岡田育さんの人気コラム「40歳までにコレをやめる」が本に

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 文筆家・岡田育さんが大手小町で連載した人気コラム「40歳までにコレをやめる」が、サンマーク出版から書籍化されました。30代に入り、転職、結婚、米国移住など人生の転機を迎えてきた岡田さんが、より良く生きるために「やめた」39の事柄についてつづっています。岡田さんに本に込めた思いを聞きました。

39の「やめたこと」を再構成

――「40歳までにコレをやめる」は、大手小町で2018年1月から11月まで週刊連載されたコラムですが、構想はもっと前からあったそうですね。

 私が勤めていた出版社をやめた32歳の頃に、サンマーク出版の編集者の方が「何か本を作りましょう」と、書き下ろしを依頼してくださったんです。サンマーク出版さんと言えば、「コレをやればあなたも成功できる」といった自己啓発書のイメージが強いので、私もそういった本をと、いろいろアイデアを考えたのですが、どうしても書くことができなくて。企画やタイトルを何度も上げてはボツにするといったことを繰り返していました。そのうち、人生で不要なものを捨てていくというテーマで書こうということになり、それをどうやって形にしようかと考えていたところに、大手小町さんから連載のお話をいただいたんです。大手小町さんの主な読者層が「30代の働く女性」だと聞いたので、それなら「40歳までにやめること」を書いていこうと、話がトントンまとまっていきました。

――岡田さんは現在39歳ですから、“40歳までの出版”がギリギリ間に合った形ですね(笑)。

 はじめは隔週連載の予定でしたが、編集者さんに「隔週だと(出版が)間に合いませんよ」と言われて(笑)。「こんなタイトルにするんじゃなかった」と思いつつ、初めての週刊連載を続けて、ようやく本にすることができました。私にとって書籍化は、30代をまるごとかけた宿題のようなものでしたから、今はその宿題をようやく提出できてホッとした気分でいます。

――大手小町では計46回の連載でしたが、書籍版では39の「やめたこと」に再構成されています。

 大手小町の連載を読んでくださった方は、第1章から全然違うので驚かれるんじゃないかな。本にするに当たって、構成をあれこれ組み替えましたし、連載中に読者の反響が大きかったお金に関する話や「喪服をやめた」話などは、もっと書こうと考えて加筆しました。その都度ヒーヒー言いながら書いていた週刊連載のコラムとはまた違う、思想的なまとまりが感じられると思いますし、そこは私自身、頑張ったところでもあります。

自分の生き方を指さし確認

――あらためて振り返ってみると、どんな30代でしたか?

 激動の30代で、経歴だけ見たら、鉄の意志をもって自分の人生を切り開いてきた女、と思われるかもしれないけれど、私の選択はいつも消極的なんです。最初に転職したときも、「他にやりたいことがあるので辞めます」というより、「何がしたいかは辞めてから考えます」という感じで……当時の同僚に心配されました(笑)。ただ、このまま楽しく同じ仕事を続けていると、自分だけ竜宮城に居座り続けた浦島太郎みたいになってしまいそうで、それが不安だったんです。

 定年までいるつもりだった会社をやめてみたら、その先には何もなかった。糸の切れた凧のような状態でいたら、たまたまご縁があって「じゃあ、してみるか結婚」となり、「してみるか転職」「してみるか渡米」となっていった感じなんですよ。もしも、目の前の仕事が楽しくて仕方がなかった30歳の自分に、39歳の自分が「今はこうなっているよ」と教えてあげても、たぶん信じないと思うんです。今回の本も、人生で予定通りじゃなかったことについて自分で納得するために書いたという面もあります。取捨選択をして、いろんなことをそぎ落していったらこうなったと、自分の生き方を指さし確認しながら書いたようなところはあります。

――それでは、どんな40代にしたいですか?

 やめることが、たぶんまだたくさんあるなと。やめなきゃいけないわけでもないけれど、気づいたらやめていたということが増えていくといいなと思います。この前、私より年上の女性で、40代からのロールモデルになるような人は誰かと考えてみたのですが、どうしても固有名詞が思い浮かばなくて。その時、40代ならもしかしたら、後輩がロールモデルになることもあるんじゃないかと思ったんです。自分にはない新しい発想を持った若い人から学ぶこともあるだろうと。

 私は1980年生まれなのですが、同い年生まれで飛び抜けた人を見ると、どうしてもライバル心のようなものにとらわれたし、85、6年生まれぐらいの人だと、同世代の若い人たちから追い上げられているようで身構えたりしていました。でも、最近ようやく、純粋に彼らに敬服できる自分でありたいと思えるようになってきたんです。それこそ「人と比べるのをやめる」じゃないですけど。考えてみれば、まだ40歳にもなっていないのに「まだまだ若いモノには負けないぞ」なんて考えるのも変な話で、50代、60代の人から見たら、私なんかひよっこなわけですから(笑)。

――この本をどんな人が手に取ってほしいと思いますか?

 ライフステージに大きな変化がやってきた20代の人たち、29歳の時に30代になるのが嫌だった、昔の私のような人たちに届けたいです。適度に受け流しつつ、「ああ、この人はこんなにウロウロと迷い悩みながら30代までを過ごしていたんだな」と思っていただけたら、年下世代の人たちは、少しは気が軽くなるんじゃないかと。それから、「私はもう40代なので、対象読者じゃないんですけど」と言ってくださる方がいますが、40代、50代以上の方にも「この筆者、まだまだ青いな」と思いながら読んでいただけたら。

――この本でつづられている「やめたこと」は、やめるべき年代は問わないのがほとんどです。

 私がたまたま37歳で車の運転をやめたのもそうですし、「敬語をやめる」などはいくつになっても永遠のテーマだと思います。年配の方は「自分はまだやめていないな」という項目があったら、そこからつまみ読みしていただくのもいいかもしれません。
(聞き手・読売新聞メディア局 田中昌義)

岡田 育(おかだ・いく)

文筆家。1980年、東京生まれ。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。米ニューヨーク在住。著作に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、『天国飯と地獄耳』(キノブックス)、二村ヒトシ・金田淳子との共著『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)。現在、大手小町でコラム「気になるフツウの女たち」を連載中。