アプリで排便記録…「スッキリ革命」が女心をつかむ理由

News&Column

 一日の歩数、食事内容、睡眠時間……。なにげない日常の行為を記録することで、ダイエットや健康増進に生かすアプリが増えています。その中でも特に人気を集めているのが、お通じを記録するアプリ「ウンログ」です。2012年7月のサービス開始から、間もなく7年を迎え、ダウンロード数は60万に上ります。利用者はなんと95%が女性。なぜ、これほど女性に支持されているのでしょうか。

記録して気づいた便秘の原因

 「ウンログを使うようになって、以前よりも食事や運動を気にするようになりました」。東京都豊島区の会社員堀田美月さん(25)は今年1月から、トイレのたびに記録を続けています。 

 就職してから帰宅が夜遅くなることが多く、生活の乱れで便秘になることが増えたそうです。「おなかがパンパンに張って、肌荒れもひどくなってしまいました。市販の便秘薬を使うと腹痛に悩まされました」。ウンログのアドバイスに従い、食物繊維の多い根菜やヨーグルトなどの発酵食品を取るように心がけると、改善の兆しが見られたそうです。堀田さんは「いつ出たか、いつ出なかったかを記録していると、便秘だったときの食事や生活の乱れなど問題点が分かるようになりました」と振り返ります。

色、形、量、においを記録

ウンログの田口社長(東京・大手町で)

 ウンログは、排便時の便の色、形、量、におい、すっきり感を記録します。体重、体脂肪、生理、基礎体温などの情報も記録できるので、便秘解消、美容・ダイエット、健康管理に活用できます。カレンダー表示で排便の状態や頻度を一目で確認することができるだけでなく、普段はちょっと口にするのがはばかられるお通じの悩みを、アプリのユーザー同士でやりとりができる機能もあるため、便秘などに悩む女性利用者の支持を得ています。

 このアプリを開発したウンログ株式会社(本社・東京)の田口敬社長は、大学卒業後、通信機器販売で営業を担当。もともと腸が弱かった上、成果主義のストレスなどで軟便に苦しんでいました。花粉症やじんましんなどの不調に悩むこともあったそうです。

 「体質改善の本を読みあさり、腸内環境の改善が重要だと考えました。腸内環境はうんちを見ると大体わかります。それなら、うんちを記録して、その改善案を提供するアプリにもニーズがあるのではないかと思ったんです」

 起業を目指していた田口社長は、26歳のときにプログラミングを学び、スマートフォン向けのアプリ開発に乗り出します。12年7月に排便記録アプリのウンログをスタートさせ、13年8月に会社を設立。わずか1年で10万人の利用者を獲得しました。

アップル本社に乗り込み説得

 

いろいろなイラストから形状を選ぶ(ウンログ提供)

ところが、アプリの更新時に「うんち」というキーワードが問題として浮上しました。

 米アップルからアプリのテーマとして“不適格”とみなされ、更新をリジェクト(拒絶)されたのです。文言やキャラクターの削除を求められましたが、それではこのアプリが成立しません。

 田口社長は渡米して、アップル本社のヘルスケア担当者にアプリの医学的な役割や根拠なども説明。健康管理に役立つアプリとして、例外的にアップルからお墨付きを得ることに成功しました。リジェクトの危機を乗り越えたことで、「当時のアップル社のヘルスケアマネジャー公認うんちアプリになりました」と田口社長は胸を張ります。

 ウンログは14年、ベンチャーキャピタルのNTTドコモ・ベンチャーズが開催するスタートアップ支援プログラムで「審査員・オーディエンス賞」を受賞。イノベーションを起こす可能性を秘めたサービスとして評価を受けたことで、企業からの提携依頼が舞い込むように。製薬、食品、スポーツ関連企業などの「腸活」や「健康」をキーワードとする商品開発やマーケティングに協力しています。

 「新製品を開発したら、まず、ウンログの利用者にモニタリングをお願いしたい」という企業もあるといいます。「ほかにはない何十万人分もの貴重なうんちのデータがあります。だれにも言えない悩みや改善のプロセスがここに集まっていますから」と田口社長。

女心をつかむ「ねぎらい」メッセージ

ウンログの画面(ウンログ提供)

 アプリの運営は、新規ユーザーの獲得とともに、利用者に継続を促す仕組みが求められます。女性利用者の増加に伴い、田口社長が心がけたのは、女性が使いやすいデザインや仕様に変更するだけではありません。利用者への通知メッセージも工夫しました。

 「ちゃんと水を飲んでるの?」

 「少し運動したほうがいいよ」

 しばらく利用していない人へ、当初はこのようなアドバイスのメッセージを送っていました。ところが、「こうすべき」という内容は女性の反感を買ったそうです。

 「大丈夫? 溜め込んでない?」

 「出してくれてありがとう、また明日会おうね」

 そんなふうに、メッセージを「ねぎらい」調に変更すると、たちまち女性からの評価が上がったそうです。実際にこんな声がありました。

 「彼氏も心配してくれないのに、ウンログが私の便秘を心配してくれている」

 「久しぶりのお通じを褒めてもらえてうれしい」

体調管理に「観便習慣」

 18年11月には、ファミリーマートがウンログと共同開発したドリンク「ヨーグルトを使ったのむキウイ」の販売を開始。商品の企画開発に参加したのは、ウンログで腸活を実践する女性ユーザーが集まるコミュニティー「ウンログ女子部」です。

 「ぽっこり撃退!おなかのハリすっきりセミナー」「腸が美しくなるウォーキングレッスン」「美腸のための栄養成分を知るためのワークショップ」など女性向けのイベント「ウンログ女子部」を開催。腸活に必要な知識を身に付けるだけでなく、利用者同士の交流の場となっているそうです。

 健康や美容に不可欠とされながら、排便に関する話題はタブー視されがちです。「もっとオープンに話ができるようにしたいと思いました。うんちについて知識を増やし、観便(排泄物を観察すること)を習慣化させることで、体調管理や腸内環境の改善につながるはずです」と田口社長は強調します。

 実態をより正確に記録をするため、画像解析技術の開発に向け、利用者300人の協力を得て、トイレで便を撮影する試みも始めているそうです。

 生活リズムや食事内容は一人ひとり異なります。それぞれの「スッキリ」を得るために、ウンログの挑戦は続きそうです。(メディア局編集部 鈴木幸大)

【あわせて読みたい】
「みそ」の発酵パワーで健康と美肌を守る!
遺伝子で体形が決まるってホント?
妊娠中も残業続き 職場で陣痛、切迫早産に