葉に尻ごみしてしまいそうになりますが、成功した女性の話を聞いて、勇気づけられた人も多かったのではないでしょうか。まずは、目の前の問題一つひとつに取り組みながら、周囲の人間関係や組織をより良くしていくために自分は何をすべきなのかを、改めて考えさせてくれる会議でした。
(取材・文/山口千尋、写真/安藤光里)