再就職「35歳の壁」は本当? ブランク期間に取り組むべきこと

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 出産や子育て、夫の転勤などを理由に退職し、いずれは再就職しようと思っていても、年齢を重ねると、「もう雇ってもらえないかもしれない」と不安を感じてしまいがちです。35歳になると再就職が難しくなるという「35歳の壁」説に惑わされ、再就職をあきらめる人もいるようです。しかし昨今は、年齢にしばられず、再びキャリアを築くことに成功した人も見られるようになってきました。仕事も子育てもあきらめずに自分らしい再出発を果たした女性と、女性の再就職問題に詳しい専門家に、キャリアを中断している間にどんなことをすべきかを聞きました。

ゆるやかな“助走期間”を

 東京都内に住む大渕久恵さん(38)は今年5月から、保育園などを運営する会社で正社員として働き始めました。子供は、小学2年生と保育園の年中組の2人です。

 大渕さんの担当は広報業務。渋谷のオフィスで採用のための広報活動や、社内のコミュニケーションを図るための社内広報を主な仕事として働いています。

 新卒で働き始めてから、夫の海外転勤などを理由に2度、退職を経験したという大渕さん。2度目の退職後、仕事から離れていたブランク期間は10年ほどですが、退職してから正社員として再就職するまでの間に緩やかな“助走期間”を設けていました。

自分ができるところから始める

 夫に帯同してブラジルで暮らすことになった大渕さんは、出産をきっかけに海外で出産する妊婦の会に参加、コミュニティを作り、仲間とともに現地の人たちとの交流会や、パーティーを企画、積極的に外へと出かけていったのです。その後、SNS上に、現地での子育ての話や不要になった子ども用品のセカンドセールなどについて、情報交換できるグループ「サンパウロママ」を一人で立ち上げると、多くの反響がありました。「たくさんの駐在妻さんたちと出会ううちに、“本当は働きたい”という駐在妻がたくさんいることも分かりました」

 そんな女性たちの背中が押せればと考えて、ウェブサイト「駐妻ちゅうづまキャリアnet」を仲間とともに作り、駐在員の妻でありながら自分の道を切り開き、活躍している人たちを紹介する記事を書いて、発信を始めました。

 すべてボランティアで行ったこうした活動が、帰国後の就職に役立つことになったのです。

昔の職歴より、何をしていたのかが大切

 37歳で日本に帰国した大渕さんは、ブラジルでの活動を見ていた知り合いなどから「一緒に仕事をしないか」と声をかけられ、今の会社に入社が決まりました。ただ、10年ぶりの仕事に無理は禁物と、まずは週3日、午前10時から午後4時までのパート職として入社し、少しずつ“働く生活”に体を慣らしていったといいます。「仕事をしていなかったブランク期間中は、40歳までに何ができるかを常に考えながら動いていたように思います」と大渕さん。

 ブランクも長かったため、昔の職歴を書くよりも休職期間にしていたことを評価してくれるところを探そうと思って動いたそう。「再就職の壁を乗り越えるには、年齢ではなく、ブランク中にその人自身がどんな過ごし方をしてきたのかが大切ではないでしょうか」と大渕さんは話しています。

再就職のキーワードは「ためす」「つながる」「思い描く」

 大渕さんのように、ブランクを経て復帰を考えている場合、どんなことに取り組むといいのでしょうか。ブランクのある女性たちの再就職支援についてまとめた冊子「『ためしながら、つながりながら作る』私のキャリア」を発行したリクルートワークス研究所の主任研究員・大嶋寧子さんは、「35歳を過ぎても再就職ができる人は少しずつ増えてきている」と言います。

 再就職が成功する人の特徴として、大嶋さんは「やったことのない仕事でもチャンスが来た時に『ためしにやってみる』、地域活動やボランティアなどで『誰かとつながる』、そして、『将来の自分を思い描く』。この三つができている人に成功者が多いようです」と分析します。

 再就職の道を切り開くのは結局、自分次第。「35歳の壁」となっているのは、この三つがうまくできない自分自身なのかもしれません。

(取材・写真/フリーランス記者 宮本さおり)

宮本さおり(みやもと・さおり)
フリーランス記者

 元地方紙記者。結婚により退社、主婦歴15年。5年間の専業主婦生活を経てフリーランスのライター・記者に。夫の転勤帯同で地方、海外含めて6回の転居を経験、その間、2人の子どもを授かり「子育ても仕事もダブルに楽しむ」をモットーに地道に執筆活動を続けている。バリキャリでもゆるキャリでもない「ナチュラルキャリア」の拡散を願い、自らも実践にチャレンジ中。