そもそも「女子力」って何? 疑問を専門家に聞いてみた

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写真はイメージです

 「女子力アップ」「女子力を磨く」など、しばらく前から使われるようになった「女子力」という言葉。何を指すのか、定義もあいまいなまま、女性らしい容姿や身だしなみに気を使うこと、気配りができることなどの意味で使われることが多いようです。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも「『女子力』ってなんですか?」と題する投稿がありました。どう考えたらよいのか、専門家に聞いてみました。

 トピ主の「日和」さんは、20歳代後半のOL。付き合っている彼氏から、ある女性の実名をあげて「○○さんに比べて、君は女子力が無い」と言われたそうです。どんな点かを確認したところ、その女性は、マツエク(まつげのエクステンション)やネイルをして、化粧もしっかりしているうえに、サラダを取り分けてくれると言います。

女子力=容姿や身だしなみ?

 納得がいかなかったトピ主さん。発言小町に「私はお出掛けの際は髪の毛も巻いたりして、見た目には気を使っています。化粧も派手なのが嫌いでナチュラル系なだけ。服装も、きれいめな服が多いし……」と自分の実情を書き込みました。そして、「男性にとっては、おしゃれにお金を使いまくって華やかな女の方が『女子力高い』なのでしょうか?」と問いかけました。

彼女を特定の女性と比較するなんて

 この投稿には60本の反響が寄せられましたが、「女子力」以前に、彼女を特定の女性と比較する彼氏の態度を問題にする声が目立ちます。

 「彼がどういうつもりでそれを言ったのか、次に会った時にもう一度聞いてみて。それでも彼と付き合っていこうと思うのなら、彼の意向に添えるよう努力すれば良い。私だったらそれを言われたその時点で『じゃあ、○○さんと付き合えば良いんじゃない? 私は○○さんではないし、○○さんになるつもりもない。私は私だもの。』で、終了します」(「わかめ」さん)、「『アンタの男子力に合わせてんのよ』とでも言っておやりなさい」(「もっさん」さん)、「彼氏さんにイエローカードだなあ。もし逆の立場であなたから『〇〇くんに比べてあなたは男らしくない』とかって言われたらどう思うんだろって話」(「メイプル味」さん)。

サラダ取り分けが重要ポイント?

 彼氏が思い描く「女子力」についても手厳しい意見がありました。

サラダを取り分ける(写真はイメージ)

 「サラダを取り分けるとか、そんな所が重要ポイントなんですね。華やかさは女子力とイコールではないと思います」(「ぎん」さん)、「貴女の彼氏は男にびる女を『高い女子力の持ち主』と勘違いしているだけです。いい男はそんな詰まらない事言いませんよ」(「リリス」さん)、「そもそも女子力が高いのが絶対的にいいことかどうかというのも分からんと思うがな。トピ主彼氏にとっては『女性の価値において絶対的な尺度』なんだろうけどなあ、そんな重要か? 女子力の高低」(「コラソン」さん)などです。

 「試しに、複数の同僚男性に聞いてみたらどうでしょう? 『あなたにとっての女子力とは?』と。共通する項目があれば、一般的に男性に受ける項目なのでしょう」(「アヴェンジャー」さん)という提案もありました。

 津田塾大学教授の萱野稔人さんは昨年、「〈女子力〉革命」(東京書籍)を出版しました。「メディアスタディーズ・コース」のゼミに参加した14人の女子学生のリポートをまとめたものです。

「女子力」を捉え直そう

 「『女子力』というと、おおむね『仕事や人間関係に生かせるような女性らしい態度や身だしなみ』といった意味で使われることが多いです。でも、それだと、上から目線で評価している感じで、女性側からは反発もあります。『私は女子力低いから』と自虐的に言う学生もいるし、逆に女性同士の間で、『女子力高い』と言われても素直に喜べないという声もありました。だから、ゼミでは、『女子力』をもっと幅広い意味で、例えば『生き抜く力』として捉え直したらどうだろうと話しました」と萱野さん。

 超高齢社会の到来で、女性の平均寿命は90歳に迫っています。20歳前後の学生たちにとって老後はまだ遠いものの、未婚率や離婚率の上昇で、自分が結婚願望を持っていたとしても、必ずしも希望がかなわない社会構造になってきたことなども考察したそうです。

 「近い将来、自分たちが直面する課題についてそれぞれ執筆分野を決めて、リポートを提出してもらいました」と萱野さん。例えば、「おひとりさま」の老後をどう過ごすか、子供を産むとしたら若い時の方がいいのか、それともある程度仕事が落ち着いてからのほうがいいのか――などです。萱野さんは「粗削りですが、彼女たちの率直な気持ちが書かれていて、読みごたえのあるものになりました」と話します。

 そのうえで、「平成の時代は、新しい言葉が次々に出て、社会の意識を変容させてきました。『セクハラ』なども一例です。『女子力』という言葉も同じだと思います。本来、自分を高めたり他人へ配慮したりするという良い意味がありますから、肯定的に捉え直してみればいい。男女の壁を壊して考え直せば、男性のほうにこそ、『女子力』が求められているのかもしれませんね」と萱野さんは強調します。

「女子力」ある男性も少なくない

 今回紹介したトピには、こんな反響もありました。

 「ウチの息子は、友達グループで遊びに行った時ケガをした子に絆創膏ばんそうこうをあげたら『女子力高っ』って言われたそうです。女子力の捉え方も人それぞれ」(「メイ」さん) 

 「私の昔の男性上司は、物腰柔らかな紳士でしたが、徹底して女性にサービスする方で、
椅子は引いてくださるわ、大皿料理は取り分けてくださるわ、飲物には気を配ってくださるわ、上司と新入社員だってのにこっちの身の置き所がないよーっ、ってな感じの方でした」(「わんわんわんわん」さん)

 何を「女子力」と考えるかは人それぞれですが、男性でも女性でも、自然なふるまいのなかに思いやりが感じられたらうれしいかもしれませんね。

 (読売新聞メディア局編集部・永原香代子)

 

【紹介したトピ】
「女子力」ってなんですか?

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女子力を過剰に嫌う人

萱野 稔人(かやの・としひと)
津田塾大学教授

1970年生まれ。津田塾大学総合政策学部学部長。専門は哲学。日テレ系「情報ライブ ミヤネ屋」などに出演。近著に「社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門~複雑化する社会の答えは哲学の中にある」「〈女子力〉革命」など。