月経異常や不妊 女性社員の健康を会社がサポート 

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 女性社員の健康維持のための取り組みが企業の間で広がっている。健康経営の一環として取り入れるところが目立つ。体調管理の面からも女性の働きやすさに配慮することで、生産性の向上や人材の定着になり、女性活躍推進につながるととらえられているようだ。

貧血対策に自律神経を整える運動

 4月中旬の平日午後、人材派遣大手のパソナ(東京)で、女性社員向けの健康セミナーが開催された。ネット中継で見た人を含め、20~40代の27人が参加した。

 会場にはハーブティーとミックスナッツが用意された。講師の管理栄養士は食事でできる貧血対策を説明し、「ナッツは鉄分がとれるので、仕事中の間食にお薦め」と助言した。また、保健師が月経異常や更年期について解説し、トレーナーが自律神経を整えられる手軽な運動を教えた。

自律神経を整えることをテーマに、仕事の合間に座ってできる運動を教わるセミナー参加者(東京都千代田区のパソナで)

 同社はこうしたセミナーに加え、2018年1月から、健康診断で貧血ややせ形傾向にあるとされた女性社員に健康改善プログラムを実施している。やせ形で指導を受けた山本絵美さん(38)は「自信がなかった食の栄養バランスで、正しい知識を学べた。昼休みに運動することで、仕事の集中力も上がっている」と喜ぶ。

 健康経営ソリューション部長の佐川泰徳さんは「これらの取り組みは、『女性社員の健康の悩みや不安に向き合うよ』という社からのメッセージ。それが働きやすさにもつながるはず」と話す。

ライフイベントと健康を考える

 NTTドコモ(東京)は今年2月、入社5年目の女性社員とその上司が参加する健康セミナーを開いた。産婦人科医による講義を一緒に聞くなどし、結婚や出産といったライフイベントとキャリア形成を併せて考えられるようにした。

 ダイバーシティ推進室長の野沢千晶さんは「キャリアもライフも自分が主体的に選ぶことで、仕事に向かう姿勢が変わるはず。結婚や出産を現実的に考え始める年齢の人たちにこそ聞いてほしいと考えた」と企画意図を説明する。

生産性向上に結びつく

 女性の健康に注目する企業が増えている。東京・丸の内周辺の企業で構成する「健康経営に関する実務者連絡会」が15年度にまとめた調査では、健康経営に積極的な企業43社のうち、関心が高い取り組み(複数回答)で、女性特有の健康対策が56%で最多だった。

 経済産業省によると、月経随伴症状に伴う労働損失が4911億円と13年に試算されたり、健康意識が高い女性ほど仕事のパフォーマンスも高いという調査結果を日本医療政策機構が18年にまとめたりもしている。「女性が長く健康に働けることが生産性の向上や企業業績の向上に結びつく、という考え方が広まってきた」と経産省の担当者。

セミナー開催、専用の相談窓口

 企業の取り組みは、働く女性を精神的にも支えているようだ。花王(東京)は、17年から女性専用の健康相談窓口を開設。育休など休職中の社員も利用できる。相談はメールで送り、対応は女性産業医4人が交代で行う。

 これまでに、月経に伴う心身の不調や将来の妊娠への不安、更年期症状など様々な悩みが打ち明けられた。「女性専用としたことで安心感が生まれ、とても繊細な相談内容が寄せられている」と同社。

 健康経営に詳しい日本総研シニアマネジャーの田川絢子さんは、女性の健康問題に取り組む企業の広がりを評価する。その上で、「男性も含めて全社的に取り組む雰囲気を作ることが重要。月経や更年期など女性の健康問題を『話しにくい』と避けるのではなく、男女共通の問題として認識する策を企業が考えなければいけない」と指摘する。

自分でも体調管理に関心を

 会社任せでなく、自分から健康維持に取り組む姿勢も大切だ。働く女性の健康支援プロジェクトを推進する一般社団法人ラブテリ(東京)代表理事で、予防医療に詳しい細川モモさんに聞いた。

 細川さんは「自分の体に興味を持つことから始めましょう」と話す。そのためにまず、健診結果などから現状を確認しておこう。特に、BMI(体格指数)と体脂肪率は、体組成計などを使って最新の数値をチェックしてほしいという。貧血に関わるヘモグロビン値も把握しておきたい。骨の強さを示す骨密度も、調べておけば役に立つ。

 ラブテリが掲げる理想値はBMI20~24、体脂肪率20~27%、ヘモグロビンは1デシ・リットルあたり13グラムとなっている。

 毎日の生活では、「運動、睡眠(休息)、食事」の三つの要素を整えることが大切だと説く。ラブテリの調査では、朝食を抜いている人ほど月経異常の率が高く、加齢とともに筋肉量が減ることで冷えなどのトラブルが起こりやすくなるという。朝ご飯を食べ、6時間以上眠るなど、働く女性が長く美しく健やかに生きるための習慣を提唱している。

 細川さんによると、管理職に就いた重圧で飲酒量が増えたり、残業で欠食率が高くなったりと、世代にかかわらず健康不安がつきまとう。「月経異常も不妊も更年期も、いずれも離職理由になり得る。女性が自分の健康にもっと関心を持つとともに、女性の健康問題は社会の問題だという認識も広めていく必要がある」と訴える。

(読売新聞生活部 野倉早奈恵)