分娩キャンセル待ち!? 悲痛な声続々

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 お産は女性にとって人生の一大イベント。でも、最近は、妊娠の喜びもつかの間、どこで産むか、早く施設を予約しなければと悩むケースが少なくないようです。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、施設のキャンセル待ちについての質問や、医療者から「そんな態度なら他の病院で産んだら?」と言われたなどの声が寄せられています。何か対策はあるのでしょうか。

 トピ主のScape」さんは婦人科で「妊娠第5週」と診断されました。その医院でお産を扱っていないため、別の産科専門の医院に分娩ぶんべんの予約を打診したところ、出産予定日の月は「分娩の予約がいっぱいで、キャンセル待ちになります」と言われたそうです。

 「みなさま、分娩のキャンセル待ちのご経験はありますか? できればこの産院を利用したいんですが……」と不安な気持ちを発言小町に投稿しました。

病院が見つからない 不安な気持ち

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 この投稿に、さまざまな反響がありました。

 ある県庁所在地に住む「ひまわり」さんからは「うちの地域でも、人気の病院では、(妊娠)5週でも分娩予約が厳しい状況です。だから、すぐにでも第2希望、第3希望に問い合わせてください」とアドバイスがありました。

 「私も同じ経験があります」と書いてきたのは、「ももんがまま」さん。8年前、結婚して引っ越したばかりの土地で、妊娠6週とわかり、お産施設をインターネットで調べて片っ端から電話した経験があります。しかし、どこも予約でいっぱい。ホームページに「空きがある」とあったのに、断られることもあったそうです。

 結局、かかりつけ医の紹介状を持って、自宅近くの赤十字病院に行ったところ、何とかお産を引き受けてもらい、無事、長男を出産したそうです。「病院が見つからないときは毎日不安で泣いてました」と振り返ります。

予約できたけれど……期日によっては

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 里帰り出産と決めていたのに、施設側から「その日以降、分娩はすべてやらなくなる」と通告されて困ったという体験談も寄せられました。

 トピ主「はなとやま」さんは、妊娠5か月のときに里帰り先の病院に健診に行き、分娩の予約をして安心していました。ところが、2度目の健診に行ったときに、医師から、出産予定日の翌日から分娩を扱わなくなるため、予定日までに生まれない場合は、陣痛促進剤を使って出産するか、他の病院へ紹介状を書くと説明されたそうです。

 家族からは「出産日もわかるし、この病院で産んでほしい」と言われたそうですが、トピ主さん自身は「なんだかしっくりきません。病院も余程よほどのことがあってだろうと思いますが、最初で最後の出産になるかもしれず、後悔はしたくないです」とつづります。

妊婦健診も長い待ち時間

 「産婦人科の分娩予約金を返してほしい」という題名で投稿してきたのは、トピ主「海が見える丘」さん。現在31週で第2子を妊娠中ですが、上の子の幼稚園バスの時間に間に合うように健診を予約したつもりなのに、毎回2、3時間待ちだそう。

 たまりかねて、受け付けの女性に事情を相談したところ、診察室で、院長から「そんな態度なら他の病院で産んだら?」「だいたい子供の迎えのない日にくれば良いでしょ」と言われたそうです。その後、院長からは「さっきはあんな言い方して悪かった」「丁寧な健診をしたいのに『時間がない』と言うから」とも言われたそうですが、トピ主さん自身は、「この対応に、院長へ不信感がわきました。分娩予約金10万円を返してもらった上で転院したい」と考えるようになったそうです。

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 ギスギスした雰囲気の産科施設でのやりとり。いったい、どんな背景があるのでしょうか。

 長年、お産の現場を取材してきた出産ジャーナリストの河合蘭さんは、「地域によっては産科施設を選びたくても選ぶことのできない状況が続いています。施設側も一生懸命なところが多いですが、産科医やスタッフの数が少なければ扱う分娩件数に制限をかけざるを得ないこともあり、もどかしい限りです」と話します。

産院を選びたくとも選べない理由

 厚生労働省の2017年の医療施設調査・病院報告では、「産婦人科・産科を標ぼうする施設」は全国に4640か所ありますが、分娩を実施した施設は2139か所。全体の46%に過ぎません。「産婦人科」という看板を掲げてはいても、お産を扱っていない施設が増えており、「近所の産婦人科で産めばいい」という時代ではなくなっています。

 もし、「分娩キャンセル待ち」と言われたら、どうすればいいのでしょうか。

 河合さんは「キャンセル待ちをしてもいいと思いますが、産むところがなくなっては大変なので他の施設を考えることは必要。地域の基幹病院の中には断らない方針を貫いているところもあるし、自宅から車で1時間くらいなら許容範囲と考えましょう。母子手帳を発行する地元の自治体に相談してみるのも一つの方法です。病院で産んだ人の産後ケアを受けている地域の助産院も、近隣の産院事情には詳しいはず」と話します。

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“お産難民”は解消された?

 “お産難民”の解消が政策課題にあがり、産科医を拠点病院に集中させる試みなども各地で行われています。一部の病院では、ベテラン助産師が健診から分娩、産後まで一貫して担当し、妊婦さんの不安を取り除く試みや、地域の開業医と中核病院が提携し、妊婦健診だけは妊婦さんの自宅に近いクリニックで受けられるようにする試みを始めているそうです。

 しかし、投稿からうかがえるのは、妊婦さんの立場から見て、施設や医療者に余裕がないと感じる現実です。何かできることはあるのでしょうか。

 河合さんは、「健診に時間がかかって、イライラしてしまう気持ちもわかりますが、健診の日には、家族の協力を得て、夫に付き添ってもらうのはどうでしょう。医師不足が深刻な地域では病院まで2時間くらいかかることがあり、夫の同行は必須になっています。上の子の面倒を見てもらうだけでも助かるので、周囲に声をかけてはいかがでしょうか」と提案します。

妊婦健診で信頼関係を築く

 妊婦健診は、健康状態を確認するだけではなく、日ごろの疑問や自分や家族の希望を伝えて人間関係を築いていく場でもあると河合さんは言います。メモを用意したり、夫婦で一緒に診察室で説明を受けたりする光景はよく見られるそうです。

 「お産は何が起きるかわからず、自分と子どもの命がかかっています。医師はどんなリスクがあると考えているのか、妊婦健診の機会によく聞いておくことも大切。混んでいても勇気を出して、必要な時はキリッとした態度で『質問していいですか?』と切り出してください」と河合さんは言います。

 一生に何度もないお産という場面。周囲の人たちも、産院から「キャンセル待ち」と言われて不安を感じている妊婦さんたちの存在や、余裕のない現場の様子を知っておく必要はありそうです。

 (読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

【紹介したトピ
分娩のキャンセル待ちについて
出産する病院について
産婦人科の分娩予約金を返してほしい

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