ボディータッチが多いバイト先の店長 これってセクハラ?

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 アルバイト先の店長が、日に何度もぶつかるようにして腕にさわってくるのが不快だという女性の声が、読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に寄せられました。出勤すると、多いときには3~4時間に5回も接触があるそうです。とはいえ「お尻、胸には一切触られないので微妙なところ」と言い、対応に困っています。こんな場合はどうしたらいいのでしょうか。セクハラ問題に詳しい専門家に聞いてみました。

 トピ主の「唯」さんは、飲食店でアルバイトを始めて半年。3か月を過ぎたころから、店長によるボディータッチが多くなってきたそうです。店長は、「唯」さんに何か指示するたびに、肘から下の腕に触れてくるほか、それほど狭くないキッチンなのに、半袖の制服から出ている「唯」さんの腕に、自分の腕を一瞬ぴったりくっつけてくることもあるそうです。また、「ちょっとどいて」と言いながら、「唯」さんの太ももの横を触ってきたことも、2回あるそうです。

 「最初はボディータッチが多いだけかなと思っていたのですが、不自然にわざと腕をぶつけてくるので、セクハラなのかと思い始めました」と「唯」さん。

 ただ、同じバイト仲間の女性は「みんな気が強く自己主張強めなタイプ」。それに比べて、自分は「おとなしいタイプ」。「田舎なのでなかなか次の働き先が見つからず辞めることもできません。(店長を)怒らせないように(自分の不快さを)伝える良い方法はないでしょうか?」と、「唯」さんは聞きました。

セクハラは「受けた人次第」

 この投稿に、発言小町では、様々な反響が寄せられました。

 「通りすがり」さんは、「セクハラは受けた人次第」といいます。「主さんにとって不愉快ならハラスメント、何とも思わないならハラスメントではありません。ただ、おっしゃるようにかなり微妙なので、セクハラで訴えてやる!というレベルではないような気がします」と、「自分だったらバイトをやめる」という見解です。

 一方、「たこ」さんは、「そのうち間違いを装って胸やお尻にぶつかったり触ったりしそうです。いつも通り腕に触れたつもりが胸だった。足のつもりがお尻だった。それであなたが嫌悪感を示さないなら触ってもOKと解釈し、お触りがエスカレートするでしょう」と、警鐘を鳴らします。

 同様に、店長の行為は故意だと「ワンダふる」さんは指摘します。「大げさに避けたりしてはどうですか? 後は触れられたら不快感を表して下さい。決して失礼ではありません」とアドバイスをしました。

どこからがセクハラ?

 セクハラなど労働問題に詳しい、弁護士のあくつ由美子さんに話を聞きました。圷さんは、中央大学法科大学院でも兼任教員として「ジェンダーと法」の授業を教えています。

 圷さんは、「触れる箇所が胸やお尻でなくても、『身体に不必要に接触すること』はセクハラにあたります。制服は半袖、触られる部位は肘から下の前腕ということですから、素肌に触れられているわけですよね。しかも『唯』さんのケースは、頻度も多く、前腕や太ももとはいえ、不必要な“身体的接触行為”はセクハラにあたります」と言います。

 圷さんによると、ある民間企業では、ジャンパーを着ている女性従業員の二の腕に触れたり、ほかの女性従業員に必要もないのに「トイレの便座に座れ」と指示をしたりした男性上司について、会社がセクハラ行為を認定。管理職として不適格だったとして、降格、減給処分にしたケースもあるそうです。

 また、派遣社員の女性が、派遣先の職場の男性から体をぶつけられたり、トイレや更衣室前で待ち伏せされたりして、セクハラ被害を訴えたケースもありました。2013年12月に大阪高裁は女性のセクハラ被害を認定し、女性が在籍していた派遣会社に対し、被害女性への損害賠償を命じました。

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 「この判決は、セクハラが起きた場合の派遣元の法的責任について、とても重要な判断を示しているので、参考にしてほしいと思います」(圷さん)。

 派遣会社にセクハラを訴えた場合、派遣会社は速やかに事実確認の調査、被害回復、再発防止のため、誠実かつ適正に対処する義務があります。また、セクハラ被害を受けた派遣労働者が、解雇されたり退職を余儀なくされたりすることのないように配慮すべき義務もあります。判決では、この二つの義務が明確にされ、どちらも実施しなかったことが「義務に反する」とされました。

 圷さんは、「唯さんのようなアルバイトのほか、派遣社員やパートタイムなどの有期契約社員の方、そして無期契約社員(正社員)でも新入社員は特に、セクハラの標的として狙われやすい実態があります。でも、セクハラを防止するのは会社の責任。立場の弱い、有期契約社員、新入社員などへのセクハラ被害をなくし、全ての人が働きやすい環境を整えるためにも、『当事者の問題』とせず、法で定めたセクハラ防止措置義務を遂行する義務があります」と強調します。

バイトをやめたくない。どうしたら?

 「ほかの方も指摘しているように、このままだと、店長のセクハラはエスカレートしていきます。引き続きこの職場で安心して働き続けたいということであれば、これ以上の店長のセクハラ行為をやめさせなければなりません。といっても、そもそもセクハラ行為自体を認めないという場合があるので、職場で味方をみつけ、目撃者になってもらうこと。味方がいないのなら、自分で被害の詳細をメモにしましょう」と圷さんは呼び掛けます。

 過去に圷さんが担当したケースでは、被害者がその都度残していたメモについて、裁判所は信頼できる証拠であるとして、セクハラの事実を認定したそうです。

 同時に、圷さんは、「職場の仲間に、その場で、『そういうの、わざとじゃなくてもセクハラにあたるからやめた方がいいですよ』と言ってもらう。あるいは、会社に匿名で、店を特定せずに、『こういう店長がいる』と申告し、きちんと対応する会社かどうか、様子を見てみてもいいと思います。店長に『気づきのチャンス』を与えることも必要で、気の弱い人物の場合、『どうもまずい』と気づけば、それ以上はしてこなくなります」とアドバイスします。

 トピ主さんは「微妙なところ」と言いますが、胸やお尻を触られていなくても、本人が不快に思っていたら、それはセクハラにあたるそうです。職場の仲間を味方に詳細なメモを作るなどして、声を上げ、毅然きぜんとした態度でのぞむことが必要ではないでしょうか。(メディア局編集部・遠山留美)

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