歯磨き後はうがい少なく…オーラルケアの新常識

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子どもの仕上げ磨きは就寝前に行うと効果的(写真はイメージ)

 虫歯や歯周病に悩む人は少なくありません。ところが、子供たちの虫歯の数は減っているそうです。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、「虫歯って、こんなに減ってるの? 平均0.8本!」という題名の投稿がありました。なぜ子どもたちの虫歯は減ったのか、大人にも有効な対策はあるのか、専門家に聞きました。

若い子は歯が丈夫になった!?

 トピ主の「飛行機」さんは、「12歳の子どもにある永久歯の虫歯平均本数が0.8本になった」というニュースを知り、そのときの驚きの気持ちを「平均1本以下? 私たち虫歯世代では考えられなかったこと。若い人ってホントに歯が丈夫なんですね。いいなぁ」と「発言小町」に書き込みました。

 文部科学省の2018年度の学校保健統計調査によると、12歳の子どもの永久歯にある虫歯の平均本数は、0.74本。調査が始まった1984年度には4.75本でしたが、毎年減少を続けて17年度に初めて1本以下になり、18年度も過去最低を更新したそうです。同じ調査で、虫歯(治療済みを含む)がある子どもの割合は、幼稚園で35%、小学校で45%、中学校35%、高校45%でした。

親の意識は高く 定期健診やフッ素塗布も

 「飛行機」さんの驚きに対し、「歯が丈夫なわけではなく、予防に力を入れているからでは」というのは、ハンドルネーム「転勤族の妻で二児の母」さん。引っ越し先で、初対面の子供の親から、「子供に虫歯なんか作る親は、非常識! お付き合いしたくないから、私、最初に聞くの。子供に虫歯があるかどうか」とハッキリ言われた経験があるそうです。「ここまで強烈に言うのは、ごく一部かもしれませんが、今は、どの自治体も予防歯科に力を入れているので、親の意識は高いです」とコメントしています。

 具体的には、幼児期から3~4か月おきに歯科医院に通い、歯の定期検診やフッ素塗布をしたほか、小学生になってからも親が就寝前に仕上げ磨きするように歯科医から言われ、実行。おかげで現在も子供たちに虫歯はないそうです。

知識の普及や医療費無料も後押し

 虫歯に対する知識が普及したことを指摘する人も目立ちます。「親の虫歯菌を移さないように注意して育てました」というのは「葉子」さん。赤ちゃんのころから親がかじった食べ物は与えず、キスもしないようにしていたそうです。子どもの医療費の自己負担無料制度によって、気軽に歯科の定期検診に行くことができたことなども、最新の虫歯対策の知識を得るのに役立ったといいます。

 親の意識や行動の変化のほかに、子どもの虫歯の減少に役立ったことはあるのでしょうか。東京歯科大学名誉教授の眞木吉信さん(口腔こうくう衛生学)は「フッ素入り歯磨き剤が浸透したことも大きかったです」と指摘します。

フッ素入り歯磨き剤は90%強のシェア

 1980年代半ばの国内の歯磨き剤市場では、フッ素入りの製品のシェアは10%程度でしたが、現在は90%強になりました。ちょうど子どもの虫歯の数と相関関係があるそうです。

 眞木さんによると、口の中では、虫歯菌が作り出す酸によって、歯からカルシウムやリンが溶け出す「脱灰だっかい」という現象と、溶け出した成分が歯に沈着して元の状態に戻す「再石灰化」という現象が繰り返されているそうです。このバランスが崩れ、酸の作用が強くなると、虫歯が進行してしまいます。フッ素には、「再石灰化」を促し、酸の生成を抑制する作用があると考えられています。

東京歯科大学名誉教授の眞木吉信さん

高濃度フッ素の薬用歯磨きも登場

 2017年には、厚生労働省が、それまで歯磨き剤のフッ素配合濃度を1000ppm以下としていた基準を改め、1500ppmのフッ素を配合した「高濃度フッ素」の薬用歯磨きを承認しました。誤食を避けるために幼児の使用は控えるべきですが、眞木さんは「家庭でできるオーラルケアとして、フッ素入り歯磨き剤は有効です。ライフステージに合わせて、積極的に活用してほしいです」と強調します。

大人にも応用できるテクニック

 歯科衛生の分野で先進国のスウェーデンでは、「イエテボリ・テクニック」という歯磨き剤の使用方法が広がっています。この方法は、成人の場合、フッ素入りの歯磨き剤を歯ブラシに2センチ付けて、磨きます。そして、磨き終わったら10ミリ・リットルの水を口に含んでそのまま30秒程度維持し、吐き出すというもの。吐き出した後、うがいはしません。その後、2時間は飲食をしないことを基本にしています。

写真はイメージです

 「フッ素の成分を、いかに口の中に残すことができるかがポイントになります。日本口腔衛生学会でも、どのくらいの濃度の歯磨き剤を、どのくらい使用するか、年齢別の応用法を出していますので、ぜひ参考にしてください」と眞木さんは言います。

<フッ化物配合歯磨き剤の年齢別応用法>

 ■生後6か月~2歳の場合
 歯磨き剤のフッ素濃度:500ppm
使用量:切った爪程度の少量
 仕上げ磨き時に保護者が使う

 ■3歳~5歳の場合
 歯磨き剤のフッ素濃度:500ppm
 使用量:5ミリ以下
 就寝前が効果的、歯磨き後5~10ミリ・リットルの水で1回のみ口を洗う

 ■6歳~14歳の場合
 歯磨き剤のフッ素濃度: 1000ppm
 使用量: 1センチ程度
 就寝前が効果的、歯磨き後10~15ミリ・リットルの水で1回のみ口を洗う

 ■15歳以上
 歯磨き剤のフッ素濃度: 1000~1500ppm
 使用量: 2センチ程度
 就寝前が効果的、歯磨き後10~15ミリ・リットルの水で1回のみ口を洗う

「ダブルブラッシング法」も推奨

 日本口腔衛生学会では、口の中をすすがないことに抵抗がある人には、1度目の歯磨きでは十分に口の中をすすぎ、2度目の歯磨きで、フッ素配合の歯磨き剤を使って、吐き出すだけにするか、軽く1回だけ口を洗う「ダブルブラッシング法」も勧めています。
 「大人にも予防効果はあります。毎日の歯磨きの中で、どうやったら虫歯の進行を抑制することができるか。正しい知識で、セルフケアをしてください」と眞木さんは言います。

 少なめの水で、1回だけのうがい。これなら簡単なので、今日からでも挑戦できそう。口の中の状態は人それぞれなので、子どもと同様に、予防歯科に力を入れている歯科医院で定期検診を受けて、自分の状態をチェックすることも重要でしょう。オーラルケアの常識も、時代によってかなり変わっているようです。

 (読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

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