シュワッと泡立つスパークリング日本酒 今年のベスト3

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上甲鉄撮影

 梅雨のうっとうしさや夏の暑苦しさを追い払ってくれる、シュワッと泡立つスパークリング日本酒。世界最大級の日本酒品評会「SAKE COMPETITION 2019」の表彰式が6月に行われ、スパークリング部門のベスト3が発表されました。洋風の食事にも合うので、日本酒は普段あまり飲まないという女性たちにもおススメです。

 この品評会は、銘柄が分からないようにして審査する「実力本位のガチンコ勝負」として、海外にも知られています。隠れた銘酒の発掘に定評があり、地酒ブームの火付け役とも言われる、はせがわ酒店の代表、長谷川浩一さんらが審査員を務め、純米酒や海外出品酒などの部門ごとに審査が行われます。そのうち、華やかで暑い季節にぴったりのスパークリング部門の上位三つの銘柄について、受賞した酒蔵の関係者と長谷川さんに聞きました。

1位はクラシックな実力蔵

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 1位は、秋田清酒(秋田県大仙市)の「出羽鶴 awa酒 明日へ」(5400円税込み=720㍉・㍑)です。

 細かく勢いのある泡に、ほんのり漂う吟醸香。するっと飲める淡麗辛口ですが、ほどよい酸味や苦みが口の中に余韻を残します。乾杯や料理に合わせるだけでなく、一人でちびちび楽しむのも良し。泡が抜けてもおいしくいただけそうです。

 秋田清酒・伊藤洋平社長「去年と比べ、ドライなだけでなく、味の広がりを感じさせる柔らかさも意識しました。今後は甘みをどう感じさせていくか、工夫していきます」

 長谷川さん「今年のコンペで、各社の最高級ラインが集まるスーパープレミアム部門でも2位に入った酒蔵です。力のあるクラシックな老舗という印象で、華やかな感じのお酒が特に上手です」

2位は器用なテクニシャン

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 2位は、来福酒造(茨城県筑西市)の「SPARKLING RAIFUKU」(1890円税込み=750㍉・㍑)です。

 多くの酒蔵はシャンパンと同じく、酒が発酵するときに出る炭酸ガスを瓶内に閉じこめる製法で作っていますが、こちらは完成した酒に外からガスを注入しています。ガスの量が調整できるので、ほどよく爽快な泡が楽しめます。フルーティーな香りに、ほんのり米の甘さも感じさせます。ただ、しつこくあとを引くことはなく、さっぱりとして、洋食にも合いそうです。

 来福酒造・藤村俊文社長「シャンパンを意識してドライな味を目指しています。今年は強すぎも弱すぎもせず、乾杯の場面に最適な泡を実現できました」

 長谷川さん「いろいろ積極的にチャレンジして、何をやっても器用にこなす。何でもござれの実力派です。元の日本酒がうまいから、ガスを足してもやっぱりおいしい」

飲みやすさなら第3位

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 第3位は、八鹿やつしか酒造(大分県九重町)の「八鹿 スパークリング Niji」(3240円税込み=720㍉・㍑)です。

 勢いのある泡に、ほどよい酸味とドライな口当たり。日本酒になじみの薄い人にも分かりやすい美味しさの一本です。

 アルコール度数が比較的弱めで、飲みやすいのも特徴です。スパークリング日本酒は、シャンパンより少し強めの13度程度のものが多いのですが、こちらは8度。強めの缶チューハイと同じです。

 八鹿酒造・麻生益寛専務「若い人がビールやシャンパンではなく、これで乾杯してほしいと思って作っています。スパークリングを発売して3年目ですが、だいぶ安定して作れるようになってきました」

 長谷川さん「焼酎大国の大分でがんばっている。特にスパークリングに力を入れていて、東京でもいろいろな店で見かけます」

番外編

 受賞銘柄とは別に、長谷川さんに愛飲の銘柄も教えてもらいました。「安くて美味しい。シャンパンより、断然お買い得」という2本です。

 「美丈夫 舞 うすにごり」(高知県田野町・濵川商店、1188円税込み=500㍉・㍑)
 「醴泉れいせん 活性にごり本生 純米吟醸」(岐阜県養老町・玉泉堂酒造、1145円税込み=500㍉・㍑)

 どちらも不自然な香りや濃厚さに縁のない、品の良い落ち着いた飲み味です。

 スパークリング日本酒は20年以上前から存在してはいましたが、全国に広く知られるきっかけとなったのが、宝酒造が2011年に発売した「みお」です。甘口でアルコール度数も低く、炭酸飲料のような飲みやすさが人気となりました。最近は若い世代や女性、外国人に向けた日本酒の入門として、シャンパンを意識した辛口タイプが次々と登場しています。

 ただ、長谷川さんによれば、「実質的には、まだ生まれて間もないジャンルなので、製法や味のスタンダードが定まっていない」そうです。それだけに、「超大型新人」が突然現れたり、想像できないような変化球が投げ込まれてくる可能性もあって、ウォッチするのが楽しみなジャンルです。

(読売新聞経済部 庄野和道)