結婚はしたいけれど、どんな人が自分に合うのか、どんな条件の人を選んだらいいのかと迷っている人も多いはず。最近、異性とのマッチングに「DNA」を活用するという、新しい形の婚活が人気を集めています。東京都内では先日、DNAを使った婚活パーティーが開かれました。遺伝子レベルでの“運命の相手”を見つけることができるのでしょうか。最新の婚活現場を取材しました。
本能レベルの「キュン!」と、DNAの関係性
パーティーを主催したのは、全国で結婚相談所「ノッツェ」を運営する「結婚情報センター」(本社・東京)。この日は、「『令和』記念 『平安』時代方式のお見合い」と題し、30~50歳代の男女13人ずつが参加しました。
参加者は、事前に唾液を提出。DNA検査によって、免疫系をつかさどる「HLA」という遺伝子を調べました。この遺伝子は、恋愛感情に深く関係していると言われています。
同社の依頼を受けてDNA検査を行っている「医道メディカル」代表取締役の陰山康成さんによると、HLAには、構造の違いなどによって約1万6000ものタイプがあり、女性は自分とかけ離れたHLAタイプの男性の体臭を、好ましく感じるという実験結果が出ているそう。また、HLAタイプがかけ離れているカップルは、パートナーへの満足度が高いのに対し、HLAタイプが似ているカップルは、浮気率が上がるという論文も発表されているといいます。
今回のパーティーでは、自分とかけ離れたHLAタイプを持つ人を「相性が良い人」とみなして進められました。
遺伝子相性「98%」の相手とは
参加者がこうした遺伝子に関する説明を受けたうえで、パーティーがスタート。あらかじめ参加者には、異性参加者との相性が記されたカードが配られています。カードには、異性参加者全員の名前が並び、それぞれの名前の横には「50%」「98%」といったように、自分との相性を表す数値が書かれています。

検査結果きっかけで盛り上がる
男女1組3分間のトークタイムが始まりました。相手の見た目や条件に左右されないように、男女の間にすだれを下げて、お互いの顔が見えない状態になっています。平安時代では、男女が出会う時はすだれ越しで会話をしたといい、今回のパーティーにその方式を取り入れたのだそうです。
トークが3分たったら、別の異性参加者と話をして、13人の異性参加者全員と話し終えるまでトークタイムは続きます。最初は戸惑っていた参加者たちも、次第に緊張がほぐれてきた様子。声がよく聞こえるよう、すだれに耳を近づけたり、「私たち、相性数値が高いですね」と検査結果きっかけで話が盛り上がったりと、思い思いにトークを楽しんでいました。

打ち解けたところで、いよいよすだれをオープン。その後は、ゲームやフリートークなど通常の婚活パーティーと同じ流れで進められました。
遺伝子で運命の相手見つかる?!
パーティーの最後、意中の相手を紙に書いて、主催者に渡します。相手も自分の名前を書いてくれていたら、カップル成立です。この日は結局、4組のカップルが誕生しました。相性数値が98%の男性とカップルになった女性(32)は「やっぱり、相性数値は意識しちゃったかもしれません。でも、話してみて楽しかったし、すだれが外れて顔が見えた時も、『すてきな方だな』と思ったんです」と、はにかみながら話してくれました。

「顔」以外の選択肢も
DNAでの運命の相手探しは、本当にうまくいくのでしょうか。ノッツェは今年1月から、DNA検査で相性の良かった異性を会員に紹介する「DNAマッチングコース」を設けています。
年収や職業などの条件で相手を選ぶというこれまでの婚活の定石を打ち破るのが狙いだそう。同コースでは、他のコースと異なり、相手の顔写真やプロフィルなどが一切見られません。会員の希望とDNAの相性数値などを考慮して、お見合い相手を紹介しますが、会員はお見合い当日まで、相手がどんな人なのかが全く分からないのだそうです。
同社によると、通常であれば、お見合いをした後に2回目のデートにつながるのは、会員の自由意思に任せると2、3割程度。しかし、昨年夏、試験的にDNA検査に基づくマッチングを実施したところ、6割ほどが2回目のデートを行ったそうです。DNAマッチングコースを選ぶ会員も急増中で、「これまでの自分なら決して選ばないタイプの人だけど、話してみたら次も会いたいと思えた」といった声も寄せられているそうです。

陰山さんは「科学的な観点からも、HLAをつかさどっている遺伝子が恋愛に大きな影響を与えると言えます。見た目や職業などのような結婚条件の一つとして、遺伝子も考えてみてほしい」と話します。
結婚情報センターの広報部長・藤村知さんは「最初は『顔』で選びがちですが、科学的な証拠があると、『会ってみようかな』と思うのかもしれません。結婚したいけれど、どう動いたらいいのか分からないという人のセーフティーネットになりたいと考えています」と、DNAマッチングの広がりに意欲を見せていました。
(読売新聞メディア局編集部 安藤光里)
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